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14. 色々背負って、峠越え

 通常任務の日々。

 先輩達も春休みに入ったけど、キワコとはよそよそしいまま。だから合体技とかの訓練はできてない。

 ちゃんと謝ったんだけど、すごく変な顔をされたんだよね。何がダメだったのか未だによく分からないや。


 風香先輩からは、色々と変に説明せずにゴメンとだけ言っとけば良かったのにって言われた。でも、どうして怒らせてしまったかとか、ちゃんと説明した方が良いと思うんだ。


 連携は取れる。

 だけど私の剣とキワコの磁力魔法を合わせた技は使ってない。


 と言うか、そもそも補助隊には本当に安全な任務しかまわってこないみたいなんだよね。

 だから連携も何も、基本は訓練と巡回と書類作成ばっかりで、変異初期個体(なりかけ)を見つけたとしても風香先輩が風の刃でスパッとやって終わり。

 そんな感じ。

 新人研修やこの前の鳥がよっぽどイレギュラーだったんだ。


 そんなこんなで今日も安全な任務だ。

 魔素濃度危険区域(レッドエリア)の中で故障した機械を直すために、直せる人をそこまで連れて行くらしい。


 技術者護衛任務。

 この任務は毎回ほとんど何も起きなくて、ただ行って帰ってくるだけだって。安全過ぎて一部じゃ遠足なんて呼ばれるくらい。


「任務内容は頭に入ってるか?」


「はい」


 車での移動中、焔(ほむら)隊長が確認してくる。

 ちなみに他の隊員はもう一台の車に乗ってて、こちらの車には眼鏡を掛けたオジサンが乗っている。

 今日の護衛対象の人だ。

 金属不足なのに車二台も使って贅沢だよね。


「ん、言ってみろ」


「はい。埼玉西側の魔素濃度危険区域(レッドエリア)前まで車で移動、そこから雫(しずく)先輩が棺桶担いで秩父越え、長野の佐久平(さくだいら)まで走ります。私達はその護衛」


「おい、遮蔽(シールド)ポッドだ」


 焔隊長がオジサンを横目で見ながら注意してくる。

 そういや正式名は可搬(かはん)型魔素遮蔽(シールド)ポッドだっけ。


「あはは、気を使わなくて良いよ。皆、棺桶って言ってるもんね」


 オジサンがそう笑いかけてくる。

 神経質そうに見えたけど、意外に気さくな人だ。


「魔素濃度危険二種区域(パープルエリア)に一般人を入れる際に遮蔽(シールド)ポッドを用いる。防護服では活動限界をすぐ迎えてしまうからな。危険な場所での任務になるので中の者の殉職率が高い。そのため棺桶なんて言われてるが、今回はちがう」


「埼玉から長野まで長距離を走るからですよね」


「そうだ」


 可搬(かはん)型魔素遮蔽(シールド)ポッドは魔素から人を守ってくれるだけじゃなくて、揺らしても中は揺れないらしい。

 片道だいたい四十キロを二時間で走り切る予定だ。そんなの一般人のオジサンは付いてこれるワケない。

 だから遮蔽(シールド)ポッドにオジサンを入れて雫先輩が担いで走るだけ。距離は遠いけど、行くのは所詮魔素濃度危険区域(レッドエリア)。

 オジサンが死ぬ要素なんて今回はない。

 そんな危険な任務、補助隊に回ってこない。


「現場までポッドで運べば防護服の活動限界も稼げるからな」


「防護服ってどういう仕組みなんですか? どうして時間が経つと使えなくなるんです?」


 オジサンは頭以外すでに防護服を着ている。

 前に見た自衛隊の防護服は緑だったけど、オジサンのは白色だ。昔、本で見た宇宙服っぽく見えるね。


「これかい? 複数の断魔素材が層になってるんだけどね、その中で一番効果の高いタンパク質層が魔素を吸着する仕組みなんだ」


「えーと、魔素吸着特殊人工タンパク質……、魔生体から作ったって言う?」


「そうそう、それね。そのタンパク質は一定量まで魔素を吸着して遮ってくれるんだけど、限界を超えると魔素が素通りしちゃうんだよね。で、こっちの計測器が活動限界を示したらそれまで」


 そう言って防護服の左胸に付いてる出っ張りを見せてくれる。

 なるほどね、自衛隊の人がチラチラ確認してたのはコレか。


「この計測器には特殊タンパク質が詰まってて、その重量とか諸々の変化を計測して活動限界を示してるんだって。ゴメンね、実はオジサンも詳しくないんだ。オジサン、専門は電気だからねぇ」


「顔の透明のところは?」


「これも特殊タンパク質素材。今のプラスチックはだいたいタンパク質でできてるんだよ。昔は石油で作ってたらしいけどね」


 石油……、衰退期前に使われてたっていう、すごいエネルギーだっけ。それでプラスチックを作る?

 まぁ、今は関係ないか。


  ◆


 車を降りた後、オジサンが入った遮蔽(シールド)ポッドを雫先輩が担いで走り出して三十分ちょっと。ようやく廃墟を抜けて山に入りだした。

 もっと何もない森みたいなところを突っ切るのかと思ってたけど、意外にもちゃんとした道が続いている。

 例の廃棄研究所ってところに定期的に誰かが行ってるのかもしれないな。


 風香先輩とキワコが少ししんどそうだ。

 変身したときの身体能力向上は人によって差があるって習ったけど、風香先輩とキワコは身体能力向上があまり高くないのかもしれない。


「道平川(どうたいらかわ)ダムまでは比較的道が安定してるよ。その先は荒れ道だからペース配分考えてね」


 インカムから雫先輩の声が流れる。

 棺桶背負ってて一番大変そうなのに一番タフなのかも。普段の文学少女っぽい見た目がどんどん裏切られてくね。

 ってか、途中から荒れるのかぁ。


「キワコ、背負(おぶ)ろうか?」


「は、はぁ? は、走るだけ、問題ないし!」


「ん」


 大丈夫そうだ。

 でも、遠足って言っても結構大変だなぁ。


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