第91話 妖精の物語④
突然ニア様から告げられた残酷な未来。そして私に与えられた選択肢。
抗うか抗わないか
答えは一つしかない。けどどうしてか分からないけど、心が不安になる。そっちを選んだところで果たして未来は変えられるのか。
(ニア様はああ言っていたけど、私だけでの力で未来は変えられるのかな……)
一度席を外し一人になった私は、ここまでの言葉を思い出す。
少女の形をした預言書
預言書が私に見せた未来
その未来は変えられるとニア様は言っていた。けどそれは果たして自分だけの力でどうにかなるのだろうか。
(それに……)
アズサが私に見せた未来はそれだけじゃない。その後のことも少しだけ見せてくれた。
それは別の預言書のこと
その預言書になる人物の名前、私には聞き覚えがあった。
夏目龍之介
私がこの世界に来る前、私が美冬という名前の時長い時を過ごした幼馴染の一人。
(どうしてあそこで彼の名前が出たの?)
本来この世界では聞くはずのなかった名前。
(どうして龍之介の名前が、あの預言書に)
彼は私と違ってまだ生きている。それなのにどうして……。
「こんな所にいた。皆探してる」
考え事に耽っていると、誰かに声をかけられる。声をかけてきたのはアズサだった。
「アズサ、だっけ。別に逃げた訳じゃないから探さなくてもいい」
「やっぱり貴女に未来を見せるのは失敗だった?」
「それは……分からない。そもそも預言書の形を知ったのは今日だったから」
「そうなんだ。普通は知られることのない事だし仕方ないか……」
預言書という存在は、この世界ではまだ大きくは知られていない存在なのは知っていた。ましてやそれが人間の姿をしているなんて、信じる方がおかしい。
「アズサに聞きたいんだけど、ニア様が言っていた事って本当にできる事なの?」
「……正直に話すと難しい。私が見せたものはほぼ確定の未来、それが簡単に変えられてしまったら預言書としての存在意義もなくなる」
「存在意義……」
言われてみれば確かにそうだった。私が未来を変えてしまえば、預言者の内容は嘘になるし信憑性も低くなる。
だから彼女の言っていることも正しかった。
「それでもフリスは変えたい? 自分が起こすこの先の結末を」
「私は……」
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「じゃあ龍ちゃんがユウになる事も全部予測されてたの?」
ここまで話を聞いていた奏ちゃんが言葉を漏らす。
「もう既にアズサが預言してたの。妖精達の行く末も」
「でも今の話を聞く限りだと、やはり貴女が未来を変えなかったからこうなったんじゃない」
「違う!」
ティアナの言葉に私は再び怒りをぶつける。
「私はあの時のアズサの問いに、変えたいって答えた。ニア様もそれに協力してくれた、けど」
変わらなかった。いや変えられなかった。ニア様はそれを察してあの日、私達に言葉を残してくれた。
「けど、何よ」
「……私には未来を変えられる力なんてなかった。ニア様もそれを分かっていたの。だから私じゃなくて自分で選んだの、死ぬ事を」
「ニア様が自分自身で? そんな馬鹿な話」
「信じなくてもいいから聞いて。私はこれ以上国を、皆を間違った道に進ませるのは嫌だから」
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アズサとの出会いから二日後。
「ニア様、話があります」
私はニア様と二人きりで話す時間をもらった。
「どうかしましたか? 改まって」
「あれから私、色々考えたんです。これから私はどういう道を進んでいけばいいか」
「答えは出ましたか?」
「まだ出ていません。でも私、ニア様を失うのは一番嫌です」
私はアズサに未来を見せてからずっと悩み続けてきた。でも答えは最初からあった。
私にとって最悪な結末はニア様を失うこと
誰が殺したとかそう言う話ではなくて、私はニア様がいなくなるのが嫌だから、私自身のために未来を作り替えたい。
たとえどんな代償を払っても。
「フリス……」
『私をこんなにも想ってくれる人がいてくれて嬉しいです。こんな出来損ないの女王を想ってくれる人が』
聞こえてきたニア様の本心に私は泣きそうになる。
「フリスがそう言ってくれるのはすごく嬉しいです。だから一つだけ約束して欲しいことがあります」
「約束?」
「たとえどんな結末を迎えようとも、その命を失うなんてこと、絶対にしないでください」
私と同じ力をニア様が持っていたのをすっかり忘れ、私の本心が聞こえたのか怒られてしまう。
「分かりました。ニア様の期待には必ずや答えてみせます」
「肩の力は抜いてくださいね」
私はこの二日間たくさん悩んだ。いくら悩んでも答えは出ず、焦ってばかりの毎日だった。でも今こうしてニア様と話して、揺れていた心は固まった。
(もし未来が変わったら龍之介に会う事も無くなるけど、それはそれで構わない)
本来なら彼はこの世界にいてはいけない人間なのだから。
「リュウノスケ、というのがフリスの気になる男の子なんです」
「ちょっとニア様、勝手に私の心を読まないでください。声にしなくてもいいですから!」
「でも事実ですよね?」
「ち、ち、違いまふ!」
「噛んでますよ?」
誰があいつの事なんか……。




