新装版プロローグ001
暖かい。
苦しい。
唐突に出てきた二つの感情だ。
これ以上の感想を持てないこの状況、体験するのは初めてではない気がする。
冷静になれ、自分。
……まず、現在の状況を把握しなければ。なんとなく、すぐに答えが見つかる予感がしないでもないが。
えーと……自分は今、光が差し込まない暗闇の中にいて……恐らく、とても近くから発されている苦痛の混じった声がこの場所に響いている。
……段々状況が分かってきた。
また、だ。
もう分かってしまったとは、流石に早すぎではないか? ろくでもない経験値が上がりすぎている。
聞こえてくる声が段々と大きくなるにつれ、ぼんやりとした光を感じ取れる様になった。
……そして、叫び声に近い一等大きな声と共に顔をしかめてしまう程強い光に包まれた。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
泣いてるのは私。
自分では泣こうと思っていないのに、この瞬間だけはどんな事にも抗えない。
「奥様、よく頑張りましたね!」
「……私の……赤ちゃん……ああっ、やっと会えたわ!」
転生、一度死んで生まれ変わる現象。
非現実的だと思うだろう。私だって自分が経験しなければ信じる気にもならない。
そんな科学的根拠も糞もない現象を体験するのはこれが三・度・目・。
ここまで来たら信じるしかないのだ。
「私に顔を見せて…………こんにちは、今日から宜しくね。」
生まれたばかりの私は、既に目を開けられた。
何故か?……知る訳がない。知ろうとも思わない。
細かい点を考えていたら頭がはち切れてしまうので、最初の転生の時点でこれからの人生に大きく関係しない事以外を考えるのはやめた。
……今度の母親は、私を抱いて涙を流している。
とても美しい女性だ。こんな人の元に、私みたいな転生者が産まれてしまって申し訳なくてたまらない。
命が巡るシステムは未だ不明だが、本当に生まれてくる予定だった命が存在するのならば何度謝っても足りないだろう。
「奥様……お嬢様をこちらに。お体を洗わさせていただきます。」
兎に角今は、流れに身を任せ続ける事が最適解。
「そ、そうね。やっと会えたのが嬉しすぎて忘れていたわ。」
例え、体感時間で言えばつい先程まで女子大学生だったとしても、素っ裸を恥ずかしがりはしないのだ。
……本音は別にあるけれど。
「すぐに終わりますからね。」
40代半ば頃に見える助産師は、私の体をぬるま湯を使い綺麗にしてくれる。
湯加減が丁度良いです、ありがとうございます。
なんて考えながら、されるがままにあれやこれや。
……ん? なんだか部屋が静かになった気がする……あ!
「……おっ、おぎゃっ。」
危ない危ない。
生まれてからある程度の時間が経つと、意識して泣かなければ涙が出ないので大人達に心配されるという事を忘れていた。
落ち着ける時間が来たら、最初……一度目の人生から思い出して鮮明な記憶を取り戻さねば。
繰り返される転生を終わらせる為に。




