第22話 人は酔うと本音が出る
まさかこの世界にやって来てお酒に近い何かを飲むことになるなんて思っていなかった。というより、まず俺は成人したばかりなのでお酒に慣れていない。
その上この体でお酒を飲むとどうなるか。
「おかわりぃ」
「ちょ、ちょっとユウ、流石に飲みすぎよ」
「いいのぉ、お酒沢山飲んで嫌なこと忘れるからぁ」
「そもそもお酒じゃないから!」
こうなってしまいます。
「アーニスさぁん、もっとぉ下さいよ」
「もう今ので最後ですよ、ユウさんが飲みすぎなんですって」
お酒に対してかなり耐性が低かった俺は、一口で酔ってしまうくらいにお酒に弱かった。もはや自分で何を言っているのか分からなくなるくらい、意識が朦朧としていて、この時俺は一体どんなことを言っていたのか覚えていない。
「そもそもぉ、どうして私がぁこんな目に合わなきゃいけないんですかぁ」
「こんな目?」
「何で私死ななきゃぁいけなかったんですかぁ。私まだまだ人生この先長かったのにぃ」
「それは不幸な事故で」
「不幸? 何で死んだのか分からないのに、どうして不幸な事故だって言えるのぉ?」
「それは……」
気が付けば本音が出始めていた。そもそも死因が分かっていないのに、いきなり死んだとか転生とかそんな事一度に言われたって、頭が受け入れられるわけがない。
やっぱり半月経ってもまだ心が受け入れきれていなかった。
「でもユウは不幸な事故で亡くなったよ」
「それは知らないよ。私は当人じゃないんだからぁ」
「そんなこと言ったら私達だって」
「それは分かっているよ。だからこの気持ちをどこにぶつければいいか分からない」
嘆くこともできない
誰かと分かち合うこともできない
ただ俺は苦しんでいた。その苦しみが酔った勢いで次々と出てくる。
「苦しいの?」
「苦しいよ。ユウニには分かる? この苦しみをぉ」
「ユウニ? 誰その名前」
「私が考えた新しい名前だよぉ。それよりも分かるの?」
「ユウニ……。いい名前かもしれない」
あとから聞いた話なのだが、どうやら俺がユウニという名前をいつの間にか付けていたらしい。しかもそれを本人が大変気に入ってしまったらしく、名付け親の俺としては何とも言い難い気持ちになる。
「ユウさんはこの世界が嫌いですか?」
「別に嫌いとかではありませんよぉ? 本も好きなだけ読めますしぃ。でも」
「でも?」
「一番好きなのは自分が長い間過ごした世界の方が好きですよぉ。あの場所には私の沢山の後悔が残っていますよぉ」
「後悔、一体どんな」
「本ですよ。まだ世界にはたくさんの本が眠っているのに、それを読破できなかった。死んでも死に切れないじゃないですかぁ」
俺にはそれを達成しないといけない約束があった。それを果たす前に死んでしまって、本当に悔しかった。俺の一番の後悔はそれだったのかもしれない。
「だからぁ……だからぁ……」
そこまで考えたところで俺の意識は途切れる。どうやら酔いが回りすぎて、自然と眠りについてしまったようだ。
「ぐぅ……」
「ユウさん?」
「寝てる」
「散々言い散らかして、寝ちゃったわね」
「いい迷惑。でも本音って大切」
「それはそうだけど……。こっちの気持ちも少し考えてほしいわね」
「まあまあ。ユウさんもこの半月、かなり無理していましたし」
「それにしたってちょっと勝手すぎる」
眠りについてしまった後彼女達はどんな話をしていたのかは分からないが、俺としては少し申し訳がなかった。さんざん言い散らかしただけで、本人達の気持ちを汲み取れていなかった。
でもそれを理解したのは、この日からかなり時間が経った後だった。
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それから三日経った後、
「というわけで第二回女子会を開催します!」
「この前やったばかりですよね?!」
何故か再び女子会が今度は図書館で行われていた。今度はアルコールが盛られることはなかったが(元からそんなつもりはなかっただろうけど)、まさかこの短期間で行われると思っていなかった。
「今日は話す内容は決まっています」
「そうなんですか?」
「今日はあなたについて色々聞かせてください。リュウノスケさん」
突如名指しされビックリしてしまう。
「先日あなたは苦しんでいると言っていましたから、私達はそれを受け止めようと思いまして」
「え? でもそれは……」
この場では語るような話ではない。先日は酔った勢いで言ったようなものだから、皆にはそこまで重く受け止めてほしくなかった。
「私じゃ頼りない?」
「そういう訳でもないけど、今はまだ話したくない」
「今は?」
「多分今話しても分からないと思うから」
皆を信用していないという次元ではない。いつしか話す時が来たら、その時はきっと……。
(俺はこの場所にはいられない)
この半月で俺は沢山の本を読んでいる内に、色々なことを知る事になった。その中で俺は気づきたくなかった事も気づいてしまった。
「ユウさんが話す内容がないなら、仕方がありませんね。別の話をしましょうか」
「何かあるのですか?」
「私達の中でどの方に興味があるかです。リュウノスケさんは男の子ですから、興味がないとは言わせんよ」
「え?」
その話の方が話づらい気がするんですが……。




