皇子だった
二人が納得するのを見たメリッサは
「あんた達が良いというなら私は反対しないわ」
とフレデリックを見下しながら言った。
「ところであんたの名前は?」
とシバが聞いた。
「私はアルベルト・フレデリック・クリッセンという……」
と名乗った。
「どっかで聞いた事がある名前だなぁ……」
とメリッサが反応した。
「なに? あんたの知り合い?」
とシバがメリッサに聞いた。
「いや、そうではないと思う。どっかで聞いた名前なんだよなぁ……師匠の知り合いかも?」
「あのぉ……」
とフレデリックは遠慮がちに声を掛けた。
「なに?」
メリッサが面倒くさそうに聞き返した。
「一応、私……この国の第二皇子なんですが……」
とフレデリックは消え入りそうな声で言った。
「ええ??……ああ……そういえば思い出したわ。影の薄い第二皇子ね」
とメリッサは納得したように頷いた。
「はい……まぁ……優秀な兄上と比べられたらそうなりますね」
とフレデリックはメリッサの言葉に反論もせずに肯定した。実際第一皇子は優秀だった。
「もしかして、この人って王様の子ってこと?」
とシバがメリッサに聞いた。
「王様ではなく皇帝の二番目の息子よ。この人は」
とメリッサはシバに教えた。
「ほほぉ、この国には皇帝が居るのかぁ……」
とアキトとシバは初めてこの国の内情を少しだけ知った。
「あんた達は本当に何も知らないんだね?」
「だってここに来てまだ二か月にもならんからな。そんなところまで気が回らんわ」
とシバが自信ありげに言った。
「だから、そこは胸を張って主張するところではないだろう?」
とメリッサは呆れながら言った。
その後メリッサとフレデリックは懇々とこの国の成り立ちからを二人に説明する事になった。
その説明を聞き終えた時に
「で、その皇子様がなんでこんなところで野垂れ死にかけていたんだぁ?」
と、うやむやになりかけていた一番大事な事をシバが聞いた。
「そうだった! それは私も聞きたい!」
とメリッサもそれには同意していた。
「それは……」
とフレデリックは話し出した。
彼は、妻子を置いて宮殿を出た事、一応書置きは置いて出たので、宮殿で大事にはなっていないと思うという事、旅に出る事は兄皇子とすぐ下の弟皇子は知っているという内容の話を語った。
「要するにあんたが何も考えていない、世間知らずのお気楽皇子である事はよく分かった」
とさっきまでこの国の事を何も知らなかったシバが、フレデリックを見下したように言った。
「おい! それをお前が言うな!」
とメリッサがシバに食ってかかった。
シバとアキトは世間知らずの上に、常識知らずの魔力と能力を持っている。メリッサは皇室に何の思い入れも無かったが、こんな奴に皇子を見下されるのは、この国の臣民として許しがたい気分になっていた。
「まあ、この人を放置したらどういう目に遭うか考えるまでもないしな。一応皇族だし見捨てる訳にもいかんだろう。それに剣技はそれなりに使えそうだから、前衛に良いんじゃないのかな?」
とアキトが冷静に言った。
「第二皇子を前衛かい?!」
とメリッサは口にしたが強く反対する理由も思いつかなかったので、それ以上は反論しなかった。
という事で思いもかけない形でこの四人はパーティを組んで旅をする事になった。
……と、ここまで昔話をしてシバは思い出したように
「おっと、もうこんな時間か……昼飯にしようか?」
とソフィアに声を掛けて立ち上がった。
思わずシバも話し込んでしまったようだ。
教練場を後にした二人は、道場からそう遠くないところにある食堂に向かった。




