地母神の棲家 6
大樹から身を起こした晴彦と葉月は、再び、蛇の偶像の前に歩み寄った。
「ねえ、なんで蛇が象徴なの?」
およそ神様らしくない禍々しい形のそれに、少女は非難の目を向けながら、聞く。
「蛇は地面を這う生き物だろ。それに、長いこと飲まず食わずでも生きられるほど生命力が強いんだ。だから神さんとして認められたんだと思うよ」
他にも理由はあるけど、と、なぜか言葉を濁した少年の態度を、葉月は目ざとく見咎める。
「なに、その『他の理由』って?」
「え…あ、…っと…」
赤面を隠すように少女から顔を背ける晴彦。
「はっきり言う!」
わざわざ正面に回って鼓舞する葉月に、少年は頭を掻きながら、伝えた。
「地母神は生命を生み出す神とも言われてるんだ。つまり…出産の神さんやから…その」
蛇の形になる前は『男性器』を象ってたんだよ、と補足する。細くて長い屹立したその形状が、鎌首をもたげる蛇を彷彿とさせて、偶像の形を変化させたのだろう、と。
一瞬、きょとんとした葉月は、祠の中で睦み合う2体の蛇に視線を移した。それから、口を開けて『雄の頭』を飲みこもうとしている『雌』の意味を考えた。
「…ばか晴彦」
目を伏せて忌々しげに呟く少女に、
「え、オレが悪いの?」
晴彦は困った様子で、とりあえず反論した。
※地母神の偶像の形について、男根が先だったのか蛇が先だったのかは、はっきりしません。けれど、後に日本に入り込んでくる中国の龍脈思想(大地にはエネルギーの通り道が縦横に走っている。その様子が地下に眠る龍や大蛇などのイメージを彷彿とさせるという考え方)などと合わせて鑑みると、蛇はかなり後年になってからの形態ではないかと推測されます。




