60連合ダンジョン2
古城の地下、土の臭いが静かに香る空間に熱い剣戟の音が響き渡る。
もちろん、フアーストアタックは私だ。
「敵愾心!」
ブラムのターゲットを私に集中するように、できる限りダメージを与えるように突きで相手の頭部を狙う。
その攻撃を重心を少し後ろに下げながら、鋼のように硬い爪で剣を受け流しながら近づき、反対の爪で私の首を狙ってくるブラム。
流石は60レイド、一筋縄じゃいかないな。
ブラムの爪を防御力に任せて頬を掠めさせながら踏み込む。
直接攻撃で3桁近いダメージは初めてだ。
潰されるとかの回避不可を除いて。
「掠めただけで3桁近いダメージとか、緊張するな。」
補正がかかったことにより、2桁ダメージは普通だ。
「それでも僕の倍は耐えれるじゃないか。」
天音が何か言ってくるが、お前が本気出したら与ダメージは私の倍以上だ!
「エリアシール!」
掛け声に合わせて光の鎖のようなものがブラムに向かっていくが、途中で書き消される。
「やはり効かないか!」
手早くネックレスを付け替えて本気仕様に切り替える。
「さて、私の本気を甘く見るなよ。」
両手に盾をもって皆を守る仕様なんざ、前時代の遺物だ。
「時代は双剣的な盾だぜ!」
両手に構える盾が2枚。
エッジの部分が刃となり、少しフォルムがシャープとなっている。
「矛?盾?両方です!」
左手の盾は大柄だから振るには向かないが、右手の盾は上部に持ち手をつけ、ジャマダハルの様に使うことができる。
そうして押さえ込む努力をしてるが、ヘイトも効いてなさそうだし、体も小さいし、大変なバトルになりそうだ…。
そうして戦ってると、「バチチチ!」という音が後方から聞こえてくる。
何事かと視線を向けると、ミニ達が操られているプレイヤーに抱きつき電気ショックを与えているのが見えた。
倒れ付してビクビク痺れてるのが見えるが、何してんだあいつは…。
他に方法はなかったのだろうか…。
あとで追求する必要があるな。
そちらにブラムが視線を向けて激昂する。
「我が花嫁達に何てことをしてくれてるのだ!」
どっかの熱血主人公のようなことを言ってくるが、君は悪役だ。
あと、花嫁ではない。ウチの大事なメンバーだ。
「八つ裂きにしてくれるわ!」
本気でも出すのか、背に翼が広がって浮かび上がる。
いい的になりたいらしい。
そんなブラムに優秀なメンバー達が攻撃を加える。
遠距離攻撃が集中され、爆炎でブラムの姿が見えなくなる。
見失うからやめてもらいたい。
「射撃中止!!」
視認できないと困るから、中止命令を出す。
「周囲に注意しろ!いまからフラグを建てる!」
皆に注意を促して、私はある言葉を叫んだ。
「やったか!?」
「これしきのことで、私が倒れると思ったか!!」
空中にコウモリが数匹浮かんで、そこから声が聞こえてくる。
すぐさま、その位置に天音が魔法を叩き込む。
予想通りだから驚きも何もない。
むしろ、足元の影から出るとか、誰かの背後から出るとかしてほしかった。
「ふははは、1匹1匹が全て私だ!少々倒されたって問題ないわ!」
天音の魔法で数匹のコウモリが倒せたが、周囲には再び数十匹飛び回っている。
1匹でも取り落としたら、倒せないのか…。
予想の範囲内だが、どうにかできる手段が思い付かない。
「最悪パターンだな…。どうするかね…。」
コウモリとなって逃げる暇もないほど瞬時に倒す手段はない。
銀の武器で攻撃したりしてるが、普通より治りが遅い程度でしかない。
白木の杭を打ち込むような隙もない。
頭を吹っ飛ばしたら、ニョキニョキ生えてきた。
気持ち悪い奴だ、どうしようかねぇほんと…。
盾役を交代して、少し休んでると天音が聞いてくる。
「親父、手はないの?」
「あと1つある。ブラムが出てきた先に多分棺桶があるから、そこの土の浄化をして復活地点を潰してから、消耗しきるまで戦い続ける。
まぁ復活するまで時間はかかるから、どっちが先でもいいが。」
「うへぇ、先が長そうだ…。」
「朗報がひとつあるぞ。」
「なに?」
「吸血する為の花嫁達がこっちの手にあることだよ。」
「回復されないだけマシか…。」
普通に倒してるなら、花嫁達に邪魔されながら倒しきる前に1回は回復されて、それに気づいて花嫁を守りながら倒すことになるだろう。
癪ではあるが、オーリが痺れさせて睨みを効かせてるお陰で回復する手段がないのだろう。
こうして休憩をして、落ち着いて見てるとよくわかる。
余裕を装って笑っているように見えるが、あの笑みはひきつった笑いだってことが…。
「よし、その方向でいく。多分それが正解だ!
現在は押さえてくれている人がいる。私達が復活地点を潰すぞ!」
周囲に聞こえるように大きな声で叫び、奥へと続く道へと駆け出していく。
「させるかぁ!!」
ブラムが焦った声をあげる
よし、予想通り私を止めに来たな!
甘いわ!私達は盾パーティーだから押さえるのは得意だ!
「私がここは受け持つ!破壊と浄化は任せた!!」
「「「わかった!」」」
複数人が向かって走っていくが、特に止めない。
過半数が残っているから、ブラムを止めるのは問題ないからな。
棺桶に向かう途中の道で襲われることも考えたら、数パーティーが離れるのは良手だ。
「なめんな、止めるだけならこのゲームでは、ほぼ最強だ!」
比べた事がないからな。確証はない!
そうしてブラムを止めていると暫くしたらようやく限界を迎えたようだ。
人間形態に戻ったブラムの左手が再生しなくなった。
よし、どうにかなりそうだな。
「長い戦いもようやく終わりだな。最後に残す言葉はあるか?」
「高貴な私が貴様等のような餌に滅ぼされる日が来るとは…。」
「高貴だの平民だの関係ないね。お前は私の仲間を傷つけた。それだけで滅ぼすには十分だよ。」
ゲームだからこんな思考は成り立つが、現実だと法を考える必要があるから一概に言えない。
回復や復活する手段を失ったブラムの首や四肢を切り落とし、胸には簡易だが杭を打ち込む。
余ってた武器の取っ手の形を整えて、杭に見立てただけだ。
復活したら、再び滅ぼせばいい。
杭を刺すと、一際大きな雷が落ちてブラムの体が灰となって崩れ去っていった。
「やっと終わった…。消極的な手段は苦手なんだよ…。」
疲れからその場に座る私にソルティが声をかけてくる。
「お疲れさま、今回も大変だったね。」
「ほんとだね、あとはドロップが無いから奥に宝物庫があると思うから、回収しないとな。」
さて、今日はあと何周回れるかな?
まだ午後になったばかりだからな。頑張ろう。
本日も誠にありがとうございます




