左近
シバは改めて
「え? それはまぁ……左近の師匠直伝の魔刀というか秘刀というか……」
と適当な言い訳を並べ出した。
「なにを狼狽しておる。どうせ、くだらないものばかりを打っているんだろう」
と左近は呆れたように言ったが、シバの事を咎めてはいなかった。
「はぁ、折角ここで鍛冶屋のスキルを手に入れたもので……」
とシバは言い訳した。
「まあ良い。それよりもお前の得物は持っておるのか?」
と左近はシバに聞いた。
「はい。こちらに」
と言ってシバは腰に吊るしていた刀を左近に手渡した。
左近は黙って受け取ると刀身を鞘から引き抜いた。
刀身を立てて反りや切先を確かめた後、刃文や沸を観ていた。
最後に水平に刀を延ばしじっくりと見た後、また刀身を鞘に戻した。
「ふむ。ちゃんと手入れはしているようだな」
と左近は満足そうに呟いた。
「当たり前ですよ。師匠が打った刀ですよ。手入れをしないわけないでしょう」
とシバは少し憤ったように言った。
「近頃、大陸では変な魔力や呪いを付与するのが流行っているらしいからのぉ?」
「間違っても師匠の刀に変なものを付与したりはしませんよ」
とシバは鼻息荒く言い切った。
「そうじゃったのぉ。悪かった」
と左近は笑いながら頭を下げた。
「でも、他の武器には変なものを付与してますよ」
とアキトが隣から口を挟んだ。
「余計な事を言うな!」
とシバが慌てたようにアキトを睨んだ。
「ま、それはそれじゃな」
と左近は自ら打った刀以外には興味が無いようだった。
「私よりも変なものを打っているのはドヴァリンの方ですよ」
とシバは話題を変えるべくドヴァリンに話をふった。
「その話は先ほどから散々聞かされておる」
と左近は苦笑いしながら言った。
そしてシバとアキトを見て
「そもそもあんな空飛ぶ凶器のような艇に乗っておる時点で、お前らも同じ穴の狢じゃよ」
と呆れたように言った。
この時代において飛空艇ミカサは、あり得ない威力を持った戦闘艦だった。
「あれを作ったのはドヴァリンとオージーですから」
とシバとアキトは我関せずかの如く、二人に擦り付けた。
「ふん。乗っている時点で同じだと言っておるだろうが」
と左近は全くシバの話を聞いていなかった。
「ところで、お主たち、今回はいつまでここに居るつもりじゃ?」
「折角なので暫くは逗留しようと思っています」
とアキトが答えた。
「ふむ。勘兵衛も喜んでおるじゃろう」
「さあ? どうでしょうかねえ……」
とシバは答えながらテーブルに並べてあった小皿から枝豆をつまんで口の中へ放り込んだ。
懐かしい味がした。
「でも、嫌われてはいないようです」
とシバは言葉を続けた。
「ふん。ああ見えても勘兵衛は、お主たちが帰って来て喜んでおるぞ」
と左近はシバの言葉に呆れかえりながら言った。
「それなら良いんですけどねぇ」
とシバはアキトが差し出した徳利から酒をお猪口に注いでもらいながら答えた。
そしてそのお猪口の酒を一気に飲み干した。
「美味い!」
とシバは小さな声で叫んだ。
シバ自身は勘兵衛と久しぶりに会えてとても嬉しかったのだが、それを素直に表現できなかっただけだった。
結局その日、シバたちは夜遅くまで美味い酒を痛飲する事になった。二人はやっとトウイの国へ辿り着いた現実を実感し始める事が出来ていた。
そして彼らはこれからしばらくは、トウイの国でのんびりと過ごす事になるのであった。




