08:愛する彼女は俺の隷属になった
眠っているリルはとても美しい。
いつまで眺めていても飽きる事が無いので、今日も授業と仕事を投げ出して彼女の看病兼鑑賞に勤しんでいる。
あれから一週間経った。
まだリルは目覚めない。
個人差はあるが、もうそろそろ目が覚めても良い頃なのに。
「早く、君の声を聞きたいな……」
俺の声が聞こえたのだろうか、ピクリ……とリルが動いた。
やがて、彼女はゆっくりと目を開けたが、しばらくの間動かない……表情が虚ろだ。
「……どこ?」
しばらくすると、目線がキョロキョロと動いた。慣れない景色に、不安そうな表情だ。
「気分はどう?」
「……っ!」
声を掛けると彼女は驚いて首をこちらに向けた。
何だか可愛らしく腕をウゴウゴしている。
起き上がりたいが、体に力が入らないようだ。
「まだ、無理しちゃダメだよ」
それでも目覚めたのが嬉しくて、彼女をぎゅっと抱きしめたら怯えられてしまった。
ショックだ。
「あんなに懐いてくれてたのになぁ」
今までの関係がリセットされると思わなかった。
「……私は……あの後、どうなったの?」
彼女の目が据わっている。
もう敬語すら使ってくれない、完全に敵認定だ。
でも、現状は分かってもらった方がいいよね?
「リルは皆と一緒になったんだよ?」
鏡を渡すと、彼女は不思議そうにそれを覗き込んだ。
それだけで……利口な彼女は全てを理解したようだった。
俺たちの関係は新しいものになった。
そうだ、これを機に名前を呼んでもらおう!
俺はリルに自分をリヒトと呼ぶように言った。
「……リヒト、あなたは……人ではないのね」
ああ、リルの口から自分の名前が出るなんて、感激だ。
「そうだよ、この学園にはもう人間は殆どいない。君は俺達と同じ生き物になった、そして隷属である君は一生俺から離れられない」
そこまで言ってハッとした。
彼女は目覚めたばかりで喉が渇いているはずだ。
俺は急いでシャツのボタンを外し首元を捲った。
「おいでリル……、喉が渇いているでしょう?」
そう言ってリルを抱えて起き上がらせると、彼女の唇を俺の首元に誘導した。
……噛んでくれるかな?
ユンナは彼女の隷属に拒否されたと言っていたけれど。
……カプリッ!!
少し間を置いて、リルは俺の首筋に噛み付いた。
本能に逆らえなかったようだ。
彼女の伸びたての犬歯が俺の皮膚を貫いている。
まだ上手に飲めないみたいで唇や舌が傷口付近をうろうろしていた。
くすぐったい……。
良かった、無事に彼女を隷属化できたようだ。
※
本当はリルを外になんて出したくなかったのだけれど、ユンナと彼女の隷属であるミミが毎日ギャーギャーうるさいので、リルの目覚めから半月後に彼女を渋々学園へ通わせる事にした。
彼女の様子が心配で、休み時間の度に様子を見に行く。
「リヒト」
教室に行くと彼女がパタパタと駆け寄って来た。
毎回こうだといいのだけれど……。
「お腹すいた」
ほら、やっぱりね。
彼女は基本食事の時にしか自分から寄って来てくれない。
「分かった、移動しようか」
彼女をお姫様抱っこして生徒会室へと向かう。
リルは他の生徒の前での吸血行為にはまだ抵抗があるので、食事は別の部屋で行う事にしている。
俺としては大勢の前で見せつけてやりたいんだけどね。
生徒会室に着くまでに我慢できなくなったのか、リルは俺の首に手を回すと、
首筋をハムハムし出した。
「……っ、リル……ここではやめてっ……」
慌てて止めようとする。ここで吸血されるのはマズい。
俺は焦って生徒会室へ駆け込んだ。
今は誰もいない時間帯だ。ソファに彼女を降ろす。
「……リヒト……もう、限界……」
「そんな目で見ないで……ほら、おいでリル」
シャツを脱いでリルを向かい合わせで膝に座らせると、彼女は遠慮なしに首筋に噛み付いた。
以前より上手に飲めるようになっている。
「……っっ」
歩きながら吸血させられない理由がこれだ。
吸血行為において、吸われる方はかなりの快感を伴うのだ。
それこそ立っていられないくらいの。
隷属には毎日定期的に血を与えないといけないから、もしこれが痛かったらかなり苦痛になっていたと思う。
血を吸われるのが気持ちいいなんて、上手く出来ているよね。
まあ、もし痛くてもリルの為なら毎日何回でも血をあげられるけれど。
――可愛い俺の隷属……ずっと大事にするから傍にいてね。
会長編、ラストです。
次は副会長。