第55話 声が聞こえて
なら私にできることは、トクさんの言うとおり静子様と、誰かの縁を結ぶことではないだろうか。
そうして大切なご縁を、失わせないこと。静子様のお心の安寧が毎日のように訪れること。これができたらきっと、静子様も満たされる。そんな気がする。
「なんとなくわかってきました・・・・・・」
「参考になったのならよかった」
私は茶柱をぐいっと飲む。舌を火傷しそうになった。
「あ、あっつい」
「あはは、気をつけて飲むんだよ。千福ちゃんの幸せは、静子さんが幸せになることかい」
「それもございますが、人々の幸せもまた、私の幸せでございます」
「流石、幸福神だね」
お茶を冷ましていると、突如声をキャッチした。
『千福様。千福様、助けて!』
那智山で出会ったときの――美穂さんの声だ。
なにか急を要するのかもしれない。一日で片付く問題だろうか。
「トクさん、お願いがございます」
私は姿勢を正し、事情を説明して、家を空けると言って鍵のありかを教える。トクさんは綺麗な心の持ち主だ。この花松町の人々からの人望もあるし、人徳も兼ね備えている、
信頼できるお人なのだ。だから家を空けている間、静子様の面倒を見ていて欲しいと頼む。
神の世界も人の世も不平等なのだとしても、神は平等に人々を助けなければならないと私は考えている。私は私の仕事をしなければならないのだ。
「大丈夫だよ、私はいつも暇だからね。静子さんは私に任せて、行っていらっしゃい」
ごちそうさまと言って窓から出ると、帰って仁と寿を呼んだ。




