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異世界来ちゃったけど帰り道何処? 作者:こいし

第十三章 魔王の消えた世界で勇者は

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「名前をあげて良かった……って、どういうこと?」

 神奈ちゃんの言葉に、僕は首を傾げた。名前を付けることくらい、この世界でも珍しくは無い筈だ。何故ならこの世界の人間達、魔族達なんかは皆自分だけの名前を持っているからだ。名前を持っているということは、名前を授けられたということ……それこそ、両親や育ての親、はたまた過去を捨てるべく自分で改名したりする者もいるかもしれない。名前を付けるということが、何を齎すというんだろうか。
 確かに、今狂気の妖精にリアという名前を付けた時、何か違和感というか、ちょっとした虚脱感の様な物を感じたけれど、特に身体に影響はないし、傷を負った訳でもない。なのに何故そんなことを言うのだろうか?

 神奈ちゃんは僕のそんな疑問が分かったのか、やってしまった、といった表情で頭痛でもするのか頭を抑えた。
 そして僕のことを指差しながら言う。

「きーくん、自分のステータスを覗いてみて」
「? うん」

 指示通り、僕は自分のステータスを覗いてみる。

 ◇ステータス◇

 名前:薙刀桔音
 性別:男 Lv1
 筋力:1504000 (5000)
 体力:18578000 (7329090)
 耐性:108300250(33902910)
 敏捷:18082500 (7830980)
 魔力:20004531 (10294000)

 《鬼神(リスク)》発動中

 ◇

 あれ? おかしいな、()内の数字が『鬼神(リスク)』発動前、通常時の僕のステータスなんだろうけど、筋力値が凄い下がってる……どういうことだ? 少なくとも1万は超えていた筈なんだけど……他の数字を見る限り『鬼神(リスク)』の副作用が効いた後の数字という訳じゃなさそうだし、どういうこと?
 僕は眉を潜めながら神奈ちゃんを見る。すると、神奈ちゃんはやっぱりか、といった表情で僕に驚くべき事実を告げて来た。

「あのね、きーくん……この世界では他種族の名前を持っていない子に名前をあげることは、一種の契約というか、親子関係を結ぶ様なものなんだよ」
「親子関係?」
「そう……この世界には、私達の世界ではなかった物があるよね? 今きーくんが覗いたものだけど」

 つまり、ステータスか。まぁこんなに明確な数値化が見える事はなかったけど。

「他種族の名前を持っていない者に名前をあげる、それはつまり名前をあげ、貰ったという繋がりが出来るということ。そしてあげた者と貰った者である意味上下関係が出来上がるよね……つまり、そういう意味で親子関係が結ばれるということなんだ」
「ソレで僕の筋力値が減ったこととどう関係してくるの?」
「ああ……きーくんは筋力値だったんだ。えーと、つまりだけど……名前をあげた相手は、自分の子の様な関係になるわけで、親としてその子を護る為の加護的な力を、名前と一緒に与えることになるの……それはスキルだったり、能力値だったりなんだけど……きーくんの場合は『筋力値と伸び代を半分』、になるのかな?」

 え、つまりこういうこと?
 僕は狂気の妖精に名前をあげた時に、親子関係の様な契約が為された。その際、親として子に自分を護るための力を分け与えたと。そして分け与えた力というのが、僕の筋力値と伸び代を半分ずつだったと。だから僕の素の筋力値が此処まで下がったと。マジで? それはちょっと酷いんじゃないの? 他種族に名前をあげるだけでそんな現象が起こるの?

 あれ? ちょっと待てよ? 僕ってこの世界に来た初日にさ、名前あげてたよね?

 ―――フィニアちゃんに、名前をあげたよね?

 まさか、僕の筋力値が他の数値に比べて伸びが悪かったのって……僕がフィニアちゃんに名前をあげたから? で、フィニアちゃんの筋力値が異様に伸びていたのって……僕の筋力値の伸び代を分け与えていたから?
 あれ、ちょっと待てよ……そういえばもう1人。

『……ん? 何?』

 僕はノエルちゃんを見て、うわー、って顔をしていたと思う。僕、この子にも名前をあげたんだよね。んでその時僕の筋力値って減ったよね。てことはこの子にも僕筋力値の伸び代を分け与えたってことだよね。
 フィニアちゃんで半分になり、ノエルちゃんで1/4になり、そして狂気の妖精――リアちゃんに分け与えて、僕に残った筋力の伸び代って1/8?

「うわぁ……不用意に名前あげなきゃよかった……」
「あはは……やっぱり知らなかったんだ?」

 顔を抑えて、僕は憂鬱な気分になる。まぁフィニアちゃんに名前をあげたのは別に良いんだけど、ノエルちゃんとリアちゃんには必要なかったような気もする。あ、いや必要か、リアちゃんは特に。
 うーん、まぁ筋力値が少なくても攻撃力には困ってないし、別に今更気にする事でもないか。切り替えてこう、僕は耐性値さえあればソレで十分戦っていける。幸いなことにスキル構成には恵まれている様だからね。

 さて、異世界生活初日から筋力値縛りプレイをしていたという事実が発覚した所で、僕はリアちゃんに視線を移す。

「で、リアちゃん。君はこれからどうしたい?」
「リア、リアー……りりり、り、あ……わ、私、ワタシは……何をすればいいの?」
「……いや知らないけど」

 どうやら目的は特にないらしい。

「……指輪、ゆ、ユビワ……ワ、ワ、ワ……アナタが持ってるなら、アナ、ああ、貴方、アナタに……付いてくー……」
「ああ、フィニアちゃん方式ね」

 思想種は結局行動指針は一緒らしい。僕が指輪を持っているのなら、僕に付いてくるという感じか。まぁ戦力としては十分だけど、正直指輪はいらないんだけどなぁ……付けててもなんか呪われそうだし。どうしたものか。

「……きつね、先輩……」
「おや凪君、眼が覚めたか」
「すいません……何も出来ずやられたみたいですね……」
「いやまぁ、スキル封じが無くなったのは結構辛かったけどなんとかなったし別に良いんじゃね?」

 そこへ凪君が起きて、近付いてきた。巫女も凪君を支える様にしてそこに立っている。レイラちゃん達も僕の傍へと近づいて来て、何処に居たのか剣士と魔法使いの子もなんか近づいて来ていた。マジで何処に居たんだこの2人は……まぁいいか、多分魔法使いの子が気配を消す魔法的なものを使って、隙でも窺ってたんだろう。居心地悪そうな表情してるし。
 それにしても大所帯だな……何人いるんだ? 倒れてる屍音ちゃんを除けば10人? うわ多い、人見知りなんだからそんないっぺんに来ないで欲しいなぁもう。

 とりあえず……どうしようかな。勇者御一行には帰って貰おうかな。ほら、魔王倒したし、魔王の娘もなんか倒しちゃったし――あれ? もう勇者お払い箱? あはは、お疲れじゃん。

「ま、なんだかんだあったけど……とりあえず帰ろうか。凪君達はホラ、魔王死んだしその報告でもしにグランディールに帰りなよ。一応、凪君がやったってことにしておいてね……僕はホラ、目立つの嫌いだし」
「良いんですか……きつね先輩がやったことなのに」
「良いんだよ、元々魔王討伐は勇者の役目だからね……ついでに神奈ちゃんも連れてって。初代勇者ともなれば優遇してくれるでしょ、ついでだから色々と学ばせて貰いなよ……君はぶっちゃけ勇者としては未熟過ぎるからさ」

 そう言って、僕は薄ら笑いを浮かべる。色々あったけど、此処一応迷宮なんだよね。魔獣と戦うのもだるいし、さっさと帰って休みたい。ただでさえ、『鬼神(リスク)』の副作用が待ってるから、気分としてはかなりブルーだ。はぁ、ホント僕の人生って命の危機が多過ぎて困る。

「ソレは良いですけど……初代勇者さんは、それで良いんですか?」
「神奈で良いよ。まぁ元々そういうつもりだったし、きーくんにとって私はそれほど必要でもないみたいだからね……私は元の世界に帰る方法を探してるから、出来れば手伝って貰えると嬉しいな」

 恐縮する凪君に、神奈ちゃんが微笑む。すると、凪君はその笑みに少し頬を紅潮させながら、そうですか、とどもりつつ言って、目を逸らした。まぁ神奈ちゃんは経験の多さから大人びてるし、美人だからそうなるのも仕方ないのかもしれないけど……反応が童貞臭いな、凪君。
 おっと、その反応にムッとしたのか巫女が勇者の足を踏みに行った。更には肘打ちで追撃だ。修羅場だ、修羅場が出来上がっている。

 まぁどうでもいいけどね。

「さて……それじゃ―――」

 僕はそう言いながら、地面に倒れている屍音ちゃんを見る。生きてはいる……僕の力でほぼ全ての力に枷が付いている。危険は最早取り除かれたと言っても過言ではない。それに、彼女に僕を殺すことはもう不可能だ。彼女について枷とは、そういうものだからね。一種の『隷属の首輪』の様なものだ。
 一端付いたら僕自身が外さない限り、凪君の『希望の光』であろうが、外すことは出来ない。なんてったって精霊の力だからね。彼女はこれから一生、取り付けられた自分の限界以上の力を発揮する事は出来ないし、好き勝手に暴れ回ることも出来ない。

 命を奪っておいた方が、彼女にとっては楽かもしれないね。

「……きつね、殺すのか?」
「うーん……どうしよっかなぁって。正直ドランさんを殺した子だし、色々と厄介な人格が形成される可能性大だし、伸び代としては天性のモノを持っているのは確実だからねぇ……」

 でも、今の彼女にドランさんを殺した記憶はないし、危険もかなり取り除かれた存在となってしまっている。殺しても僕の気は晴れないだろうし、ぶっちゃけこの子と一緒に来た筈のSランク魔族達がどこにいるのか分からないから、正直躊躇われる所だ。
 やるなら、あのSランク魔族達も全員拘束してから纏めて殺した方が、安全っちゃ安全な気もする。罠だったら怖いし。

 だからとりあえずは――そうだね、今は生かしておこう。

「連れていこうか、拘束して」
「良いのか?」
「うん。この子と一緒に来たSランク魔族達が近くにいる筈だから、そいつらを捕まえてから一緒に殺した方が安全っちゃ安全でしょ?」
「成程……それもそうか」

 リーシェちゃんにそう言って、僕は屍音ちゃんの両手両足を瘴気で拘束し、おまけにノエルちゃんに『金縛り』まで掛けて貰ってから、担ぎあげる。今の彼女に瘴気の拘束を解く力はないし、ノエルちゃんの『金縛り』を解く力も無い。
 仮に『鬼神(リスク)』の副作用でスキルが使えなくなったとしても、彼女に付いた精霊の枷は外れない。アレと僕は、最早解除するかしないかの繋がりしかないから、僕がスキルを使えない間は、僕の意志でも外せなくなるだけだ。特に問題は無い。

「ほら、帰るよ。そこの巫女も発情するな」
「痛いっ! 蹴らないでください!」

 僕は屍音ちゃんを抱えたまま擦れ違いざまに、勇者の足を踏み続けている巫女のすねを蹴り、上へと続く階段を上っていく。他の皆も、それに続く様にして付いて来た。

 こうして、勇者を救いに行く為だった筈なのに、結果魔王の娘と殺し合うことになった戦いは終わった。僕はまた、自分の称号の運命力を呪った。


 ◇


 そして、ルークスハイド王国に戻る。

「じゃ皆―――あと、よろしく」

 入り口の門を潜り、一息吐いた後だ。くるりと振り向きそう言うと、そこにはリーシェちゃん達が少し悲しそうな顔で僕を見ていた。
 少しだけ心苦しくはあるけれど、仕方の無い事だ。ノエルちゃんに拘束を任せていれば、まぁ屍音ちゃんに関しては大丈夫だろう。
 薄ら笑いを浮かべながら、僕は『鬼神(リスク)』を解除し意識を失う。最後に見えたのは、僕が勢いよく吐いた血の色だった。




戦い終了。あともう少し続きます。
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