38、お茶会に挑む幼女
トライアンドエラーを重ねていくどころか、お父様がエラーを起こしている感が否めない今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
気づけば私ことユリアーナは、ひとつ年を重ねておりました。
「おたんじょうびかい?」
「さようでございます。旦那様がお嬢様に同じ年頃のオトモ達を作れるよう、茶会を開いたらどうかとおっしゃっております」
「ちゃかい……」
考え込む私の膝に、かいがいしくブランケットをかけてくれるマーサ。
お屋敷に帰る予定が大幅にずれたのは、私が熱を出したのが原因だと聞いたマーサは、以来こまめにお世話をしてくれるのだ。
さらに、あたたかいミルクティーを用意してくれたのはマーサの娘、リーリアだ。
「お嬢様、蜂蜜は入れますか?」
「あい!」
由梨の時はそんなに好きじゃなかった甘いものだけど、ユリアーナは幼女舌のせいか好みが変わってしまったみたい。
まだ平均よりも痩せている感じだから、甘いものでもなんでも食べてグングン成長しないとって思う。
お兄様なんて、ほぼ大人の体になっているのに……なぜこの体は成長しないのか。
「魔力暴走の後遺症かもなぁ」
「こういしょう?」
「普通は少しずつ育つはずの魔力が、お前みたいな小さな体に急に入ってきたんだ。一時的なのかは分からないが、強い魔力で成長がとまっている可能性はあるだろうなぁ」
私と同じく甘いミルクティーを美味しそうにすすっているお師匠様は、つらつらと考えを語ってくれる。「甘味には脳を動かす力がある」とはお師匠様の言だ。
前世の知識がある私からすれば間違ってはいないけれど、話している内容が内容なので、つい不機嫌な顔になってしまう。
「いやなの。もっとおおきくなりたいの」
「そうは言ってもなぁ……嬢ちゃんがちっこいまんまでも、ランベルトなら喜びそうだし問題ないだろ?」
「ありありでしゅ!」
幼女だからといって許される年齢にはタイムリミットがある。
そこを越えてもなお、愛されるとは到底思えない。
「はやくベルとうしゃまに、みとめてもらわないと!」
「認めてもらう? 何をだ?」
「ぜんぶ、でしゅ!」
私の作戦は、こうだ。
つらかった幼女時代を過ごしたユリアーナは、美しく成長していく。
ペンドラゴンという、国でも五本の指に入る魔法使いを師匠として、多くの功績をあげていくユリアーナ。
彼女は美貌だけではなく、魔法の才まであるということは有名であり、貴族社会でも多くの人に認知されていた。
「そしたら、いっぱい、もうしこみされるでしょ?」
「申し込み?」
「けっこんの、もうしこみ」
「はぁ?」
お父様は、フェルザー家のために生きているといっても過言ではない。だって、そういう設定だったし。
ならば、お家のために良き縁をゲットしないとね!
「できれば、ベルとうしゃまみたいなひとがよいです!」
「無理だろ(色々な意味で)」
呆れ顔で言うお師匠様を、私は鼻で笑う。
「ユリアーナは、せかいいちのびじんだと、ベルとうしゃまがおっしゃってまし!」
「そうか! よかったな世界一!」
「あい!」
「だがしかし! それはただの親バカ発言だ!」
「えー!」
がくりと膝をつく私。
ううん、わかっていたの。世界一だなんて言い過ぎだって。
せいぜい国一番くらいじゃないかって、わかっていたの。
「まーだ分かってないだろ。嬢ちゃん?」
「わ、わかってましゅよ!」
まだまだ幼女だもの。伸びしろ、伸びしろがあるはず!
それを加味して将来良き縁を結べるよう、今からしっかりとフェルザー家の娘として「ご令嬢」していかないとって思うわけですよ!
「おちゃかい、よいきかいでしゅね」
「そりゃいいけど、嬢ちゃんは令嬢教育とか受けたことあるっけ?」
「う?」
「う、じゃないだろ。茶会といえば、マナーとかもあるんだろう?」
そう言ってお師匠様は、私の後ろにいるマーサとリーリアに視線を向ける。
「そうなんですけど……」
「旦那様は必要ないと……」
「はぁ? どういうことだ?」
いや、私に聞かれても……。
確かに侯爵家のご令嬢(笑)のユリアーナに、お作法のレッスンがないのはおかしい。勉強ならお師匠様が見てくれているけど、おもに魔法理論や歴史が中心だ。
そう考えると、世間一般でいう「ご令嬢」とは程遠い教育を受けているような気がする。
「今回はお嬢様の誕生祝いですので、作法はそこまで気にせずとも……」
「だめ、ちゃんとしたいの。おねがい」
「困りましたね、今から外部から人を入れることはできませんし……。基本だけでもよろしければ、マーサがお教えいたしましょうか?」
「ありあと、マーサ!」
そういえば、マーサは元奥様の侍女だった。
アレでも貴族女性として生きていたんだし、基本の作法くらいはマスターしてただろう。
「ランベルトには俺からも言っておく。何にせよ、貴族としての教育は必要だろうってな」
「ありあと、おししょ!」
降って湧いたようなイベント?だけど、お父様にユリアーナの良いところを見せるぞ!
がんばろーっ! おーっ!!
あれ? モモンガさん、どこいった?
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