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第19話(Side:ライルネント/”???”)



 一体何が起きているんだ。

 突然、遺跡に潜り込んだ”エクスプローラ”が慌てて這い出してきたと思ったら、盛大な地響きと共に、巨大なミスティカドールが地面から生えてきた。

 突然地面に大穴を開けて這い出てきたミスティカドールはあまりにも大きく、標準的なサイズのはずの”ライトブリンガー”ですら、あの機体からすればネズミに等しいだろう。


「ひとまず、アルグレアスさんたちは街へ退避してください! ここは僕がなんとかします!」


 『……申し訳なイ、ライルネント殿。ご武運ヲ』


 4機の”エクスプローラ”が、街の方角へ走り去っていく。元々馬力は高い機体だ。全力で飛ばして、援軍が到着するまで……早くて半日というくらいか。果たしてそれまで足止めできるか……。

 機動力に特化させたこの機体は、標準固定武装のライトブレードしか装備していない。脆い関節部に何度も攻撃を加えられれば、足首程度なら破壊できるだろうが、それをあの機体が許すとは思えない。


 『オプション装備の中にパイルシューターがある! 使ってくれ!』


 去り際の”エクスプローラ”から通信が入る。巨大なミスティカドールが現れた時に散らばった装備群に目をやると、確かにそこにパイルシューターがあった。元々は鋼鉄の扉を破るためのものなのだろう。利便性のためか、元々装填されている杭に加えて、3本の予備も自動装填されるようになっている。


「あれか、ありがとうございます!」

 

 全速を出してパイルシューターに駆け寄る。

 これなら、あの機体のターゲットをこちらへ向けさせることができるかもしれない。

 ネルニザント王国のミスティカドールは、出力如何による制限こそあれど、基本的に全ての装備が同規格で装備できるようになっている。


 手にもって左前腕のコネクタに接続すれば、視界の中央に照準円(レティクル)が現れる。

 巨大なミスティカドールに照準を向ければ、彼奴は去っていく”エクスプローラ”たちを見据え、指さしていた。

 空洞になっている指先に、何やら光が集まってきている。どう考えても攻撃の前兆だ。


「まずい、間に合え……っ!」


 装備側の照準補正を待っている暇はない。全力で巨大なミスティカドールの真正面へと走りながら、一縷の望みをかけてパイルシューターを放つ。

 全長5m以上ある極太の鉄杭が空を裂き飛翔する。射出の反動に耐えきれなかった”ライトブリンガー”は、打ち出されたコマのように回転し、ひび割れた地面をバウンドしていく。


「ぅ、ぐ……みんな、は……」


 内臓を掻き回される不快感と酷く回る視界に耐えながら、巨大なミスティカドールを見やる。どうやら僕は相当に運が良かったらしい。手首の関節部にクリーンヒットした鉄杭は、伸びた指の狙いを逸らし、明後日の方向へと破壊をもたらす閃光を空撃ちさせていた。


 全体としては微々たるものとはいえ、確と痛痒を与えてきたちっぽけな細い機体を、巨大なミスティカドールはどうやら敵とみなしたらしい。悪魔のような異形の六眼が僕を貫く。


「ひとまず、速度で撹乱してぇ゙ っ!?」


 とてつもない衝撃と共に、僕は空へと打ち上がる。引き伸ばされた思考が、濡れた紙筒のようにひしゃげた”ライトブリンガー”の右腕と、軽く振り抜かれただけの、巨大なミスティカドールのつま先を捉えた。

 なんというパワー差だろう。子供が道端の小石を蹴る程度の動きで、簡単にミスティカドールが吹き飛ばされてしまう。

 暗い絶望感が押し寄せる。このままでは、街どころか国が危ない。


「せめ、て……あと、一手……!」


 地面に叩きつけられ、片脚がもげる。

 極限状態に置かれた視界は、照準円(レティクル)と巨大なミスティカドールを鮮明に捉える。

 今日の僕は運がいい。この一手が、みんなを……リファを、守る布石になれば。


 放たれた鉄杭が、巨大なミスティカドールの胸部へと吸い込まれていった。その光景を最後に、僕の意識は途絶えた。



 ◆◇◆◇◆◇



 殺された。

 兄弟が殺された。


 末の弟が、羽虫に殺された。


 胸には兄弟。みんなの心臓。


 末の弟の心臓が、殺された(壊された)


 細い針。鉄の針。


 手首にも刺さった、嫌な針。


 ちょっとうざったい程度だった。はずなのに。


 蹴飛ばしただけでひしゃげる、脆い羽虫だった。はずなのに。


 許せない。


 許せない。


 許せない。許せない。

 許せない。許せない。許せない。

 許せない。許せない。許せない。許せない。

 許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。


 あの羽虫はどこに行った?

 明るい橙色の羽虫はどこへ飛んでいった?


 (くさむら)の中へ消えていった。

 あのあたりに転がっているはずだ。


 踏み潰そう。それじゃ足りない。

 灼き尽くそう。それじゃ足りない。


 (くさむら)ごと、消し飛ばしてやろう。


 全身の棘を、(くさむら)へ向けて。

 全身の力を、(くさむら)へ向けて。


 これを放てば、羽虫は消える。

 これを放てば、復讐できる。


 なのに、なんだろう。

 この、嫌な予感は。


 振り向いた。


 怒っている。


 深紅が、舞っている。


 あぁ、お姉(・・)を、怒らせちゃった。


 でも知らない。末の弟が殺された(壊された)んだ。


 お姉が怒るなら……僕ら(・・)だって、抗うよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 

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