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囮が入っている間に

ルケントから数マイル先で、冒険者たちはいつもの野営場ではなく森の中に集まった。

もちろんそれは、大量の人員が配置されていることを気づかれないようにするためだ。

彼らは作戦の再度の確認の後、アイルの班とトグマの班だけがルケントに向かった。

トグマたちの隊は、リリィの代わりにセーラが入っていた。

彼女の魔法がゴブリンどもに対する特効になっているのだ。

もちろん彼女自身もこのルケント討伐隊に志願した。

彼ら12人は、もぬけのからと化したルケントに侵入した。

彼らは暗渠の入り口まで来ると、さもたった今何かを見つけたかのように、しばらくそこで時間を置き、そして暗渠の中に入って行った。


この様子を遠くから一匹のゴブリンが観察していた。

彼は旧市街の教会の丸い屋根の上から、アイルたちの行動を逐一観察していた。

そして暗渠の隠れ家が見つかった時、彼は急いで森の中へ反転し、仲間たちを呼び寄せた。


彼らは全員が暗渠の中に入り。

一旦水中に沈んだ後、反対側からまた這い出てきた。

暗渠の水は、ゴブリンどもの糞尿が浮かんでおり、不潔さの極みであった。

この水に入る前に、皆互いに入念に傷口などがないか確認し合った。

暗渠を抜けた反対側は、四面を石畳に囲まれた長く暗い廊下であった。

この廊下はもともと山からルケントにつないだ上水道であった。

この水道は、このまままっすぐ2マイル先まで進んでいるのだった。

全員が暗渠から出て水から上がると、トグマがカンテラに火をつけた。

そしてお互い頷きあった後、セイラは暗渠の出口の真上にて、魔法を唱えて空中に大きな水の塊を作り出した。


旧市街の側からゴブリンたちが現れた。

彼らはイード、青月、そして赤槍などの位の高いゴブリンであった。

彼らはアイルたちが暗渠に入る侵入するところを目撃した。

彼らは急いでその後をつけた。

そして、暗渠の水面が動かなくなってからしばらく後、赤槍を先頭にして暗渠の中に潜り込んだ。


赤錆は暗渠の暗がりを進み、水が天井の縁まで満ちているその場所を眺めた。

その天井の縁には汚い糞尿がこびりついていた。

赤錆はこの道を通るたびに全く不快な気分になり、このような場所を通る役割が与えられていることを常々不快に思っていた。

彼は息を止めて暗渠の水中に沈み込んだ。

そしてしばらく進んだ後に、暗渠の水面があるはずの道の縁を手で探り当て、体を押し上げた。

そして水面から顔を上げて呼吸をしようとした。

しかし、できなかった。

彼が口を開けると、その口に溜め込んでいた空気は泡となり出て行き、逆に水が侵入してきた。

赤槍を慌てて口を閉じた。

一体どういうことだ。そこで彼はようやく目を見開いた。その糞尿まみれの水中で目を開けると、しばらく痛みでまともに視界を得ることができなくなるのだ。

彼は水中から上がったはずなのに、いまだここは水中だ。

なぜだ。

彼は目を開けた。

暗渠の中は明るかった。何か松明の光で照らされているのだろうか。

しかし、その視界はぐにゃりと歪んでいた。

一体、どういうことだ。ここは、確かに水の中だ。これではまるで、水の塊が水中に浮かび、彼を包み込んでいるようではないか

いやそうなのか。それが俺の今置かれている状況なのか。

これは魔法か?。

そのぐにゃりと歪んだ視界の先で、何人もの冒険者がこちらを向いて立っているのが見えた。

もう呼吸が間に合わない。

一旦戻るか。

彼は振り返り足元を見た。

しかし、その足元からイードの巨体が進み位で、暗渠の幅一杯に体を押し上げてくるのが見えた。

彼は慌ててイードの頭を踏んだ。

しかし、彼は何を勘違いしたのか、赤槍の足を振り払った。

これはまずい。

赤槍は何度もイードの頭を踏みつけたが、彼はそのたびに手を払い、あろうことか赤やりを押しのけて水中から出ようとした。

このままでは戻れないと判断し、一か八か冒険者たちが待つ水面へ向かった。

手に持った槍を掲げ、その穂先に魔力を込め、そしてあと一歩で水から出ようというところあった。

しかし、それは果たせなかった。

縦に貼られた水面から大剣が突き込まれた。赤槍は、その槍を手放した。

そして、腹から血を吹き出しながら、糞尿まみれの水の中で赤槍は溺れていった。


アイルたちは赤槍の槍を拾い上げ、水面から引きずりだし、廊下の奥に放り投げた。

もう少しでイードも誘い込めたのだが、彼は眼前の光景を見ると慌てて頭を引っ込め暗渠の中を舞い戻っていった。


しかし暗渠の入り口はすでに100人もの冒険者たちによって囲われているはずだ。

やつはあのまま嬲り殺されるだろう。


その時アイルたちは通路の奥から何者かの気配を感じた。

「さて。誰が出てくるかな」トグマが言った。


彼らは駆け寄ってくる足音を割った。オーケンとセレスとが前面に立ち、彼らは待った。

やがて奥からやってくる敵の姿が露になった。

赤錆だ。


(とった)アイルはそう思った。

「セーラ、赤錆だ!」

アイルは叫んだ。

やつは腰を思いきり反らし頬を膨らませると、その口から灼熱の火炎放射を吹き出した。

しかし、セレスとオーケンはひるむことなく赤錆に突っ込んだ。

彼らの真後ろからセーラの魔法である水のかたまりが飛んできた。

それはセレスとオーケンと赤錆とを巻き込んだ。

後ろから水塊にぶつけられ、2人の背中に水しぶきが待った。

そしてその塊は赤錆の炎を包み込み、弱め、そしてかき消した。

赤錆はさらに腰を落としもう一度炎を吹き込んだ。

一瞬、火炎から吹き上がる風が2人の水のバリアを弾き飛ばした。彼らの体は炎に包まれた。

しかし2人は怯まない。

もともともとシエラの魔法だけでなく彼らの全身は水浸しに濡れていたのだ。

そして甲冑の下には分厚い麺の下着を三重にも来ていた。

彼らは2人同時に赤錆に突っ込んだ。

そしてセレスは上段からオーケンは下段から突きを放った。

2人の剣は赤錆を引き裂いた。彼は口の端から炎を吹き上げつつ、倒れ、絶命した。

オーケンは何度もその死体に剣を叩きつけた。セーラは何も言わなかった。

赤錆は細切れにされ、種族さえわからない肉塊となり果てた。


彼ら12人はそのまま通路を進んで行った。

やがて突き当たりの壁の途中に扉があるのを発見した。

彼らは中を見た。その部屋はゴブリンの苗床だった。

乳房の膨らんだメスと、そしてその子供のゴブリン達が合わせて50匹ほど集まって食事をしていた。

彼らは扉から入ってきたトグマのことを見た。トグマはその部屋大仰にぐるりと見渡した後、言った。

「……皆殺しだ」


彼らは苗床のゴブリンたちを皆殺しにした。

母親どもは爪を立て抵抗した。

しかし、容赦なく義勇兵たちのの刃は走り、母親が皆殺しにされ、そして子供は一人一人念入りに首を切り落とされ殺された。

やがてその床は一か所の塗り残しもないほど血の赤で染まった。

彼らは全員の首をはねた後、念入りに部屋の隅々まで調べ、生き残りが1匹もいないか確認した。

そうして彼らはその場を撤退した。


暗渠から再び出ると、そのすぐ真横にはイードの首なし死体があった。

彼は暗渠から這い出てきたところを抹殺されたのだろう。

彼らが地面に上がると、橋のところに冒険者たちが集まっていた。

彼らは皆と並んでこの集まりの中心を見た。

その中心には、ひじから下の両腕を失った青月が、膝をついて倒れていた。

イアンは橋の根元で便所座りをしていた。彼らはアイル達をみて言った。

「来たか。お前たちの中で、こいつに復讐したい者は?」

「俺だ」トグマは声を上げて言った。

アイルも手を上げた。「俺も復讐したい」

「分かった。まあ時間はある。全員気の済むまでゆっくりと殺せよ」

こうして青月は100人の冒険者たちに囲まれ、殴られ、痛めつけられそしてゆっくりと死んでいった。


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