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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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17/45

前日

 祭典の前日、軍部の庭に関係者一同が集められた。普段から王都の治安を守る警備隊や、危険物の確認や撤去を担当する工兵部隊、祭典のために地方から集められた兵士たち、細々とした手配を担う文官も含まれている。

 軍務卿は一堂を見回し、直々に演説を始めた。


「諸君の働きによって祭典の警備体制が整えられ、明日を迎えられることになった。

 祭典は宰相府の指揮の下で進行されるが、我々は会場および来賓や民衆の安全を確保し、各行事が問題なく行えるよう尽力しなければならない。

 この式典は、戦争終結三十周年の節目に、諸外国との友好関係の確認という大きな意味を持っている。今後の平和のためにも、必ず成功させなければならない。

 一方で、終結の条件に納得していない老人たちや、戦争の悲惨さを知らない若者たちに不穏な動きが見られる。貴賓への危害、パレードの妨害、不審物の設置などが懸念されている。

 怪しい場所は人海戦術で確認済みではあるが、当日は、より一層気を引き締めて警護にあたるように。

 不審人物による襲撃等が発生した場合、生存確保に拘らず鎮圧を優先せよ。式典の進行を妨げないよう、現場指揮官の判断で迅速に対処すること。

 明日は敵を打ち倒すのではない。平和を守るため、全員で一致団結して励もうではないか」


 軍務卿が右手をさっと上げる。

 ひりつく緊張感が、熱に変わる。私たちは踵を鳴らし、右の拳を胸に当てた。訓練された動きが一体感を醸し出す。


 司会を担当していた補佐官が、そんな空気を和らげた。

「適度な緊張はよいけれど、硬くなって動きが鈍くなったり、無駄に威圧して和やかな雰囲気を壊したりしないように。

 すでに来訪している賓客の警護でこの場にいない人にも、軍務卿の言葉を伝えてください。

 それから、後日、賓客が帰国されるまでは油断できませんから。明日の祭典が終わったからと言って、飲みに行ったりしないようにね」



 集会が終わり、それぞれの部署に散っていく。

 同僚と並んで歩いていると、名前を呼ばれた。振り返ると魔術師がこちらに向かってくるところだった。

「あのさ、食堂で大変だったって聞いたんだけど。大丈夫?」


 この人はこういうことを言うから、いい人だと思ってしまうのだ。

「はい。この子が撃退してくれたので」

 と、同僚を手のひらで示した。

「あはは、そっか。なら、安心だね」

 魔術師はローブのポケットに手を突っ込んだ。

「そーですよ。私がついているんで、大丈夫です」

 同僚が胸を張ってみせる。


「うん。もう解決したかもしれないけど、念のためにこれ、あげる」

 魔術師はポケットから指輪を取りだした。包装もしていない指輪を、無造作に。

「指先を向けて、この石を押すと空気の塊が飛び出すんだ。大人の男でも吹っ飛ばすことができるから、その隙に逃げて」


「え……あの、最先端の技術とか、使ってません? ちょっと、もらうわけには……」

 ふと赤いバラを思い出し、腰が引けてしまう。

「指輪にするあたりが、なんとも……まあ、いいけど。ねぇ、祭典が終わって、例の男が地方に戻るまで借りておけば?」

 同僚にそう言われると、素直に受け取っておいた方がいい気がしてくる。

「あの、では、ありがたくお借りします」

「うん。そうして。じゃあ」

 と、魔術師は去って行った。


「ほら、さっそくはめてみなよ」

 小指には大きく、中指には小さい。

「……薬指? あ、右手の薬指にしようかな。でも書類書くときに邪魔か」

「左手にはめたら?」

 同僚が呆れたように言った。


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― 新着の感想 ―
この魔術師男性もなぁ むっつり?とはちょっと違うのかな、そこはかとなくムーブがきしょい感じはあるのですが 同僚女性が許してるから、ぎりぎりセーフなのかしらん? 主人公は男性から積極的に話しかけられる…
根気が入る女性だ…大分遅いけど兄や弟(多分父も).其に同僚なども動いてるから結ばれる云々は兎も角何だかんだ皆幸せになりそう。母親は恐らく独居の老後だろうなあ。
式典期間終了後にあっさり返される気もするが(笑) それ以上に、アレの暴発を誘うためにもわざとやってる部分もあるのかな?
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