さあ、帰ろう
「左近の師匠が居たからあれらは実装できたんだがな。流石だよ」
とアキトが改めて感心したように言った。それを聞いてシバも同意したように頷いていた。
実際にシバの模型やモデルガンの知識だけでは不可能だった。それが実現できたのは左近の技術と発想があったからであった。
そこに至る工夫や苦労は、今やシバ達その当時のクルーの良き思い出となっていた。
ふとその時の事をシバは思い出した。
*
*
「よくもこんなものを作ってしまったな」
とアキトがミカサを見上げて言った。
「うん。ちょっとやり過ぎたと思っている。でもそれを言うのならお前も同罪だろうが?」
とシバは複雑な表情を浮かべて言った。
「まあな」
この世界に飛ばされた二人には21世紀の現代に生きた人間の知識がある。その知識と経験をこの二人は遺憾なく発揮し、ドヴァリンやオージー、それと五条左近の工房の人間たちとこの飛空艇を創り上げてしまった。
今この飛空艇ミカサ一隻で一国を相手に戦えると言われている。それほどこの飛空艇の戦闘力は高いものだった。
「この艦に勝てる戦艦はないだろうな……」
とシバは呟いた。
「間違いないな」
「しかし俺はこれを戦艦にするつもりはない」
とシバはミカサを見つめながら言った。
「ここまでの戦艦を作っておいてか?」
「そうだ。降りかかる火の粉は払うが、戦をする為だけの艦にはしたくない」
シバは何も考えずにこの戦艦を改装してしまったが、出来上がった物を見て意思が固まった。
そして
「だからこの艦は戦艦ではなく、単なる飛空艇にしようと思う。人と荷物を運ぶ飛空艇だ」
ときっぱりと言った。
「うむ。お前らしい答えだな。俺もそれで良いと思う」
とアキトもシバの意見に同意した。
*
*
とシバはそんなアキトとの会話を思い出していた。
ちなみにその後、シバは『トウイの国』にはシバ達が発案した三連装砲や機銃を『トウイの国』が自国の為に製造する事を許していたが、左近はそれをしなかったし、スサノ帝も敢えて作る事を命じなかった。それが彼らの流儀であった。
『何かあった時はお前たちがこの国を護りに来い!!』
とスサノ帝はいつものように豪快に笑って言うだけであった。
そもそもこの『トウイの国』の武士は異様に強かった。実際、過去に隣国から何度か攻め込まれたことがあったが、その都度撃退してほぼ壊滅させていた。その上姫巫女の妖術や魔法の反撃も凄まじいものがあった。シバ達の力を借りるまでもなく、彼らは強かった。
「ま、昔話はそんなところだな」
とシバはそう言って立ち上がった。
そして
「オージー。懐かしい話が聞けて良かったよ。楽しかった」
とオージーの肩に手を置いて言った。
「あの時に艇長たちに会えた事を、儂もドヴァリンも感謝しておるよ」
とオージーも笑顔で返した。
「さぁ、これからモルタリア帝国へ帰ろう。パパ陛下が心配しているからな」
とシバはソフィアの顔を見て言った。
「心配なんかしていませんよ」
とソフィアは笑って立ち上がった。
その時、艦内にダミアンの声が響いた。
「前方に炎龍発見!! 艦……いや艇長、やりますか?!」
「当たり前だ!!」
と言ってシバは操縦室に向かって走り出した。
「あぁあ、行っちまいやがったよ。仕方ねぇな」
とドヴァリンが頭を掻きながら立ち上がった。
「どうした? 止めるか?」
とオージーがその姿を見てドヴァリンに聞いた。
「止める訳ないだろう! 久しぶりの獲物だ! オージーやるぞ!」
とドヴァリンも機関室に足元も軽やかに向かった。
「はぁ……久しぶりに奴を乗せるとこうなるんだよなぁ」
とオージーは諦め顔だったが、口元は明らかに緩んでいた。
そして手元の伝声管に向かって
「機関室! 今から炎龍退治だ!」
と叫んだ。
その声を合図にその場にいたクルーと冒険者は一斉に立ち上がり、自分の持ち場に向かった。
いつもの飛空艇ミカサの日常が戻って来た。
ソフィアよ!
炎龍退治の後はモルタリア帝国で、パパ皇帝が待っているぞ!
了
これで、この皇女殿下の飛空艇の話は終わります。
この後の士官学校編は、書いてみたいと思っていますが、いつの事になるのかは自信が持てません。
最後まで読んでいただいた方には感謝しかありません。
本当にありがとうございました。




