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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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8/10

第8話 守れなかったかもしれない

翌日も、川に来た。


その次の日も。


放課後の時間は、すべてそこに消えた。


男は何も教えない。

立って、見ているだけだ。


「感じろ」


それしか言わない。


最初は、何も起きなかった。

次第に、わかるようになる。


――今、溜まってる。


胸の奥が、じわじわ熱くなる感覚。


「……っ」


集中すると、視界の端が揺れる。


「止めろ」


男が言う。


止める。


それだけで、息が切れる。



三日目。


川沿いに、子どもがいた。


小学生くらいの男の子が、石を投げて遊んでいる。


「……今日はやめた方が」


俺が言いかけた。


「関係ない」


男は即答した。


「現実は、選ばせてくれない」


胸の奥が、ざわつく。


集中しようとした、その瞬間。


「わー!」


子どもが、転んだ。


反射的に、体が動いた。


「大丈夫か!?」


駆け寄ろうとした瞬間、

胸の奥が、一気に熱を帯びた。


――溢れる。


「っ……!」


空気が歪む。


川の水が、うねる。


「止めろ!」


男の声。


でも、間に合わなかった。


ドン、と低い音。


子どもの足元の地面が崩れ、

バランスを崩して川に落ちた。


「うわっ!」


時間が、止まった。


「――っ!」


考えるより先に、手を伸ばす。


体が、前に出る。


水しぶき。


必死に腕を掴む。


「離すな!」


引き上げる。


岸に倒れ込んだ子どもは、泣きながら息をしていた。


「……生きてる」


それを確認した瞬間、膝が震えた。


「ご、ごめんなさい……!」


子どもは泣きながら走っていった。


残されたのは、俺と男だけだった。


「……俺が」


声が震える。


「俺が、やった」


男は、すぐには答えなかった。


川を見つめてから、言う。


「“かもしれない”で済んだ」


「でも――」


「済まなかった未来も、あった」


それが、何より重かった。


「これが、力だ」


男は言う。


「守るつもりで、

 簡単に壊せる」


俺は、何も言えなかった。


「怖くなったか」


「……はい」


正直に答えた。


男は、少しだけうなずいた。


「それでいい」


「怖さを忘れたら、終わりだ」


夕方の川は、何事もなかったように流れている。


でも、俺の中では、はっきり残った。


――一歩間違えれば、俺は誰かを殺していた。


それでも。


それでも、この力から目を逸らすわけにはいかなかった。


守りたいものが、確かにあるから。

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