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異世界来ちゃったけど帰り道何処? 作者:こいし

第十章 亡霊と不気味な屋敷

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Sランクの成長株

 アリシアちゃんの話を聞いた後、僕達は直ぐに屋敷に向かう事はせず……まずは噂のSランク冒険者の実態を掴む事にした。屋敷に向かうという話がある以上、そのSランク冒険者がどういう存在なのか、どういう目的なのかを知っておくべきだと考えたからだ。
 話によると、そのSランクはどうやら普通の冒険者とは異なった容姿をしているようだし、見れば分かると言ってたから、多分どれがそのSランクか分からないなんて自体にはならないだろう。

 城から出る際に、アイリスちゃんともオリヴィアちゃんとも会わなかったから、ちょっと拍子抜けしたけれど、無駄な時間を取らなかっただけマシか。
 ともかく、僕はルルちゃん達を連れてギルドへと向かった。冒険者のSランクと言えば、やはりその実力の高さが最も注目する点だろう。Sランクが何人いるのか具体的な数字は僕も知らないけれど、序列第12位のゼス・ヒュメリがいる時点で、最低でも12人はいるのは確実……そこに今回のSランクを入れれば13人ってところか。

 まぁそのSランクが全員部隊(レイド)を組んで魔王を倒せばいいのにー、とか考えてなんかいないよ? Sランクの奴らって魔王といい、レイラちゃんといい、ステラちゃんといい、正直あまり人間的にはまともな奴いないしね。
 自分の好き勝手にやってる感がありすぎるから厄介だ。魔王は戦闘狂、レイラちゃんは色情魔、ステラちゃんに至っては勧善懲悪と来たもんだ。あーあ、嫌になるよ本当にもう。

「きつねさん、それはアレだね? ツッコミ待ちだね?」

 フィニアちゃんにそのことを愚痴ったらそう言われた。いや、ボケなんかじゃないんだけど……今ツッコミどころあったかな? 正直ツッコミどころなんて何処にも無かったと思うんだけど。
 実際Sランクにまともな奴なんていないんだし、我儘な子供がそのまま大きくなって超強くなったような感じでしょ。

 僕だってSランク相当の実力を持つステラちゃんと戦ったけど、アレはもうギリギリ勝てた感じだからね? 正直もう1回やれって言われたら全力で拒否するね。

「あの使徒がSランクならきつねさんもSランクだと思うんだけどなぁ」
「前言撤回で、Sランクも中々イケてる奴ら多いんじゃない?」
「あははっ! 相変わらずの掌返しだね! いっそ清々しいよ!」

 まぁSランクも悪い奴らばかりじゃないさ。ゼス・ヒュメリだって結構紳士的な雰囲気あったし、きっと話の通じる奴だっているさ。
 でも、今回ぽっと現れたSランクだけど……登録から1週間そこらでSランクまで駆け上がるなんてアレだね……小説に良くある転生者とかみたいだよね。あいつらマジふざけんなってくらいのチート持って来てるから、努力とかあんまり必要なさそうでいいよね。

「にしてもだよ、今回のSランク冒険者ってどんな人だろうね」
「1週間でランクを急上昇させるなんて、よっぽどの事情があるか、実力を隠そうとしていないかだから、前者なら厄介、後者なら放っておいても勝手に馬鹿やってると思うよ?」
「だよねぇ……ランクを簡単に上げるのは、ドランさんも言ってたけどあまり良い判断とはいえないし、実力を誇示したいのか……それとも序列を向上させてSランクの優遇制度を利用する為か」
「……でも、まともな話が出来る様な人ではなさそうですね……実力を誇示する人は高慢ですし、目的に必死な人は余裕が無いと思いますから……」

 ルルちゃんの言葉に、僕は確かになぁと思う。
 まぁそのどちらでもないとすれば、と考えると少し嫌な予感がするんだよね。例えば僕と同じ異世界人で、こっちの常識を知らないままにただSランクになったとすれば、同じ異世界人である僕が現れることで何かしらのアクションを起こすかもしれない。
 チートで無双したい高慢な奴なら、同じチートを持つかもしれない相手の排除をするかもしれない。それなりにまともな奴なら、僕の力を当てにして仲間に引き入れようとするかもしれない。どちらも御免だけど、転生者という可能性は考えてしかるべきだろう。

 勇者召喚や僕みたいな例もあるんだ……異世界からこの世界へやってくる手段に、転生があってもおかしくはないだろうしね。

「さて……」

 そして、僕達は冒険者ギルドへと辿り着いた。依頼を受けてギルドから出てくる冒険者達が、僕にぎょっとした視線を向けて、そそくさと去っていく。『きつね』という名前、あまり良い噂で扱われている訳じゃないらしい。誰だよ、僕の悪評流してんの。
 とはいえ、そんなことは一旦置いておこう。目的は新たなSランク冒険者だ。

「じゃ、入ろうか」

 僕はそう言って、ギルドの扉を開ける。
 中にはルークスハイド王国のギルド内部が広がっており。かなり広く、そして賑やか―――ではない。いや、それなりの喧騒は飛び交ってはいるし、中にいる冒険者の数も桁違いだ。実力者の風格や貫録を持っている者は多く、受付嬢もミニエラの3倍はいる。エース受付嬢なんて、絶世の美女とはこのことかと思う位綺麗な女性だ。近づくのが憚られるね……高嶺の花って奴だ。

 まぁそれはともかく、それだけ人はいるにも拘らず……賑やかさは足りていない。騒がしくないというわけではなく、これだけの人がいて喧騒がこんなにも少ないなんておかしい。
 それに、ギルドに入った時恒例の、入ってきた奴を射殺す様な視線も無い。逆に違和感感じるなぁ。

 ギルドの中に踏み込んで、大勢の人でいっぱいのギルドに少し怯えた様子のルルちゃんの手を引き、少し歩く。背がロリのまま低いから、余計背の高い男達がでっかく見えるんだろう。女性もいるけれど、冒険者の女性なんて男に比べれば数は少ないもんね。

「んー……ん?」

 すると、人の視線が集中している場所を見つけた。
 1つのテーブルに、1人の少女が座っている。集中している視線もなんのその、上機嫌にミルクを飲んでいる。見た目で言えば、成長したルルちゃんと同い年くらいかな? 背はそれほど高くないけれど、ロリ脱却を間近にした子みたいな感じ?

 しかしまぁ、確かに他とはちょっと場違いな格好をしている。
 着物の様に振袖になっている白いロングコート? と、中には丈の短い着物に加え、簡単なミニスカート。そこから伸びる細くて白い生足は、裸足のまま足を靴に包んでいる。和風というか、洋風というか、和洋折衷といった服装をしていた。
 似合ってはいる。けれど、冒険者としてはちょっとありえない服装だろう。防御力が全くないお洒落な服なだけだからだ。フィニアちゃん曰く、魔力的な反応も無いみたいだしね。

 ただ、白金(プラチナ)色の髪の毛は確かに目立つ。灯りの光に反射して、キラキラと輝いている。あまりに綺麗な頭髪故に、その光の反射で天使の輪が出来ている。悪戯っ子みたいにニマニマと笑顔を浮かべている少女を見ていると、ほんの少し微笑ましい気分にはなってくる。


 でも、見た目以上になんとなく感覚で分かった。


「……あれが新しいSランクの冒険者だね」
「冒険者というよりはお洒落した子供って感じだね!」
「でも、油断は出来ない。正直、嫌な予感しかしないから」

 彼女が、新たなSランク冒険者。白金色の髪を靡かせ、幼い風貌でありながら、圧倒的強者の風格を感じさせる少女……そりゃこんな見た目と気配の異なるSランクが現れれば困惑もするだろう。僕もちょっと困惑するし。
 まぁどちらにせよ、あの子には計り知れない何かを感じる。ゼス・ヒュメリだってステラちゃんの影に隠れてたけど……彼も確かに強い気配を持っていた。実際、あのステラちゃんと打ち合えていた位だしね。
 でも、この少女はゼス・ヒュメリ以上の気配を持っている。いや……もっと言えば、ステラちゃんと同等かもしれない。

 ―――と、少女と眼が合った。

「っ……」

 すると、少女の表情がニンマリと笑顔になった。悪戯を思い付いた子供の様に、無邪気な笑みを浮かべている。
 少女は立ち上がり、その足首まである振袖コートを揺らしながら僕の方へと歩いて来た。周囲の視線が、僕とその少女に寄せられる。ぼそぼそと、噂話の様に何かを話しているようだった。

「……『きつね』と『白金の神童』が……」
「あれが『きつね』……」
「……どうなってるんだ……」

 どうやら、僕の名前も少女の名前もかなり有名になっているらしい。僕と彼女の対峙は、周囲の冒険者達にとってかなりの出来事のようだね。
 まぁ、戦うつもりはない。戦闘をするつもりもなければ、交渉事も無いんだ……ただあの屋敷に行く目的が聞ければ、それでいい。

 少女が、僕を下から見上げる様にして僕の前に立つ。にんまりと無邪気に吊りあがった笑みを隠さず、僕の事を不躾にもじろじろと見て来た。

「ふむふむ……うん! 貴方が『きつね』ね! 本当に弱っちそう!」
「許せる無礼にも程があると思うんだ僕」

 少女はにんまり笑いながら、僕に対してそう言ってきた。なんだコイツ、超失礼なんだけど……確かに僕って見た目弱そうに見えるけどさ、それをダイレクトに言うとかちょっとあり得ないと思うんだ。貧乳でチビで失礼で、ロリとも言えない微妙な成長具合で、見た目だけは綺麗な子供とか超生意気じゃん。
 評価出来る所見た目とミニスカート位だよ! あと生足とか顔とか生意気そうな笑顔とか綺麗な髪とか白い肌とか……あれ? 結構評価高い?

「いやいや、話には聞いてたのよ! 薄ら笑いが不気味で、人間とは思えない気配の、見た目弱っちそうな男の子! 噂に違わぬ人だったわ!」
「誰が言ってたんだソレ、ちょっと懲らしめるから言ってみ? このギルドの中にいる?」
「あははっ、貴方の噂なんて何処に居ても聞こえてくるわよ。貴方が思っている以上に貴方の名前は有名なのよ?」
「不本意だけどそうみたいだね」

 会話しながら、僕は少女の印象を考える。
 話している分には、中々好印象の少女だ。超失礼かつ生意気な部分はあるものの、それも個性と割り切れば我慢出来ない様な生意気さではない。寧ろ、会話する分には普通の人と変わりはないね。Sランクだからどんな奴かと思いきや、可愛い少女なら来て良かったかもしれない。

 でも、取り敢えずは彼女が本当にSランクなのかどうかを、ちゃんと確認しないとね。

「まぁ改めて……僕の名前はきつね、Hランクの冒険者だよ」
「あははっHランクとは面白い冗談ね! 私の名前はメアリー、最近Sランクになったよ! よろしくね!」

 メアリーね……英語の教科書とかで良くある名前で覚えやすそうだ。しかしまぁ、本当にこの子がSランクだったんだね。怖い怖い、天才とは恐ろしいものだよ。


 ―――……本当に転生者じゃないよね?
新キャラSランク冒険者メアリー。屋敷に行くまで時間掛かるなぁ。
新たなSランクがステラちゃんだと思った方、残念!
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