ぶつかる奴
「やべぇ。間に合うか……!?」
朝。全力疾走で駆けていくのは通学路。寝坊のため、絶賛ピンチである。
俺は無遅刻、無欠席を目指してるのだ。こんなところでちんたらしてはいられない。
さらにスピードをあげる。
そして曲がり角に差し掛かった時。俺の腹に衝撃が走った。
「!わりぃ。大丈夫か。」
すぐにその正体が人だと分かった。
相手も走っていたらしく、その勢いのまま俺の腹に顔を埋めている。
「怪我……とかはねぇよな…?」
かなりスピードを出していたので不安になり、相手の様子を窺う。
するとその人物もとい少女はぱっと顔を上げた。
「あはっ!登校初日から人とぶつかるなんてロマンチック!」
「そ、そうか…?」
「うんうん!そうだよ!海もきっとそう言う!」
「うみ??」
よく分からないが、とりあえず怪我はなさそうだ。怒っているようにも見えないので先を急ぐことにした。
「とりあえず怪我がねぇなら良かった。じゃあな!」
そう言って、この場を立ち去る。
が、不思議なことに相手もまた同じ方向へと走り出す。それに加え、俺と並んで走っている。
「お、お前も学校こっちなのか?」
「こっちも何も天気たち、学校一緒だよ?」
「え?てことはお前も摩訶高なのかよ!」
「あはっ!驚きすぎ!」
よくよく見れば、確かに彼女の履いているスカートはうちの学校のものだ。限界まで折られていて分からなかったのだから仕方がない。
そのうえ、指定のブレザーは羽織っておらず、カラフルなパーカーを着ているのだ。
ひと目で摩訶高の生徒だと判断するのは難しい。
「…………やらしー。天気のこと、あんまジロジロ見ないでよ?海に言うからね?」
「わ、わりぃ…!別に下心があったわけじゃねぇんだ!その……目立つなって思ってよ。」
「まーね!天気も海もこういうの好きだから!」
彼女の言葉を聞いて、ふとあることを思う。
そういえば俺は彼女の名を知らない。そしてこちらも名乗っていない。
「その……遅れちまったけど…俺、鹿組の柳留唯。よろしくな。」
「わー!奇遇!天気と海も鹿組なの!あっ、天気は御景天気!よろしくね!」
「同じクラスなのか!よろしくな!………ところで海ってのは?」
信号につかまったので、俺達は2人で立ち止まる。息はあがっていたが、話しながら走っていたので速度はそれほど無かった。
「海は海だよ!天気よりも1カ月早く生まれたの!」
「………つーことは、ねぇちゃんってことか。」
「うん!そういうこと!」
再び信号が変わる。隣の少女、天気は全く疲れた様子を見せていない。
「にしてもお前らはなんで今まで学校来なかったんだ?」
「えー?どうしてだと思う?」
「うーん、気分…とか。」
「あはっ!いいね!気分!じゃあそういうことにしとこ!」
「適当だなぁ。まっ、いいや。」
もしかすると話したくないことである可能性も否定できない。ここで無理に問いただすのはよそう。
今はとにかく遅刻してしまわぬよう、走ることにした。




