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20.脱出劇



 やっとこの大量のアリ型を従えるアリ型UMAの親玉を討伐できた。


 しかし、親玉をやられてか、討伐報告をしようとするも周りのアリ型が一斉にこちらをにらみつけた。そして、怒り狂ったように腹部から霧状の液体を撒き散らかして襲ってくる。


「報告の前にひとまず安全確保だ。蹴散らしながら一旦引くぞ!」


 広間はアリに囲まれているため、俺たちはアリ型を倒しながら来た道を戻って行く。


 しかし、そこは一本道で、来た時とは違いこちらを敵と判断してアリ型が突っ込んでくる。当たれば押し流されて、親玉のいた広間まで転がり落とされてしまう。


「クソッ、どんどん入ってきやがる。」


 なんとか来た道から脱出できないか応戦して行くが、数が多くこちらを敵と判断して突っ込んでくるため対応しきれない。


「一ノ瀬!パイルバンカーでこの道を塞げ!ここは無理だ。別の道を探す!」


 出口から押し寄せてくるアリ型と、広間から逃すまいと追ってきているアリ型に挟み撃ちにされていて、この道からの脱出を断念する。


「いきます、離れててください。」


 実戦での初使用で少し緊張するが、一刻を争う事態で焦りの方が大きかった。


 そして、道を塞ぐためにジャンプして天井にパイルバンカーを打ち込んだ瞬間。




ドッゴォォォォッッーーーーン!!!




ガラガラガラガラ!!



 ものすごい衝撃で天井を破壊して瓦礫が崩れていき道を塞ぐ。そして俺は空中で踏ん張りが効かずに広間の方へと吹っ飛んで行く。



 しかし、ただ吹っ飛ぶだけでは無かった。俺の体が何かに引火したのか燃えていたのだ。


 俺は燃えながら吹っ飛び、勢いそのまま出口と広間を繋がる一本道を転がり落ちていった。幸い吹っ飛ぶ勢いと転がることで、広間に転がり落ちた時には炎は消えていた。


 俺は何が起きたのか正直わからなかった。


「タクマ、大丈夫かーー!?」


 吹っ飛んだ俺を追って真二くんが来てくれた。真一さんが周りに集まるアリ型UMAを切り倒している。


「おい、まさか毎回使うたびに燃えるわけじゃねーだろうな!?」


 真一さんがパイルバンカーを使った結果、体を燃やしていた俺を見て確認する。


「何で燃えたのか、自分でもわからないです」


 困惑する俺を見て、真一さんは『何かある』と判断して、襲い来る大量のアリ型を相手にしながら、別の出口を探しつつ、三神隊長に報告をすることにした。


「こちら十和田、アリ型UMAの親玉を討伐!だが、周りのアリ型が凶暴化!来た道からの脱出は不可能と判断して封鎖した!それと、一ノ瀬がパイルバンカーを使ったら体が燃えた!何が起きてる!?隊長!!」


 真一さんが余裕のない口調で矢継ぎ早に言う。


 その報告から三神隊長が考えるが、答えは出なかった。


『まだ情報が少なすぎるな、他に何かないか?敵が仕掛けてきた攻撃で思い当たることが。もしくは周りに何かが有ったとか。』


 しばらく真一さんは、地下に潜入してから討伐までに起きたことを頭の中で反芻(はんすう)した。


「・・・一つだけある!アリ型が凶暴化し始めてから、霧状の変な液体を撒き散らしてきた。特に当たっても何も起きなかったから、気にもしなかったが・・・まさかこの液体が原因か!?」


『他に発火源はなし....パイルバンカー使用時に生まれた火花が原因。だとしたら、状況から見て間違い無いだろう。アリ型から発射される、その霧状の液体が可燃性物質なんだ。油のようなベタつきと匂いはするか?』


 三神隊長がブリーフィングルームから、現場で得た情報を元に推理していく。


「いえ、そんな匂いはしません」


 燃えた原因がアリ型の噴射した液体にあるとわかり、落ち着きを取り戻した真一さん。


『そうか、油性ではないならまた引火することはないはずだ。霧状の液体が引火したのが原因なら、スーツにその液体が付着しなければ引火することはない。もし液体がかかったら、土や砂を擦り付ければ引火のリスクを減らせるはずだ』


 三神隊長が冷静に分析する。これでパイルバンカーを使う前に、土や砂でスーツやフレームを擦っておけば、引火を防ぐことができる。


「ありがとうございます。今別の出口を探しながら交戦中です。数が多くかなり凶暴化もしてるので、可能な限り戦闘は避けて脱出を試みます」


『了解。その様子からして、おそらくその親玉が女王アリだったとみていいだろう。出口がいくつあるかわからないから、次に出口に続く道を発見したら無理矢理出るか、如月班が合流するまで耐えてくれ』


「了解」


 アリ型の数がまるで減らないこの地下空間で、いつ到着するかわからない如月さん達の到着を待って戦い続けるか。

 もう一つの出口を見つけ出して、一本道を大量のアリ型が駆け下りてくる中を突破するか。

 どっちを取ってもかなりリスクが高い。


 ただ、俺のパイルバンカーは残り2発で戦闘で役には立てない。やはり、出口を探すのがベストだろう。


「次に出口へ続く道を発見したら、何が何でもそこから出るぞ。その時は一ノ瀬、広間に繋がる道を塞げ」


「了解です!」


 広間から繋がる道がいくつもありその一つを選んでしばらく進む。辿り着いたのは餌場だった。


 真一さんが荒々しい声をあげる。


「チッ、行き止まりだ!仕方ねぇ、急いで引き返すぞ!」


 アリ型が部屋へ向かって次々に押し寄せる中、俺たちは正面のアリ型を次々に倒して引き返す。そして別の道を進み、出口を目指した。


 次にたどり着いたのはゴミ捨て場で、ここも行き止まりになっていた。


 広間からいくつもの道が別の道へと繋がっていた。そして、ようやく出口らしき道に繋がっている道へ進むことが出来た。


「この一本道、急に傾斜が出始めた。地上へ向かって上り坂になってるんだ。このまま進んで少しでも灯りが見えたら、一ノ瀬、パイルバンカーで背後の道を塞げ」


 上り坂になってきたことで、勢いよく駆け降りて突っ込んで来るアリ型の衝撃が重くなってくる。先頭で戦っている真一さんの息が荒くなる。


「はい!」


(ここまでの戦闘でかなり霧状の液体を吹きかけられたから、スーツはおそらくかなり引火しやすい状態だろう。どうやってこの状況で落とせばいい!?)


 一本道になっているため、背後から追ってくるアリ型の攻撃を外骨格フレームで防御する俺。そして、先頭で真一さんがアリ型を切り裂き、続くアリ型を真二くんが槍で迎え撃っている。


 徐々に進んで行くと傾斜がさらにきつい道になってきた。この辺りで地下へ入ってきた道からの脱出を断念したが、今回はここから出ることを決めている。


「間違いねぇ、おそらく出口に繋がってる。このまま進めば前から突っ込んで来るアリ型の勢いに負けて、転がり落ちて広間に逆戻りだ。そうならねぇように、一ノ瀬、俺たちの後ろの道を塞げ!」


「でも、今使ったらみんな引火して燃えちゃいます!」


「真二、一ノ瀬の代わりに後ろの奴らを頼む。前は俺に任せろ。一ノ瀬、その間にスーツに着いた液体を落とせ」


「よし、タクマ!チェンジだ」


 そして真二くんがすかさず俺が防いでいたアリ型を上から槍を突き刺して迎撃する。


 その間に俺は、真一さんに言われた通りにスーツとフレームを土で擦って、液体を吸わせて落としていく。


「準備OKです」


 そして、パイルバンカーを放つ準備ができた。


「よし。一ノ瀬、真二と交代だ。俺たちが前へ進んで空間を空けるから、距離が離れたらパイルバンカーを撃て。それまでアリ型を食い止めるんだ」


「了解!」


 下から追いかけて登ってくるアリ型を抑え込む。フレームで防御しながら蹴って押し返す。


 前は見えない。だけど、きっと二人は少しずつ前へ進んでいる。しばらく防衛戦を続ける。


「よし!もういいぞ一ノ瀬!やれ!」


 真一さんの指示が飛ぶ。それを合図に俺は天井をパイルバンカーで撃ち抜いた。




ドッゴォォォォッッーーーーン!!!




ガラガラガラガラ!!




 天井が崩れ、背後から迫っていたアリ型の群れは瓦礫に飲み込まれた。


 こうして、計画通りこの道の退路は塞がれた。しかし、前方にはまだ無数のアリ型UMAが待ち構えていた。


 この道が出口に繋がっていることを信じて、正面のアリ型を倒して進むことを決める。



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