表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い神  作者: 小春日和
兄妹の邂逅
41/104

祟り神の乱行 6

 対に立つ眷属の石像まで至ったとき、不意に背後で怒鳴り声が聞こえた。

「勝手なことばっかしといて、いまさら戻ってくる気かよ?! お前なんかもう要らねえよっ!」

裕貴の激高は、感情のコントロールを失っているせいか、甲高く掠れていた。

 とっさに台座に隠れた晴彦が覗き見ると、抱きつこうとした夢璃を拒絶する彼の姿が目に入る。

「オレがずっと下で待ってたの、知ってただろ?! わかってて早川とこんなことしてたんだろ?! 冗談じゃねえよ。どこまでふざけたら気が済むんだよ?!」

夢璃の細い両肩に手をかけた裕貴は、恐らく渾身の勢いをつけたまま、彼女の体を振り投げた。ごづ、と鈍い音がして、夢璃が頭から地面に激突する。

「お前、自分のこと、愛されキャラとかふざけたこと言ってたよな? お前と付き合ってきたやつら、お前のこと、なんて言ってるのか知ってるか? ヤリ逃げOKの便利キャラって笑ってんだよ。勘違いがイタすぎて笑えるってさ。だから同情してやったってのに、なに裏切ってんだよ?!」

痛みとショックに(うずくま)る夢璃に、さらに罵倒を畳みかける。

 のろのろと顔を上げた彼女は、

「…どうして?」

恨めしげな声を返した。側頭部からは、血が滲んでいる。

「急にこんなふうに変わるの…どうして?」

傷口に手をやりながら嗚咽を漏らす。

 その態度に、さらに苛ついたのか、裕貴は乱暴に夢璃を蹴りつけた。

「お前なんかいなくなればいいんだよ。誰に断って生きてんだ。ほんっと、くだらねえ奴。さっさとどっか行っちまえよ」

2度、3度。殴打音が響くたびに、哀れな泣き声が重なる。


 あまりの光景に気圧されて、思わず傍観を決めこんでいた晴彦は、やっと、事態の異常さに頭が追いついた。

「ま、松原さん…」

止めようと身を乗り出す。が、中途半端な呼びかけでその行為は終わった。

 崇志がゆっくりと半身を起こしていくのが目に入る。

「おい」

低くて恫喝するような声が、空気を震わせた。

 興奮で目をぎらつかせていた裕貴が、その響きに、ビクッとして顔を向ける。

「あ、お、おう…」

意味不明の呼応をした彼は、慌てて夢璃から離れた。

「い、いろいろとあってさ。別に早川のことはなんとも思ってないからさ」

取り繕う表情に、卑屈な笑みが浮かんでいる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ