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騙る世界のフィリアリア  作者: 絢無晴蘿
第一章 -日常-
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01-02-04 都のシシャ、弔うは――




「そういえば、これって不法侵入かな?」

「……」

ふと、思いついて聞くと、マコト君は何をいまさらとでもいうかのようにうなづく。

真っ暗な家の中を、なぜか私が先頭で進んでいた。

「ねね。こういうのって、男の子が前なんじゃない?」

「……」

無言で華麗に無視する。

す、すごい。なんか、すごいっ。

「さすがだ、まこと君」

「……」

無言で唇に指をあてる。

静かにしろ、と言う意味みたいだ。

「あ、ごめん」

ここは通り魔さんの家の中。

さすがに大きな声じゃなかったけど、ばれたりしたら大変だ。

急いで口をつぐむ。

あ。もしかしてマコト君がいつも静かなのは、みんなにいることを気づかれないようにだったりして。

思わず聞きたくなってけど、さっき静かにと言われ……あれ? あれって言われたって言うのかな? まあ、とにかく言われたから、口を開く事はなかった。




家の中は乱雑としていた。

掃除をしていないお兄ちゃんの部屋よりも綺麗だけど、いくつかの部屋は埃だらけで使っていないみたいだった。

寝室、台所、居間、物置き、どの部屋も荒れていた。

「どこにいるんだろ……」

どの部屋にも、誰もいない。

もしかして、間違った家の中に入っちゃったのだろうか。

いや、それよりも今この家に居ないのかもしれない。


かたん


「っ?」

「……」

いや、誰かいる。

マコト君も音に気づいたようで周りを見ていた。

「あれ……?」

何かがほおをなぜた。

「風?」

どこかに、風の通り道がある?

風の通る部屋ってあったっけ……てことは。

「まこと君、こっち」

こっちに何かあるってことだ。


さっき行った物置き部屋。

そこに戻るとあたりを探し始める。

窓は開いてないみたいだから、どこかに風の通り道があるはずだ。

「あった……」

奥の棚と壁の隙間に、黒い穴が口を開いていた。

床と地下へ向かうらしい階段には何度も行き来した足跡がついている。

なにかしらがこの下にあるみたいだ。

思わず階段の向こうをのぞきこんでいると、マコト君は無言で地下に下りはじめる。

それにしても、マコト君、さっきっから何も言わないけど、大丈夫かなぁ?

なんか、変な病気とかじゃないよね?

体調悪いとかだったらどうしよう……。

うーん。

考え込んでいると、マコト君がこっちを見て来た。

「あ、わたしも行くから待って!」


階段はそんなに長くなかった。

すぐに薄暗い地下にたどり着く。

廊下みたいだ。手前に二つ扉があった。

地下だからか、暗いからか、上よりもしめってて涼しかった。

マコト君は問答無用で先に進むと、二つの扉の内一つをためらいもなく開けた。

「って、いやいやいや、ためらおうよ!」

「……なぜだ」

お、おうっ。ま、まさか返答が来るなんてっ。

「えっと、その、うーん。たぶん、ためらったほうが良いと思う」

「……その必要はない」

開けた部屋には、誰もいなかった。

その代わり、部屋の中心には大きな箱。

なんか、床に散らばっているけど薄暗くてよく見えない。

やっぱり問答無用でマコト君は部屋の中に入っていく。

あわてて追うと、後ろの扉が小さく音を立てて閉まった。

「ほえっ」

び、びっくりした。

マコト君はこっちをちらっと見ると、大きな箱の元へと行く。

「ねね、どうしたの?」

「……箱」

「はこ?」

箱がどうしたんだろう。

大きな箱。

よく観察すると、人一人入れるくらいの大きさで、なんだかふたがあって開けられるみたいだ。そのふたに、マコト君は手をかけた。

なぜか、こっちを見て来て、箱を見る。

「そっち」

「え?」

そっち?

箱の端。

マコト君と反対方向だ。

「えっと、もしかして開けるの?」

「……」

うなずく。

おぉっ、うち、なんかマコト君とこ、こみゅ、こみに、えっと、こみにけーしょんとれてる!

なんか違う気がするけど、うん。

「ちょっとまってね、はい」

箱のふたを、一緒に持ちあげる。

一緒に持ち上げたけど、結構軽い。

これなら、マコト君一人でも持ち上げられたんじゃないかな。

いとも簡単に開いたそれは、すぐに中を見せた。

地下に置かれた箱の中身。思わず身を乗り出してみる。

と――

「え?」

なんで?


そこには、女の人がいた。


眠ってる?

いや、違う。


死んでる。


息をしていない。触っても冷たい。

でも、さっきまで生きていたみたいに綺麗な姿。

その周りに、黒い糸みたいなのが落ちている。

いや、それよりも、この女の人だ。

「なんで」


なんで、こんなのが地下にあるの?

マコト君は、気づいてたの?


どれくらいそれを見ていたのか分からない。

ただ、後ろで扉の開く音がした。



「誰だ……」



知らない人の、声が――。





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