14-画像! 違う。動画だ、動画!
アダムスキー型空飛ぶ円盤。こいつはロマンだ。センス・オブ・ワンダーから抽出されたロマンの結晶体だ。
どこまでも突き抜けた青い空。今日はよく晴れ渡っていて雲の姿はない。空を刺すような高い建物どころかそもそも人工建築物がまったくない平原は、鮮やかな緑色のラインで山々の輪郭を描いている。そんな圧倒的に情報量の少ない風景に、銀色の空飛ぶ船が浮かんでいた。
お皿をひっくり返してその上にさらにひっくり返したお茶碗を乗せたような前時代的なフォルム。運転室と思われるお茶碗部分にはいくつか窓のような模様が見られるが、あの位置に窓があってもせっかく空飛んでるってのに下が全然見えないじゃねえかって非合理的デザイン。お皿の下部には着陸脚のような半球体がくっついているが、三次元航行が主な宇宙空間で上下のデザイン差があるのはどういうことってつっこみたくなるミステリー感。間違いなくUFOだ!
「イングリットさん、あれ見て見て見て!」
「ああ、見てるって」
「うわ、やっべ、来たよこれ!」
「ああ、うん、そうだな」
「あっ、あっ、動いてる動いてる。こっち来てね!?」
「カナタ。えーと、……あれ、なに?」
何故だろう。ついさっきまで潤んだ瞳で暖かく俺を見つめてくれていたイングリットさんが、今では生ゴミにたかるハエを見るような冷めた目をしてる。
「画像! 違う。動画だ、動画!」
左手首にフィットしたスリーブから時間操作できるように魔改造されたスマホを抜き取って空に向ける。速攻で動画撮影開始。
「いいねー!」
スマホの小さな画面でも未確認飛行物体感が醸し出されて、ちゃんとアダムスキーしてるってのがわかる距離感でこっちに向かって飛んでいる。こいつ、わかってるな。いい仕事してるじゃないか。
「よしっ! 撮れてる撮れてる! あー! もー! ついに来たよ! イングリットさん、ちゃんと見てる?」
「えっ、あたし? う、うん。なんか、やべえ」
どん引きしてるイングリットさんが一歩二歩と後退り。
大丈夫だよ、イングリットさん。UFOは怖くない。宇宙からやってきたトモダチなのさ。っていう雰囲気じゃなさそうだな。彼女のすごく嫌そうな顔を見る限り、畏怖の対象は未知なるUFOって存在ではなく、隣ではしゃぐ異常なテンションの俺だろう。
だからって、しょうがないじゃないか。UFOだもの。しかも超レアモノのアダムスキー型だし。イングリットさんのご機嫌の修復は後回しにして、今はUFO鑑賞に集中させてくれ。
アダムスキー型は丘の向こうからじわじわと高度を下げてこちらに近付いてきている。窓のような部分をよーく見ればその内装が観察できそうなくらい近くまで降りてきてる。
「ん?」
何か光った。
空飛ぶ円盤の着陸脚だと思われる半球体部分が鈍い光を放った。そして音もなく放電現象のようにスパークが飛び散り、四つある半球体からのスパークがUFO本体の下で一つにまとまった。
「あれ、もしかして」
攻撃、か? 半球体が発したスパークは真っ赤なレーザーとなった。かなり響く低音が鳴り、アダムスキー型UFOは俺とイングリットさんにレーザーを撃ち込んできやがった。
『ハイパースローモード移行。熱源探知。耐熱属性発動』
ヴァーチャライザーがウィスパーボイスで警告を鳴らした。
俺はUFOにスマホを向けたまま、時間がスローになって固まっているイングリットさんの肩を抱いて、撃ち込まれたレーザーから飛び退いた。ごめんな、こんな状況で肩を抱くなんて。
真っ赤なレーザーは俺とイングリットさんが立っていた辺りを震わせて、巨大過ぎる岩巨人の残骸をじゅうっと焼き、熱で岩を溶かしつつ爆散させた。
あの巨人の岩盤のような硬い表面を焼き溶かして吹き飛ばす威力のあるレーザー砲か。さすがアダムスキー型。おもしろいじゃないか。
「あぶなっ! イングリットさん、平気か?」
「な、何が起きた?」
「敵だよ。あいつも異世界から召喚された敵だ」
どうやらアダムスキー型UFOに乗ってるのは宇宙人ではなく、敵意ある異世界人のようだ。




