第三話 お風呂の調子が悪いから、みんなでいっしょに銭湯へ行こう
六月二日、水曜日。惇平は鵙松寮から徒歩で鈴日台高校に登校した。半袖ポロシャツ&薄手の灰色チェック柄ズボンな完全夏服で。
ちなみに彼のクラスは一年四組だ。四時限目古文の授業にて返却された、前回授業時実施の小テストは10点満点中3点という振る舞わない結果に。苦手科目なこともあってか、先日の中間テストでも古文漢文は平均点を少し上回る程度だったのだ。
「六点以下やった子は、今日の放課後再試験や」
竹ケ原先生から仏頂面で伝えられ、惇平はしぶしぶ参加。
古文はやっぱむずいよな。文法つまらな過ぎ。
ギリギリ合格点の七点取れ、後日再々試験は回避。午後五時過ぎに鵙松寮に帰宅した。
「惇平お兄さん、おかえりなさい」
「おかえり惇平くん、残念なお知らせなんだけど、今日はお風呂使えないの」
愛紗実とファンニは先に帰っていて、ロビーのソファーに腰掛けくつろいでいた。
「この寮が出来た時からずっと使ってた給湯器が、とうとう寿命が来たみたいでね。明日業者さんに新しいのに交換しに来てもらうから、今日は惇平ちゃんも銭湯へ行ったらどうだい?」
光子さんはこう勧めてくる。
「俺、家に帰って入ろうかな」
「惇平くん、そんなこと言わずにいっしょに銭湯行こう! 普段行く機会ないでしょ?」
愛紗実に腕を掴まれ誘われ、
「確かにそうだな。せっかくの機会だし、行ってみるか」
惇平はあまり気が進まなかったが、銭湯へ行くことに決めた。
陽佳は莉桜菜に、ファンニも柚希に携帯で連絡して誘い、計六人で行くことに。
光子さんは近所の友人宅のお風呂を借りるとのことだった。
※
夜七時半ちょっと過ぎ。
みんなは鵙松寮からは徒歩約七分、五百メートルほど先にある昔ながらの銭湯、燕湯へ。
「ここは俺、初めて来たよ」
受付にて惇平が代表して、光子さんからいただいた六人分の入湯料を支払った。
当然のように惇平は男湯、他のみんなは女湯の暖簾を潜る。
女湯脱衣室にて愛紗実、柚希、ファンニがすっぽんぽんになった頃、
「ハルちゃんとリオナちゃんは、素っ裸にならへんの?」
「だって、公共の浴場だと周り知らない人ばかりだから恥ずかしいもん」
「アタシも同じく。おウチではすっぽんぽんだけど」
陽佳と莉桜菜は肩から膝上にかけてバスタオルをしっかり巻いていた。
「二人ともそんなに恥ずかしがらんでも。余計目立って恥ずかしいと思うで。素っ裸の方が絶対銭湯に相応しいで」
柚希はこの二人の前に仁王立ちして助言する。
「柚希お姉ちゃんは羞恥心が低いよね」
「うん」
それでも陽佳と莉桜菜はバスタオルを巻いたまま浴室へ入っていった。
「私も中学生の頃、大浴場で素っ裸になるのは恥ずかしいなって思ってた時期があるから陽佳ちゃんと莉桜菜ちゃんの気持ちはよく分かるよ」
「ファンちゃんはまだぺちゃパイやね」
「柚希、わたしはこれで満足してますよ」
他の三名はすっぽんぽんのまま浴室へ。
「莉桜菜、見て見て。スーパーサ○ヤ人」
「もう少し逆立てるとよりいいかも」
陽佳と莉桜菜は洗い場シャワー手前の風呂イスに隣り合って腰掛け、楽しそうにシャンプーで髪の毛をゴシゴシ擦る。
「ハルちゃんよう似合っとうわ~」
陽佳の隣に柚希、
「お茶の香りのシャンプーもあるぅ。これ使おうっと♪」
柚希の隣に愛紗実、
「わたしもこれにしよっと」
ファンニは莉桜菜の隣に腰掛けた。
「あの、ファンニお姉さんは、今でも京大志望ですか?」
「うん、京都好きだもん。鈴高の惇平お兄さんが来て、ますます勉強頑張らなきゃって感じたわ」
「さすがです」
「いやそれほどでも」
「ファンニちゃんが勉強張り切るのはいいけど、私にまで求めて来ないで欲しいよ」
「ワタシ、この間までファンちゃんと席近かってんけど、授業中に居眠りしたら速攻叩き起こされたで」
「ファンニお姉ちゃん、友達思いだね」
「当たり前のことだと思うけど」
「ワタシ、ファンちゃんの席のすぐ近くにはもうなりたくないわ~。ゆっくり居眠り出来へんもん」
「柚希、今度の席替えでもしなれたら、あの時以上に厳しく監視するからね」
「ファンちゃん顔めっちゃ怖いわ~」
「私も授業中、たまにノートにお絵描きして遊ぶことあるし、居眠りしちゃうことはよくあるよ」
そんな会話を弾ませてから数分のち、愛紗実、ファンニ、柚希は体を洗い流し終え風呂イスから立った。
「あの、アタシ、体洗うのもうしばらくかかるから、みんな先に入ってていいよ」
「あたしももう少しかかるよ」
ふくらみかけの乳房と、うっすら生えかけの恥部を極力さらけ出さないように体をハンドタオルで擦ろうとしている莉桜菜と陽佳のしぐさを見て、
「ハルちゃん、リオナちゃん、恐々と洗わんでも誰も見てへんって」
柚希はにっこり微笑みながらこう伝えて湯船の方へ。
「陽佳ちゃん、莉桜菜ちゃん、お先に」
「三人でかたまって浸かっておきますので」
愛紗実とファンニも後に続く。
「ここのお湯、私にはちょっと熱く感じるよ」
「わたしもー。三七℃くらいがちょうどいいよね」
「ワタシはこのくらいのが好きや~。そういや惇平兄さんは、銭湯ではあそこ手ぬぐいで隠してるんかな?」
「私はきっと隠してると思うなぁ」
「柚希、愛紗実さん、そういうのを想像するのは失礼かも」
「ところで一幡先輩、リアル彼氏が出来てよかったね」
「私、惇平くんのこと、大好きだけど、彼氏って言われるのはなんか照れくさいな。私にとって惇平くんは、家族同然のお友達だよ」
「そんなこと言って。キスももう済ませとんやから立派な恋人同士やん」
「あっ、あれはね、寮の中だったから出来たの。外で、人前では恥ずかしくて出来ないよ」
「一幡先輩もけっこう照れ屋さんやもんね。顔赤くなっとうよ」
「これは、火照って来ただけだから」
「愛紗実さんと惇平お兄さんは、お似合いのカップルだと思いますよ」
足を伸ばしてゆったりくつろぎ、楽しくおしゃべりし合っている中、莉桜菜と陽佳は周囲を気にしながら体をゆっくり擦っていく。
そんな時、
「お嬢ちゃん達、いいお肌してるわね。中学生かしら?」
バスタオルをしっかり巻いた、四〇代くらいのお方が隣のイスに腰掛けて来た。
「あっ、はい」
「アタシも、同じです」
陽佳も莉桜菜もけっこう緊張してしまう。
「そっかぁ。さすが若いだけはあるわ。この銭湯にはよく来るの?」
「いえ、数ヶ月振りです」
「アタシは、二年振りくらいです」
「そっか。おばちゃんはね、週に二、三回は来るわよ」
そのお方はにっこり微笑みかけてくる。
「――っ」
莉桜菜は表情をやや強張らせ、
「……」
陽佳は怪訝な表情を浮かべ、共に大急ぎでシャワーで石鹸を洗い流して逃げ、湯船に浸かってくつろいでいる愛紗実達のもとへ。
「あの、あそこにいるお方は、女性ではないですよね? 声も妙に男っぽかったし」
「あたし、絶対男の人な気がするよ」
タオルは床に置いてすっぽんぽんになって湯船に浸かると、びくびくしながらあのお方を指差し問いかけた。
「そうやね、明らかに男性やね」
「男の人だね。顔つきが惇平くんよりも男っぽいよ」
「肩幅と筋肉のつきからして、百パーセント男ですね。いくら小柄で細身で髭剃っててもわたしの目は誤魔化せませんよ」
柚希と愛紗実とファンニは姿を見て即、こう判断した。
ほどなく、その男と疑わしきお方は体を洗い流し終えたのか、みんなのいる方へ近寄って来た。
「みんなかわいいお嬢さん達ねー」
さらにそう褒めて湯船に浸かって来た。
「あの人、男ちゃうの?」
「なんかそうっぽいよね」
他のおばちゃんなお客さんがヒソヒソ声で呟く。
「ねえ、おばちゃんは女の人なの?」
陽佳にお顔をじーっと見つめられ質問されると、
「……そうよ。よく男と間違えられるの。子どもの頃からね」
男と疑わしきお方はホホホッと笑った。一瞬ぎくりと反応したような気もしたが。
ますます怪しいです。
ファンニは心の中でこう思った。
「おばちゃん、のぼせちゃいそうだからもう上がるわ。あっ、あら」
男と疑わしきお方が立ち上がって湯船から上がった途端、巻いていたバスタオルがハラリと落ちた。
「きゃっ!」
そのお方は軽く悲鳴を上げ、とっさに股間を手で覆い隠す。
「きゃぁぁぁっ!」
「わっ! 男の人だ」
アレがほんの一瞬だがばっちり見えてしまい、莉桜菜は大きな悲鳴を上げ反射的に目を覆い隠し、愛紗実は驚いて思わず声を漏らした。
他の三名は見えなかったものの、
「思った通りです」
ファンニはちょっぴり頬が赤らんだ。
「やっぱり男の人だったんだね。オカマだぁっ!」
陽佳は楽しそうににこにこ笑う。
「ワタシの予感的中やっ! 皆さーん、ここの男の人がいますよーっ! こいつやっ!」
柚希は脱衣室にいる人にも聞こえるよう、大声で叫んだ。嬉しそうな気分で。
「失礼ね。わたくし女よ。ほら、髪の毛長いでしょ?」
男とばれてしまった女装おじさんはとっさに否定する。
「えっ!」
「男?」
「やっぱそうなんかっ!」
他のおばちゃんなお客さん達にざわめかれ、
「やばい」
女装したおじさんは足早に浴室から逃げていこうとする。
「逃がさへんでーっ。そりゃあっ!」
柚希は固形石鹸をそのおじさんの足元目掛けてスライドさせた。
「ぎゃっ!」
見事命中。
おじさん、つるっと滑ってビターンッと勢いよく尻餅をついた。
「しまった!」
その拍子にかつらも落ちて、禿げかけのすだれ頭が露に。
そんなヒミツもばれてしまった女装おじさん、にこっと笑ってかつらを拾ってすぐに立ち上がってまた走り出す。
「ワタシがあのオカマなおっちゃん捕まえたるわ。待てーっ!」
柚希だけでなく、
「逃がしてもうたわ」
「逃げ足早いわーあの人」
他のおばちゃんなお客さん達も取り押さえようとしたが失敗。
浴室から脱衣室の方へ逃げられてしまった。
なんか女湯が騒がしいな。
すでに上がってロビー横の休憩所で待っていた惇平は不思議がる。
ほどなくその女装おじさんが惇平の目の前に。
バスローブを一枚、帯で巻かずに羽織っただけの姿だった。
「うわっ、あいつ明らかに男だろ。これで女湯入るなんて無謀過ぎる」
惇平は表情が引き攣る。女装おじさんはかつらをまた付けたのだ。
「ちょっと、退きなさいよ」
女装おじさんは惇平に勢いよく衝突。
「うわっ!」
惇平は弾き飛ばされたが、柔道の授業で今習っている受け身を取って怪我回避。
「邪魔、邪魔」
女装おじさんもバランスを崩してしりもちをつくも、すぐに立ち上がった。早く館内から出ようと必死だ。けれども腰を痛めて速く走れない様子。
「惇平兄さん、ナイス足止めっ。ワタシがとどめを刺すよ。とりゃあっ!」
大急ぎでパジャマを着込んで脱衣室から出て来た柚希は、そのおじさんの腕を掴むや、一本背負いを食らわした。
「んぎゃっ」
女装おじさんは床にビターンと叩き付けられる。これにて御用。
「おっちゃん、アレぶら下がってるから男湯の方に入らなあかんで」
柚希はこいつが逃げられないよう、袈裟固のような形でしっかり押さえつけ身動きを封じた。
「どっ、どうも。ありがとうございました」
女装おじさんはマゾなのか? 腰を強打したもののどこか嬉しそうな表情で礼を言った。
「おううう!」
「お嬢ちゃんやるねぇ」
「お見事!」
他のお客さんや従業員さんから拍手喝采。
「皆さん、ご無事ですか?」
「あっ、もう捕まえられてる」
それからすぐに、銭湯すぐ目の前の交番から駆け付けた兵庫県警の二人のお巡りさんに引き渡され手錠を掛けられ逮捕された。
「あの、その、わたくしはですね、アンチエイジングの観点から、女性の体の細胞のですね、研究を。あのSTAP細胞騒動で話題になった、ポーアイの理研で」
「いいから来いっ!」
「話は署でじっくり聞いてあげるから」
二人のお巡りさんが呆れた様子で女装おじさんを連行して銭湯から出て行った後、
「ワタシ、下着着けずに出て来てん」
「べつにそれは言わなくても」
柚希はにっこり笑顔で惇平に耳打ちし、再び脱衣室へ戻っていく。
それから五分ほどして柚希他のみんなも風呂から上がって来て休憩所へ。
女の子特有の匂い、人数多い分より強く香ってくるな。
惇平はいつも以上にムラムラしてしまった。
「惇平お兄ちゃん、面白いおかまのおじちゃんだったでしょ?」
陽佳は楽しそうに微笑む。
「怖かった」
莉桜菜はショックだったようで俯き加減。今にも泣き出しそうな表情だった。
「気持ちはよく分かる。俺も真夜中にあんな風貌のやつ見たら卒倒しそうだ。黒川さんは怖くなかったみたいだね」
惇平はちょっぴり不思議がる。
「陽佳さんは面白い人には人見知りしないから。テレビや新聞じゃ報道されない小さな事件でしょうけど、無事捕まえられてよかったですね」
「うん、惇平くんも大活躍したみたいだね」
ファンニと愛紗実はホッと一安心だ。
「いやぁ、相手が勝手にぶつかって来ただけだから大活躍とは言えないと思う」
「惇平兄さん、謙遜せんでも。ワタシが捕まえることが出来たんは惇平兄さんのおかげやで。さてと、やっぱ銭湯上がりといえばカフェオレやね」
お巡りさんにも褒められて、清々しい気分になっている柚希は冷蔵ショーケースを開けガラス瓶のカフェオレを取り出す。
「私もそれにするよ」
「じゃ、わたしも」
「あたしはりんごジュースにするぅ」
「アタシは、ミルクティーにしておこう」
「俺は烏龍茶で。俺がみんなの分まとめて払ってくるよ」
他のみんなもお目当ての飲料水をショーケースから取り出した。
このあとみんなは長椅子に腰掛け、風呂上りの一杯を楽しんで銭湯をあとにした。
*
「惇平ちゃん、覗き魔逮捕に大貢献したんだってね。さすがだよ」
「いや、俺は特に何も。犯人の自滅ですから」
九時頃に鵙松寮に帰ったあと、いきなり光子さんから爽やか笑顔で褒められ、惇平は謙遜するも嬉し照れくさがったのだった。
それから一時間ほどが経った頃、
「きゃっ、きゃあああああっ!」
鵙松寮に、愛紗実の甲高い悲鳴がこだました。
「どうしたの? 愛紗実お姉ちゃん」
陽佳が真っ先に音源の201号室に辿り着き問いかけると、
「あそこ、ゴキブリィィィッ!」
愛紗実はとっさに陽佳に抱きついた。
「愛紗実お姉ちゃん、落ち着いて。ちっちゃいでしょ」
陽佳はにっこり笑う。
「ちっちゃくないよぅ。すっごく大きいよぅ」
愛紗実は慌てふためいていた。
「そんなことだろうと思ったよ。っていうか勉強せずにマンガ読んでたのね」
次に到着したファンニには呆れられた。
「なんで私の部屋にばっかり出てくるのぉー。他のお部屋では台所でも一度も見たことないのに」
悲しげな表情で嘆く愛紗実に、
「それは愛紗実さんがこのお部屋でしょっちゅうお菓子食べてるからよ。さっきも食べてたでしょ」
ファンニは床に転がった抹茶ポッキーの菓子箱をちらっと見て、にっこり笑顔できっぱり言ってやった。
「一幡さん、ゴキブリ苦手みたいだね。まあ、俺もけっこう苦手だけど」
それからすぐにやって来た惇平は同情してあげた。
「いつもはゴキブリ退治、おらがやってるんだけど、今回は惇平ちゃんがやってくれんかね? その方が愛紗実ちゃんも喜ぶだろうし」
続いてやって来た光子さんはにやけ顔そう言って、殺虫スプレーを手渡してくる。
「俺がやるんですか?」
惇平はやや困惑。彼もゴキブリはちょっと苦手なのだ。
「惇平くぅん、早くやっつけてぇぇぇ~」
愛紗実は蒼ざめた顔でお願いする。
「あそこか」
惇平は慎重に狙いを定め、凍らせるタイプの殺虫剤をブシャーッと噴射した。
「逃げられたか。すばやっ!」
しかし外してしまった。
「きゃぁっ! 近寄って来た」
愛紗実は飛び上がってイスの上へ避難。ゴキブリは床をちょこまか這いずり回る。
「動きがますます速くなったような……今度こそ」
惇平は恐る恐るもう一吹き。
今度は見事捉えることが出来た。
「死んだようだな」
惇平は凍り付いたがまだ辛うじて生きてはいるだろうゴキブリを、何重にも束ねたティッシュペーパーで掴んでビニール袋に詰め、固く縛って退治完了。
「惇平くんありがとう、さすが男の子だね」
「……どういたしまして。一幡さん、この部屋でお菓子を食べるのをやめるとゴキブリは出なくなると思うよ」
愛紗実にぎゅっと強く抱きつかれ、惇平はちょっぴり照れくさがる。
「惇平お兄さん、お見事でした」
「惇平お兄ちゃん、格好良かったよ」
「惇平ちゃん、なかなかの腕前だったね」
莉桜菜と柚希と光子さんからも称賛され、
「褒められるほどのことでもないと思うけど」
惇平はますます照れくさがる。
「愛紗実さんがゴキブリを克服出来るように、この死んだゴキブリ、愛紗実さんのお部屋のごみ箱に捨てておこうかしら」
ファンニはビニール袋を手に持ち、にやりと笑う。
「それは絶対ダメェーッ! 甦って袋から出て来そうだもん」
愛紗実は表情を引き攣らせ大声で拒否した。
結局、そのビニール袋は惇平の手によってロビーに置かれたごみ箱に捨てられた。
こんなちょっとした騒動がありながらも、鵙松寮の夜は今日も平和に更けて行ったのだった。




