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馬番の彼の特別な力

 すぐに次の授業が始まった。二つ目の授業は歴史だった。私はこの部屋にいる誰よりも歴史の知識があることにすぐに気づいた。


 次から次にメアリーが出す質問に、私はチャンスとばかりに自ら手をあげて答えた。公爵令嬢だった私には優秀な家庭教師がついていた。父は最近特に国が力を入れている婦女子の教育に熱心な人だったのだ。おかげで、私はお金の力で優秀な教育を受けてこれた。


 ――さっきの失敗を挽回するのよ。


 私はかつてないほど積極的に発言をした。馬番には分かるまいと彼の顔を見ると、彼は完全に興味を失った表情で頬杖をついて、物憂げに庭の方向を見つめていた。


 私は彼の視線の先に目をやり、ハッとした。メアリーは気づいていないようだが、ライラックの木の枝がロングウオーク上空を飛んできている。私は身震いした。


 ――私がここにいるのは、やはり場違いだわ。とんでもないところに来てしまった……


 ふと、メアリー・ウィンスレッドが馬番の視線の先を確認しようとしたのに私は気づいた。私は慌てて「メアリー先生!」と手を挙げた。


「何かしら、リサ?」


 一時間目とは打って変わった表情でメアリー・ウィンスレッドは私を見た。


「女王陛下の祖母の……」


 私は必死で質問を考えだし、メアリー・ウィンスレッドが馬番が何をしているか気づくのを防いだ。なぜそうしたのかはよく分からない。


 こうして、二つ目の授業である歴史の時間が無事に過ぎて行った。


「浮遊術は課題がありますが、あなたの歴史の理解力に目を見張るものがあります」


 授業が終わると、私はメアリー・ウィンスレッドに励まされた。家庭教師の先生意外に褒められたのが初めてだったので、私は嬉しくて思わず飛び上がった。


「誰でも知っていることじゃない?」


 ふと、馬番の声がして私はびくりとして振り返った。メアリー・ウィンスレッドは気づいていないようだった。だが、私の横に確かに例の馬番がいて、声に出さずに私に話しかけたようだった。


 私はしどろもどろになり、顔を赤らめてすぐにその部屋から出た。


「待って!リサ、次の授業は薬草学なの。場所が違うわよっ!」


 メアリー・ウィンスレッドが叫ぶ声が後ろから追いかけてきた。


 ――私はなぜ彼の声が耳元で聞こえるように感じるのだろう?彼がまるで私の耳元で、私の耳たぶに息を吹きかけられるぐらいの距離でささやいているように感じたわ。


 私は今、自分の顔が真っ赤だろうと思った。


 輝く青い瞳にくしゃくしゃの髪を持った馬番は、馬番なのにとんでもない力を持っているようだ。薄青紫なライラックの木の枝を長い時間宙に浮かせて運ぶ以外にだ。とても特別な能力だ。






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