フレデリックのけじめ
バーナード自身は誰もが認める才能豊かな皇子であったし、フレデリックはこの兄が皇帝の座に就いた暁にはその補佐を喜んでするつもりでいた。しかしフレデリック自身も影が薄いと言われながらも、将来を嘱望されるような才能を持った皇子であった。ここに両雄が二人の知らないところで並び立つ事になってしまった。
それもあってフレデリックは『立太子の礼』の直前に冒険者として宮殿から離れたのであったが、その行為がバーナードに決断を促す要因にもなった。
――私の事を慕ってくれている弟がそこまでしないと、自分は貴族達に皇太子として認められないのか! フェリーに余計な心配をさせてしまったのか……――
と弟の兄を思う気持ちを、この繊細な第一皇子は感じ取ってしまった。
血筋と家柄に関して言えば、問題なくフレデリックに分があった。兄バーナードは空白地となっていた辺境の地フランクゼレードに赴きフランクゼレード辺境伯となる事を皇帝に直訴し実行した。幸いというかなんというか軍事にも長けたこの兄の辺境伯就任は適材適所と言えた。
これでフレデリックが皇太子として担ぎ出される事は、本人が納得しようとしまいと確定した。
決まったからにはフレデリックはすぐに宮殿に戻らねばならなかったのだが、彼は頑なにそれを拒否してシバたちと共に旅を続けていた。しかし、それも無駄な抵抗だった。
立太子の礼の日程が決まると、流石に彼も戻らざるを得なかった。
「今まで好き放題に生きてきましたからね。皇族としての自覚さえも全くない人でしたから……でも、帰って来てからは皇太子としての本分を全うすべく努力していたのは、家族として私も傍で見ていてよく分かりました」
とソフィアは感慨深げに語った。
「確かにそうだったねぇ……あれからフェリーはセントワープにほとんど寄り付かなくなったもんなぁ」
とシバも当時を振り返りながら思い出していた。
フレデリックがセントワープを訪れなくなったのは公務が忙しかったのもあるが、シバたちとの関係を邪推されるのを一番恐れたからであった。
フレデリックがこの二人のパーティに加わって一年が過ぎた頃に、シバ達は飛空艇を手に入れた。といってもそれはまだ単に空に浮かぶことができる程度の代物であったが、それから二年経った頃には、この飛空艇は改装に改装を重ね、驚くべき性能を持った艇となった。まさに驚異の軍艦と言えた。
その脅威に各国の首脳陣は気が付き始めたのもこの頃だった。その為、この飛空艇の整備施設は秘密裏に建設する必要があった。
ちょうどその頃、フレデリックは飛空艇ミカサから降り、渋々宮廷に戻った。その後、モルタリア帝国の上空に浮かんでいた帝国領の浮遊島をフレデリックの口添えで、シバ達は秘密裏にベース基地として使用する事に成功した。それがセントワープである。
その後、浮遊島セントワープは皇室領とし、フレデリックの私的な別荘という形で世間の目を欺いていたが、いつまでもそこにシバたちのベース基地があるという事実を隠し通せるとも限らない。
ただでさえフレデリックが彼らと一緒に旅をしていた事実は誰もが知っている上に、皇太子になってからも近しい関係であると他国に思われては余計な緊張感を生む。それを危惧してフレデリックはなるべく浮遊島セントワープには近づかないようにしていた。




