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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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36/38

第36話:事故の再定義

本作は毎週水曜・土曜の21時に、2話ずつ更新予定です。

会議室は、無音だった。


壁一面のモニターに、

同じ映像が繰り返し流れている。


割れたアスファルト。

歪んだ街灯。

逃げ惑う人々。


「事故映像です」


部下の声は、感情を削ぎ落としていた。


徹は、椅子に深く腰掛けたまま、

映像から目を離さない。


「――違うな」


低い声。


「これは“事故”じゃない」


部下が、言葉を止める。


「出力の方向が、意図的だ。

 防御反応にしては、拡散が甘い」


画面が切り替わる。


数値。

グラフ。

歪なピーク。


「異常値は?」


「検出されています。

 ただし、途中で途切れている」


「遮断か」


徹は、指を組む。


「訓練場と同じだな」


誰も、口を挟まない。



「対象は二人」


徹は、淡々と続ける。


「一人は、既知」


画面に映るのは、

相馬恒一。


「制御不能。

 すでに臨界を越えている」


次の画面。


結城透。


制服姿。

救急車の灯りに照らされた横顔。


「……もう一人は」


部下が、慎重に言葉を選ぶ。


「未登録です。

 年齢、能力、すべて不明」


徹は、画面を見つめる。


「若いな」


それだけ言った。


「偶然、ですか」


誰かが、恐る恐る聞く。


徹は、首を振る。


「偶然で、二件は起きない」


「では――」


「再定義する」


徹の声は、はっきりしていた。


「これは“事故”ではない」


モニターに、赤いラインが引かれる。


《分類変更:未制御能力事案》


「以後、

 同種の事象はすべて、

 このカテゴリで扱う」


部屋の空気が、

一段、重くなる。



徹は、椅子から立ち上がった。


「相馬は、どうする」


「保護名目で隔離中です」


「処理判断は?」


部下の声が、わずかに震える。


徹は、少しだけ考えた。


「……保留」


そして、続ける。


「今は、もう一人だ」


モニターに映る、透の顔。


「この年齢で、

 無意識とはいえ出力を出した」


徹は、静かに言った。


「放置すれば、

 相馬と同じになる」


「では――」


「追跡はしない」


部下が、驚いたように顔を上げる。


徹は、淡々と続けた。


「今は、観測だけだ。

 制御に入るか、暴走するか」


「もし――」


「もし、選択を誤れば」


徹は、画面から目を離した。


「次は、事故じゃ済まない」


部屋に、沈黙が落ちる。



徹は、最後に一言だけ告げた。


「“処理していい”の判断は、

 その時に下す」


その言葉は、

命令でも、脅しでもない。


ただの、事実確認だった。


モニターには、

変わらず透の映像が映っている。


何も知らない顔で、

立ち尽くす少年。


徹は、静かに呟いた。


「……選べ」


それが、

彼に与えられた、最後の猶予だった。

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