37、弱い幼女ほどよく熱を出す
とゆわけで、現在の私はひとりです!
正確にはモモンガさんとセバスさんも居るけど、ランチまでは自由に行動できるという意味での「ひとり」です!
「なにしようかなー」
蜂の巣のようなツリーハウス内は、外から見るよりも広くて探検した時は楽しかったけど、さすがにもう飽きてしまった。
てゆか、中身が大人なのにツリーハウス探検ではしゃぐとか、どうかと思うだろうけど、なんだかすごく楽しかったの。
童心に帰るってやつかな? 今の私は幼女だから帰るっていうのもおかしいか……。
「そうだ、ベルとうしゃまのところにいこう」
「旦那様のところに、ですか?」
「きゅー?(あの氷の男は夕食には帰ってくるのだろう?)」
それはそうだけど、そうじゃない。
お仕事をしているお父様にランチの差し入れをして、あわよくば褒められたり甘やかされたりしたいという野望があるのだ。
ふふふ名付けて『ユリアーナ愛され計画』。
お父様やお兄様の、常にあらゆる角度を狙って?いくのですよふふふ。
「ベルとうしゃまに、さしいれしたいのでしゅ」
「差し入れ、でございますか。軽食などでよろしければ、パンに具材を挟んだものなどいかがでしょう?」
「それにしましゅ」
「かしこまりました。ではここの調理場が使えるかどうか確認して参ります。何かあればドアの前にいる護衛にお伝えください」
「あい!」
サンドイッチなら幼女でも簡単だし、手作り感が出るよね!
セバスさんが部屋から出て行ったところで、モモンガしゃんが私に問いかける。
「きゅきゅー?(なぜ、そこまで氷に好かれようとする?)」
「まりょくぼうそうしたとき、ベルとうしゃまにきらわれる、みらいがみえたの」
「きゅ……(世界の理か……)」
納得したのかコクリと頷くモモンガさん。そのモフモフした毛並みを堪能していると、セバスさんが調理場を使う許可をもらってきてくれた。
さて移動だと立ち上がると、肩によじ登ってきたモモンガさんが耳許で囁く。
「きゅきゅ(もうこれ以上好かれることはないと思うが)」
「えー? ならもっとがんばらないと」
「きゅ……(そういう意味ではないのだが……)」
よし! がんばって作るぞサンドイッチ!
そう思った時期が、私にもありました。
「お嬢様、元気出せよ」
「うー」
「ユリアーナお嬢様が初めてのお料理されたのですから、きっと旦那様も喜ばれますよ」
「うー」
「きゅ!(なかなか趣のある形よの!)」
「うー!!!!」
なぜだ。なぜパンに具をはさむだけという簡単なお仕事なのに、こんなぐっちゃんぐっちゃんになってしまうのだ。
外はパリッと中はもちもちのパンには、幼女の指の痕がしっかりと残っている。
彩豊かな具材はパンにギュッと押し込まれ、トマトは潰れているしソースは外に漏れている。
使っている食材は全部美味しそうなのに、なぜか合わせたものはどちゃくそ不味そうだ。
お父様がいるのは、森の居住区から少し離れた広場だ。
そこは獣人さんたちが森のすみずみまで探索をするための、作戦をたてる場所らしい。
もう少しで到着というところで、私の足は止まってしまう。
「さしいれ、やめる」
「それはなりません」
「ふぇ?」
「すでに旦那様にお知らせして、予定を空けていただいておりますので」
えー!? 差し入れはサプライズにしようと思っていたのにー!!
……とはいえ、お父様のお仕事や私の護衛を鑑みると、アポなしでサプライズなんて無理な話なのだろう。
がっくりと肩を落とす私に、セバスさんがいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「予定は空けていただきましたが、お嬢様が何をされるのか、旦那様はご存知ないのですよ」
「ありがとうセバシュ!」
一気にテンション上がった私がセバスさんにお礼を言っていると、呆れ顔のオルフェウス君が盛大にため息を吐いてみせた。
「その何をするかってやつはいいのか? 渡すのか?」
「あうー……」
ダメだ。こんな異形な食べ物を、愛するお父様に食べさせるわけにはいかない。
「ふういん、しないと」
「どこにだよ」
「おししょなら、いいところしってましゅ」
「お嬢様、諦めてください」
「やー」
「……ユリアーナ、私のために食事を作ってくれたとは本当か?」
「!?」
気づけば目の前にお父様が立っている。
手に持っている異形の食べ物?を見たお父様は、ものすごく眉間にシワを寄せた。
「……これを、ユリアーナが?」
「ベ、ベルとうしゃま、これはしっぱいしちゃって……」
「侯爵サマ、お嬢様も一生懸命やったから……」
「……」
無言で私の手から異形を取り上げたお父様は、そのまま口に運ぶ。
うわああああああ食べちゃったああああああ(心の悲鳴)
「か、かたちが、わるくて」
「ユリアーナの愛らしい指のあとがついているな」
「ぐとか、はみでて」
「私を思って、たくさん詰めてくれたのだな」
「う、うう……」
不器用な自分が悔しくて、目にブワッと涙が浮かんでボロボロと床に落ちていく。
そんな私を優しく抱き上げてくれたお父様は、濡れている頬に何度もキスをしてくれた。
「また、作ってほしい」
「……あいー、ごめしゃいー」
「謝ることはない。ユリアーナの初めてをもらえたのだからな」
そう言って壮絶な色香を放ちながら口元を緩ませたお父様。ギルティです。
あと鼻血が出そうなので、ほっぺにちゅーを止めてもらってもいいですか? あ、まだダメですか。そうですか。
「おい侯爵サマ、その言い方」
「この調子でいけば、旦那様のお仕事が早く終わりそうですね」
お料理?は失敗したけど、あと一週間かかると言われた森の作業が、二日で終わりましたとさ。
私の体温は上がりっぱなしだったから、お屋敷に戻ったのは結局一週間後になっちゃったけどね! お父様のお色気魔王め!
おぼえてろよー!(幼女の遠吠え)
お読みいただき、ありがとうございます。
いただいた感想に少しだけ返信させていただきました。
他も手をつけたいのですが、時間がなく申し訳ないです。
ブクマ、☆をつけていただき感謝感謝ですー!!




