1 『再侵入』
ゆっくりと目を覚ます。
カプセルの蓋がプシューと音を立てて開き、体を起こすと何やら騒がしい。
「アルファ!おい!」
声がした方に視線を向けると、ベータがアルファの入っているカプセルを強く叩く。
俺はカプセルから出て、様子を見ようとするが、場の雰囲気がピリピリとしていて、全身に圧がかかるような空気だった。
「シータ! ベータを連れて行け!」
オメガがそう言って、シータが出てくる。
ベータの体を掴み、無理やり引きずって部屋から出て行こうとする。
「離せ! アルファ! アルファ!」
ベータの異常とも言える呼びかけにカプセルを見ると、アルファが汗だくの状態でシステムに入っている。
それに、両腕が痙攣を起こして、とてもじゃないが正常とは言えなかった。
「何があったんですか?」
「分かんないんス! 侵入システムに不具合はないですし、一緒に潜っていたベータさんは無事に帰ってきてるっス! 帰還システムは転送済み、わからないんスよ!」
シグマが畳み掛けるように話す。
眼球が常に動いているから、どこかに異常がないか、シグマ自身頭をフル回転で扱っているのだろう。
「カプセルは開けられないんですか⁉︎」
俺がそういうと、シグマは首を振った。
「カプセルの蓋はゲーム機でいうソフト、ゲームの最中にソフトを突然抜いたら、破損する可能性があるっス! 何も出来ないんスよ!」
痙攣が続くアルファを見る。
「ベータさんがもう一回侵入することは⁉︎」
「無理っス!同じ世界には二度と入れない仕組みになってるんスよ! それの理屈はまだわからないんスが、過去に何度やってもダメだったんス!」
瞬間、アルファの入ったカプセルに繋いだ機械がエラーを起こし、ビーっと気持ちの悪い音がなる。
これ、ガチでヤバいんじゃないのか?
「俺が侵入します! シグマさん、システムに繋いで!」
「危ないっスよ!許可出来無いっス!」
そうはいうが、アルファの痙攣は酷くなり、機械達は騒がしく鳴いている。 危ないとか、そんな事を言っている場合じゃ無い。
「そんな事いってる場合ですか⁉︎アルファさん死にますよ!」
「でも!」
シグマが何かを言おうとした時、赤い髪が視界に入る。
「なら私も行く」
そう言ったのはシータだった。
「シータさんまで! お二人とも、行ったらそれっきりかも知れないんスよ!」
シグマが声を荒げて叫ぶ。
だが、現状のアルファを見て、はいそうですか。と見捨てることは出来ない。
「シグマさん! お願いします・・・!」
そういうと、シグマはアルファを見た。
唇を強く噛み、俺たちを睨む。
「わかった・・・っス・・・。 その代わり!失敗したら恨むっスから!」
シグマのその言葉を聞き、俺とシータはカプセルに飛び込む。
「シグマ、相手の情報を」
シータがシグマにいう。
シグマが強く頷き、口を開いた。
「今回のチートは無限弾薬。リロード無しに銃を永遠に扱うチートっス。 ですが、こちらは破壊済み。 現在システム内で起こっている原因は不明。何があるかわからないっスから・・・気をつけて・・・!」
それを聞いて、シータと俺は強く頷く。
シグマが俺たちの蓋を閉め、電源を入れるとプシューとガスが吹き出し、すぐに意識がシステムに転送された。