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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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幕が下りる

 処刑は国の主催で、公開で行われることとなった。隣国と仲介国の大使館にも連絡を取り、貴賓席を用意した。

 意外だったのは隣国の王弟が出席したことだ。表向きは見届ける役目だが、実際は姪を害そうとした結果を直視しろということだろう。

 青ざめて逃げようとする王弟の肩を、護衛が押さえつけていたそうだ。暗躍していた王弟は、国の代表として晴れの舞台に立つことができた。だが、心は折れたかもしれない。



 私は処刑を見に行かなかった。


 処刑の数日前に、知らない人から「最期のお別れに行かないなんて、ひどいと思います」と詰られた。文官棟の廊下でいきなり。

 驚いて返事もできずにいたら、顔見知りの掃除夫が庇ってくれた。

「知人が死ぬ瞬間を見送りたい人も、見ていられない人もいる。そう言うなら、あんたが見送りに行ってやればいい」

「な……そういうことじゃないでしょう?」

 では、どういうことなのだろう? よくわからない。彼女はそれを解説してくれずに、早足で立ち去ってしまった。


「あの男のことを格好いいと、もてはやしていたお嬢さんの一人だ。相手にされなかった僻みだろうから、気にしないでいい」

 掃除夫も不思議なことを言う。まるで、彼が私を好きだったかのように……ああ、そういえば手紙に好きだったと書いてあったんだっけ。本当かどうかわからないけれど。



 当日は、あまり頭を使わないでいい仕事をする日にした。

 処刑の会場に手伝いに行く人たちは、どこか浮き足立っている。血なまぐさい現場に行ったことがない文官は、卒倒してしまうかもしれない。

 人が少なくなった執務室で、祭典用の書類を片付けることにした。保存用に数冊確保して、残りを箱に入れていく。普通にゴミとして出せるものと、部外秘の記載がある物を分別していく。


 急ぎではない。そのため、誰かがやらなければ数年間放置されることもある。それ以上経つと、事情がわからなくなる。面倒くさがって、保存用や部外秘を気にせず、全て廃棄する人がいるかもしれない。そういう油断から、情報が漏れることもある。

 つまらない、地味な仕事だ。評価もされない。

 けれど、私は華々しい活躍をしようとは思わない。


 先日、廊下で文句を言ってきた女性は、おしゃれに気を使っていた。見るからに、わたしとは違う世界の人だ。きっと話も合わないだろう。

 無視してくれて構わないのに、赤いバラを贈られたことで目立ってしまったのだ。


 集中できていなかったせいか、紙で指先を切ってしまった。

 ヒリヒリするが、幸い血は出ていない。このまま作業を続けてもいいかと迷っているうちに、じわりと赤いものが滲んできた。

 ……今日は、こんな傷とは比べものにならないことが行われているのだ。そんなことが頭をよぎる。目を閉じて、頭を振った。


 最期まで、彼は私に災厄を運んできた。

 私は空を見上げて、「これで打ち止めになりますように」と密かに願うのだった。


物語としては、これでお終いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

盛り込めなかったエピソードは、番外編としてお届けしたいと思います。


ブックマーク、評価、感想に、とても励まされました。

誤字報告もありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
お母様との話は、続きが気になります。 私はこのお話を通して、主人公の人格を歪めた原因は確実に母親だと思っています。 母から植え付けられた価値観で歪んでしまった上に、嘘告をされ、更に酷くなったと思うので…
主人公は周りや家族には恵まれてるみたいだけど、もっと自分の気持ちを吐き出して,彼をはっきり拒絶しないと,勘違いする輩が出てくるんじゃないでしょうか。
あー、ちゃんとアレを持て囃す奴がいたのね。それでますます認知が歪んていったのか……。 どうでもいいけど罪人として処刑される奴を堂々と擁護できるのはメンタル太いね。この事広まって取り巻きちゃん職場で孤立…
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