番外編 嘘ではない告白
誰しも、子どもの頃の失敗というものはあると思う。
気になる子に意地悪をしてしまうとか、そういうもの……。
俺は地主の息子だし、母譲りの顔の良さで、いつでもどこでも人気者だった。
運動神経も良かったから剣術を習い、王都の武芸大会の子どもの部に出られるくらいの腕前になった。
だが王都は人数が多いせいで、俺は早々に敗退してしまった。初めての屈辱だ。
悔しくて木剣を地面に叩きつける俺に、一人の少女が声をかけてきた。
「大会の備品なので、回収していいですか?」
「勝手にしろ!」
そう怒鳴りつけたら、ぺこりと頭を下げて木剣を拾って去って行った。
一年目は、それだけだった。
その次の年は、仲間が擦り傷を作って涙ぐんでいたら、傷口を覆うガーゼとテープをすっと置いていった。気が利くじゃないか。
ちょっと見直した。
三年目、仲間に彼女を呼んでこさせた。
友達になろう? 彼女にしてやってもいいぜ? なんて言おうか。
実際に彼女を目の前にすると、カーッと顔が赤くなった。え、これ、恥ずかしいな。
だから、見栄を張って、彼女を笑いものにしてしまった。
俺の周りにいる女の子だったら「えー、ひどい」とか「あんた最低」とか言い返してくる。
そうしたら、「嘘だよ、好きだって」とか言えるかもしれない。
そう思ったのに、彼女は黙って、くるりと背中を向けて行ってしまった。
なんだよ、勝手な奴。まだ、話の途中じゃないか。
その次の年には他の連中が大会に出るようになり、俺は面白くなくなって剣術を辞めた。いまどき、こんなの流行らないって。
仲間たちと遊び回り、女を覚え、それなりに楽しく暮らしていた。
いずれは実家を継がないといけないが、軍で活躍して箔をつけるのもいいんじゃないかと思ったんだ。軍人って、なんか格好いいだろ。
親父みたいにくそ真面目に生きるのも、つまらないし。
無事に軍に入ることができたが、いきなり地方勤務になった。王都に配属されたら実家を出て、気ままに遊べると思ったのに。
だが、地方も基地周辺は栄えていた。まあまあ悪くない生活だ。
俺は王都近郊の出身だから、厳密に言うと王都出身ではない。だが、地方の連中に「さすが王都出身者は違うな」と言われるのは、いい気分だった。
その後、祭典のための動員で、数ヶ月王都勤務をすることになった。
昔、剣術大会の手伝いをしていた例の彼女とも再会した。軍で事務の仕事をしているなんて、運命的だ。
俺たち子どもの頃からの知り合いなんだから、幼なじみと言ってもいいよな?
ところが、ツンケンして可愛くない態度を取られる。
周囲はいろいろとうるさいが、照れ隠しだろう。素直になれないの、わかるぜ。俺も昔はそうだった。
ところが、何かうまく噛みあわない。
こいつと付き合うことになったら、地方の女とはちゃんと別れるつもりだし。
結婚するなら、地味で真面目な子がいいよな。お袋みたいに、美人でもふらふら浮気するような女はちょっと……。
祭典の日に襲撃された。
彼女とうまく連携して、活躍したんだ。きっと惚れ直したに違いない。
二人揃って表彰されたりするかも。ああ、きっと輝かしい未来が待っている。
彼女が人の好意に鈍いというのがわかってきた。
次こそは、しっかり言葉にしてわからせてやろう。
「好き」? いや、もう、「愛している」でいいだろう。
俺なら大丈夫だ。




