↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/58

第7話 教えない人

翌日から、世界は何事もなかったように動いていた。


ニュースでは、

「エネルギー施設の小規模事故」

それだけが淡々と流れている。


負傷者なし。

原因は設備の老朽化。


――嘘だ。


でも、誰も疑っていない。

疑う理由が、ない。


学校に戻ると、

「大丈夫だった?」

「ニュース見たぞ」

そんな声が飛んできた。


「うん、かすり傷」


それで終わりだ。

それ以上、踏み込んでくるやつはいない。


俺も、それ以上話さなかった。


*


放課後。

帰り道の途中で、足が止まった。


あの歪みが、まだ残っている気がしたからだ。


目を凝らす。

何も見えない。


でも――

“わかる”。


空気が、少しだけ重い。


「……やっぱり」


背後から、低い声がした。


振り返る。


「……今日は窓じゃないんですね」


「堂々と来た」


男は電柱にもたれかかっていた。


「学校は?」


「行った」


「よし」


それだけ。


「で」


俺は我慢できずに聞いた。


「俺、何なんですか」


男は少し考えてから言った。


「失敗作だ」


即答だった。


「……は?」


「最初から完成してるやつはいない」


そう言って、男は歩き出す。


「ついて来い」


「どこに」


「教えない」


*


連れて行かれたのは、川沿いの人通りの少ない場所だった。


夕方。

風と水の音だけがある。


「ここでいい」


男は立ち止まる。


「何をするんですか」


「何もしない」


「……は?」


「感じろ」


それだけ言って、男は黙った。


風。

水。

遠くの車の音。


「……何も起きませんけど」


「起きてる」


男は川面を指した。


一瞬、水の流れがわずかに乱れる。


「見えたか」


「……今の?」


「今のだ」


男は言う。


「エネルギーは、出そうとして出るもんじゃない」

「溜まって、溢れて、勝手に出る」


「じゃあ、どうすれば――」


「溢れさせるな」


無茶を言う。


「そのために、まず自分を知れ」


男は俺を見る。


「君は、焦ってる」


「……当たり前だろ」


声が荒れる。


「家も、金も、父さんも――」


言葉が途切れた。


男は何も言わない。


「守りたいなら」


静かに言った。


「自分が壊れる感覚を覚えろ」


「壊れる?」


「限界を越える一歩手前だ」


「そこを、止められるようになれ」


「止められなきゃ?」


「暴走する」


昨日の光が脳裏をよぎる。


「……それで、父さんは」


男は目を逸らさなかった。


「そうだ」


拳を握る。


「ふざけんな……!」


その瞬間、胸の奥が熱くなった。


視界が揺れる。


「――っ!」


川の水が大きく跳ねた。


「止めろ」


男の声が鋭く響く。


「今すぐ!」


歯を食いしばる。


――壊れる。


その感覚が、はっきりわかった。


「……っ、はぁ……!」


必死に抑え込む。


水面は、ゆっくり元に戻った。


膝に手をついて、立っているのがやっとだった。


男は静かに言った。


「今のが、一歩目だ」


「明日も、同じことをする」

「限界がわかるまでだ」


夕焼けが、川を赤く染めていた。


体はボロボロだった。


でも――逃げない。


そう決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。