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令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


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第28話 モノマネ芸人


尾藤商事常務室。

めずらしいことは続く。

今度は瀬川から呼び出された。


「どうですか?関東天武会本部長の仕事は」

「さあ。しばらくやらせてもらいましたけど、どうやら解任されるようですね」

「おや?それはまたどうして?」


事情を話さざるを得なかった。

瀬川は、関東天武会の名誉理事だったからだ。


「ふうん。それは何とかしないといけませんね」

「いえ。あたしの方はせいせいしてるくらいなんで、別に」

「それでは私が困るんです。関東天武会本部長に、大事な仕事を依頼するつもりでいたもんですから」


相変わらず、何を考えているのかわからない。

だがなぜだか、この人はいつも自分を助けてくれる。

今回もそうなりそうな予感がする。


「まず、稲村さんが金庫番である本部長になりたがっている理由ですが…」





大和田組系山縣組事務所。

山縣は悶々としていた。

織田が関東天武会本部長を解任される、という噂が流れてきたからだ。

天武会内部を引っ掻き回すために、興信所に撮らせた写真をリークしたのは山縣だ。


(狙い通りやったわけやが、密告みたいで後味悪いのう)

「おやっさん。お電話です。織田はんいう女の方です」

「お、織田?ちょ、ちょう待て」


まさか、俺のチンコロがバレた?

ほんでもって宣戦布告?

いやいや、そんなわけあらへん。


心を落ち着かせてから、電話に出た。


「山縣や」

―やあ、山賢。久しぶり。元気?


明るい口調だ。

大丈夫。

バレてない。


「気安う呼ぶな。山賢って呼んでええのは、オヤジと兄貴分だけや」

―じゃあ、番犬って呼ぼうかな。番犬。ワンワン、なあんてね。ははは。


(こいつ、酔うとんのか?)


あの時のクールなイメージと噛み合わない。


―お中元は届いたか?番犬。

「ああ?中元やと?誰からの、何や?」


―あたしからに決まってんだろ。モノはな…聞いて驚くなよ。

「ええから、早よ言え」


―時限爆弾だ。

「じ、時限爆弾!?」


山縣の発した驚声に、近くにいた組員たちが慌てて探し回る。


(やっぱ、宣戦布告や)




電話の向こうの空気が伝わる。


(ん?てことは、こいつの仕込みじゃなかったってことか?)


例のスパイ、自称爆弾のエキスパート大迫のことだ。


―こら!ワレ、タチの悪い冗談言うとんちゃうやろな?


凄い声だ。

受話器を外に向ける。


「へえ。そんなに驚くとは思わなかったな。実はタチの悪い冗談なんだ。ちょっと暇だったもんでよ」


―は。なんや、冗談か…て、おどれ。何考えとんじゃ。ダチのじゃれ合いちゃうぞ!


また受話器を外に向ける。

山縣の声に聴き耳を立てる者がいる。



 

―え?あたしたちダチじゃないの?そうかあ。こっちの片想いかあ。じゃあ、これからなってよ。なんなら、友達以上の関係でもいいよ。


(こいつ、なにホステスの駆け引きみたいなことしとんねん…けど、織田帰蝶はええオンナではあるな)


心が揺れる。


―今のも冗談ね。


「ゴラァッ!!」


もう一押しされてたら、OKするところだった。


―じゃあな、番犬。また、飲もうな。


切れた。


(何やねん?この電話)




「どうだ。できそうか?」


帰蝶の傍で、早川壮太という着物を着た男がメモを取っていた。


「はい。自分も滋賀の出なんで。東京の人は、電話越しの関西弁はだいたい誰も同じに聴こえるそうですし」


早川の芸名は江戸家小鼠。

寄席の前座に嫌気がさした、モノマネ芸人である。




等々力の玉木邸。


「総帥。お電話です。山縣賢三という方からです」


書生が黒電話を玉木に渡す。

山縣?

何十何百という暴力団と付き合っているのだ。

いちいち覚えていない。


「玉木だ」

―あ、お久しぶりです。大和田組の山縣賢三です。安保闘争以来でんな。


ああ、あの駒の中のひとつか。

いや、待てよ。

大和田組か。

田母神さんのところだな。


「うむ。その節は大儀だったな。田母神さんはお元気かな?」


―元気か?って。まだ会うてはりませんの?そちらのご自宅に、お邪魔してるはずでっけど。

「あ?そんな予定は入っておらんぞ」


―あ。そういうことか。抜き打ちやったんや。しもたあ。

「抜き打ち?何の事だ?」


―いや。安保の時の人件費、まだ払うてもろてませんやん。他の組に聞いても、どっこももろてない言うて。

「あのデモ潰しは失敗だったのだ。ゆえに政府からは官房機密費が下りなかった。そう、瀬川から説明があったはずだぞ」


―ええ。それは聞きましたで。けど、そんなん知りませんやん。わしらはあんたから依頼されたんや。あんたが払うんがスジいうもんでっせ。


雲行きが怪しい。


―いろいろ言う奴がおりまんねん。8億の準備金は丸ごと玉木が着服した、とか。

「たわけもの!そのような戯言…」


―ウチの田母神もそう言わはって『わしが直接玉木さんに確かめる』て…。

「こっちに向かっているというのか?」


―…あ、ん?…もしもし…なんや、聴こえへん…もしも~し。


切れた。

神戸からかけたのなら、長距離電話だろう。

この頃の長距離電話はよく断線したのだ。


(まずい。大和田組は日本最大の暴力団で、名うての武闘派だ。アレを隠さねば)




つづく



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