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エピローグ

 華やかな会場に足を踏み入れると、自然とシェリルも楽しみでそわそわと落ち着かなくなった。

 隣にいるクライヴについついあれこれと話しかける。最初は周囲を見ながら音楽がすごい、料理がすごいといった内容だったが、だんだんと思い出話のようなものになってくる。


「馬に乗せてくれるって約束したわ」

「……したな」

 結局乗せてくれたことはないけどね、と付け加えるとクライヴは苦笑する。今度な、と約束を取り付けたのでひとまずシェリルは納得することにした。

「あとね、今日は一緒にダンスがしたいの。わかってる? わたしたちこういうところで一度も踊ってないのよ」

「はいはい」

 仲違いする前はクライヴとダンスの練習をすることはあったが、社交の場でクライヴとダンスすることはなかった。


「……ちょっとワガママ言ってみたくなったんだけど、でもね、本当はクライヴが一緒にいてくれるだけで嬉しいのよ?」

 ちょっとだけ不安になって、シェリルはクライヴを見上げた。

 シェリルの小さなワガママくらいでクライヴは嫌いになったりしないと今は信じられるけど、言葉にすることは大事なのだとシェリルは学んだのだ。

「相手がおまえならどんなワガママだって叶えてやるよ。俺はおまえの騎士ナイトだろう?」

 ああほらやっぱり、とシェリルは幸せそうに微笑みながら、ただひとつ、クライヴの言葉に目を丸くする。

「騎士?」

 そうだよ、とクライヴは頷く。そう思っていたのか、と思うとなんだかくすぐったくて嬉しい。胸が勝手に飛び跳ねているみたいな気分になる。

 ちょうど、曲が変わった。ダンスに慣れていないシェリルでも踊れそうな曲だ。

 シェリルはクライヴの手を引いて、ホールの中央へと躍り出る。

「嬉しいけど、違うと思うの」

「違う?」

 クライヴは不思議そうに首を傾げた。

 違うわ、とシェリルは繰り返す。だって。


「クライヴはわたしの王子様でしょう!」


 そう言って笑うシェリルに、クライヴは驚いたあとで微笑み返す。

 ダンスに合わせて踊り始める。

 シェリルのドレスがふわりと広がって、まるで蕾が綻びそこに一輪の花が咲いたようだった。


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