↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が勇者カナタだが、何か用か?  作者: 鳥辺野 九


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/69

47-魔王城、動いてないか?

 春踊る明るい森の向こう側、それは緑生い茂る樹々をなぎ倒しながら轟々と音を立てて迫ってきていた。


「カナタよ。おまえは魔王を本気にさせたようだ」


 The Dがただでさえムンクな叫び口なのをさらにあんぐりと開け放って言った。


「魔王が、本気に?」


 黒々とした石造りの巨城は春の新芽が芽吹いたばかりの賑やかな森を貪り食うように侵攻していた。いかにも闇の眷属が巣食ってるような刺々しいデザインの西洋風な城で、金属的な重低音を規則正しく響かせながら黒い霧を噴き出してこっちに迫ってくる。


「こんな近くに魔王の城なんてあったっけ?」


 いやいや、岩山が乱立したいかにも恐竜が闊歩していそうな大平原と原始的な森林が広がっていたはず。こんな目立つ城なんてなかった。


「だから、向こうからやってきてくれたってことだろうよ」


 そうだ。そもそもがおかしい。巨大な城がごとごと震えて森を押しつぶしながら走ってくるなんて。この城は動いている。大重量の金属をこすり合わせる駆動音を奏でて自走してやがる。


「魔王城、動いてないか?」


「そりゃあ本気になれば城の一つや二つ、動きもするだろうよ」


 はいはい、そうですか。こっちの常識はそっちの非常識ですね。異世界人に聞いた俺がバカだった。そりゃあ本気になれば何でもできるよな。


「あれに魔王が棲んでるのか?」


「ああ。魔王の根城にして魔王軍の行動拠点、そして四天王どもの召喚ポイントってとこだ」


 下手すりゃ四天王四連戦まであり得るぞ、と覚悟していたが。魔王城の登場でこれは一気に魔王戦までノンストップバトルの可能性も出てきたわけだ。


「と、来れば、先手必勝しかないな」


 向こうから最終決戦を仕掛けて来た以上は、魔王城ごとすべてをぶち壊す。それがベストだ。


 東京ドーム一杯分ってサイズ感が妙にしっくりくる巨大な石造りの人工建築物が機械的な唸りを上げて大地を震わせる。森の樹々をなぎ倒すその足元が見渡せるまで近付いてきたところで、俺はようやくこの暗黒の魔王城の正体がわかった。


 城の足元、そこには大地を噛み、土塊を砕く、とてつもなく強大な無限軌道が何基も連なっていた。戦車だ。魔王城とは城の形をした巨大戦車だ。


 何てバカでかい戦車なんだ。思わず唖然と見ていると、もはや懐かしかすら覚える東京都庁を思い出させる二本の禍々しい尖塔ががくんと大きく揺れた。歯車が噛み合う大きな擦れ音が鳴り響き、徐々に角度が寝始めて倒れゆく尖塔。これは、すごくイヤーな予感がする。


 やがて、尖塔部分がほぼ水平に倒れると、ぴたり、塔の傾きも軋む轟音も止み、尖塔の先端部にぽっかりと空いた黒点が俺に向けられた。それも二つだ。まるで巨大城に真っ黒い目が現れて、俺をじとっと睨みつけてるようだ。


「あれって、もはや城じゃなくて戦車だよな?」


「おまえの世界ではセンシャって言うのか。ワタシの世界ではああいうのはタンクと呼んでいる」


 同じだよ、それ。思わず心の中でつっこんでしまう。


「奴こそが四天王最高戦力、タンクだ」


 その四天王最高戦力タンクの巨大過ぎる二本の砲身がぴったり俺を睨んでいる。と、言うことは。


 音はしなかった。砲身の黒い穴が鈍く光ったかのように見えた。次の瞬間には2トントラック並みの大きさの砲弾が俺の眼前まで迫ってきていた。


『荷重力偏移能力レベルアップ。

「いきなりっ

 カナタ・パンチを放つ。

 超巨大砲弾即着弾。

 圧縮蒸気砲の異世界レベルの硬質ヘッドパーツが砲弾とぶつかり合い、凄まじい圧力が砲弾の接触部を融解させる。

 撃ってくるっ

 融けた砲弾の部位が光り輝き、それでもなお俺のパンチエネルギーと砲弾の射出エネルギーがせめぎ合い、ついには砲弾が張り裂ける。

 のかよっ!

 砲弾の運動エネルギーは死なずにまだまだ俺の身体を撃ち抜こうと突進してくる。俺の右腕はその程度のパワーには屈しない。引き裂かれた砲弾は真っ赤に溶け落ち、四つに裂けて俺の周囲四方に飛び散った。

 物理ダメージ完全無効』


 一瞬の間にこれだけのことが起こった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。