翌朝
ドヴァリンたちと飲み明かした翌日、ぼぉっとする頭でシバは道場に居た。
目の前ではソフィアが隼人から剣術を教わっていた。その様子をシバは床の上に正座して見ていた……というかほとんど寝ていた。
「シバよ。昨日は遅くまで……いや今朝まで、左近殿と飲んでおったそうだな?」
と隼人が声を掛けた。
「え? あぁ、よくご存じで」
とシバは急に声を掛けられたので、慌てふためきながら返事をした。
「そろそろ朝の教練は終わるぞ。お前は顔でも洗って来い!」
とひとことを残して隼人は道場から出て行った。別に深酒を咎めた訳では無かったようだった。
ソフィアが心配そうにシバの顔を覗き込みながら
「二日酔いですか? 大丈夫ですか?」
と聞いた。
「うん。大丈夫。でも昨日はちょっと飲み過ぎたかな」
と言いつつ、まだ全然酒はその体内から抜けきっていなかった。懐かしい顔ぶれの飲み会は、ついつい酒が進んで飲み過ぎてしまう。そんな事を思いながらシバは正座を崩して胡坐をかき直した。
「酒量はチートでは無いんですね?」
とソフィアが笑いながら尋ねた。
「流石にね。『底無しのざるチート』というスキルは無かったな」
とシバも笑った。
当たり前だ。そんなチートがあってたまるか。
「それにしてもシバさんたちの事をこの街の人は良く知っていますよね」
とソフィアは感心したように言った。
「そうだねぇ……」
朝まで飲んでいたという情報が翌朝、隼人の耳に届くぐらいには、シバとアキトの顔はこの街の人間には知れ渡っていた。もっともそんな情報が入らなくても、今朝のシバの状況を見れば誰でも予想は付いたと思われる。
「結構、長い間ここに滞在していたんですか?」
「うん、そうだなぁ……一年ほどいたかぁ……フェリーが宮殿に帰ると決めた時に、この国を出たんだったなぁ……そのままデークハーデンの宮殿にフェリーを送り届けたんだった」
とシバは昔を思い出すかのように遠い目をして言った。
「父上もやっと納得したんですね」
「渋々だったけどね」
とシバは笑った。
「ところでシバさんがこの世界に来た時ってどんな感じだったんですか?」
とソフィアが聞いた。そう言えばこの世界にシバたちが来た時の話を、ほとんど聞いていなかった事にソフィアは気が付いた。
「う~ん。それを聞くならソフィアなんか、僕たちが来る前からこの世界に居たでしょ?」
とシバは聞き返した。
確かにソフィアはシバ達よりは若いがこの異世界に生まれたのは、シバたちがこの世界に転移してくる二年前だった。
「生まれてからの宮殿暮らしですからね。世間の事は全く知りません。お二人が転移者だったことも知りませんでした。父上がシバさんたちと冒険していた事さえ知りませんでしたから……そう言えば父上が戻られた時にもお二人にお会いしていたらしいですが、それさえも忘れていましたし……すみません」
とソフィアは最後に余計な事まで思い出して謝った。
「いや、それは全然気にしなくて良いんだけどね。まだソフィアも幼かったし……」
とシバは慰めた。
――いえ、中身は十六歳プラス六歳でしたけど――
とソフィアは心の中でひそかにシバの言葉を訂正していた。
「それにしても、もう十五年になるのかぁ……」
とシバは今更ながら時の流れを感じながら、昔の事を語り出した。




