第40話 大天狗
一気に部屋が明るくなる。そして天狗一同はぎょっとしたような顔をしている。
「あんたは。あんたがなぜここにいる」
「天狗達よ、この娘達になにをする気だ」
晴明様に化けたヤエさんが渾身の演技で言う。天狗達は立ち上がり、後じさる。
「あれは、かつて我々の同胞を封印した宿敵ではないか」
「なに?」
「おまえたちはなぜここにいる。もう一度封印されたいか」
「我らはあの時旅に出ていた生き残り。ここは戦うしかない」
ヤエさんが一歩踏み出る。天狗達はたじろぐ。
内心は相当に怖いだろうに、威厳も風格もでていてとても頼もしく思える。
よし。このまま結界を張ろう。私は手を合わせ念じた。その瞬間、大天狗が叫ぶ。
「そいつは晴明ではない。惑わされるな。狐の妖だ!」
大天狗にはすぐに見抜かれてしまった。ヤエさんはばれた途端に一気に元の姿に戻った。尻餅をつき震えている。
「なに。化かして我々を騙したのか。貴様!」
私の結界が効かない。屋敷に張り巡らされた大天狗の力より私のほうが弱いみたいだ。
即座にヤエさんの前に出て丁寧に頭を下げた。
「このかたがたを見逃して下さい。私は千福。生きとし生けるものを幸せにする神でございます。私一人が、あなたがたの望まれるまで子供を産み続けましょう」
最後の話は嘘だ。こうでも言わなければ、みんなが酷い仕打ちを受ける。
「なに? 神だと」
「はい、私は修行中の神でございます」
「道理でいいエネルギーを持っていると思った。神と交われば我々の力も強くなる」
「では」
私は大人しくそう言って顔を上げた。
「まて。狐が我々を謀ったくらいだ。その話も嘘かもしれん。女どもを全員そこから出せ」
大天狗が言う。すると目の前にいた天狗は、他の三人を手荒く全員連れ出し、大広間に放り出した。
「縄がとかれています」
「といたのは誰だ。狐だな。化けたときにとけて、全員の縄をほどいたのに違いない」
大天狗が言った。
「この狐め! ずる賢いことをしおって! 八つ裂きにしてやる」
私はヤエさんに触れようとした天狗を突き飛ばした。
「なにをする! この馬鹿力!」
突き飛ばされた天狗は背中を壁にぶつけ、もともと赤い顔を更に赤くさせて怒っている。
「縄をといたのは私でございます。手荒なまねはおやめ下さい」
「狐を庇っているだけだろう」
近くにいた天狗がヤエさんの耳を掴んで持ち上げる。
「お前の村ごと焼き払ってやろうか」
悲鳴がヤエさんから漏れた。
ぷつん、とどこかが切れた音が自分の中からした。
瞬間、私は守るべき人たちを器用に避けて一気に竜巻を起こした。力で耳を掴むとはどういう愚行か。
天狗はヤエさんから手を離し逃げ出す。
「なんだこの風は」
「下手に出ればそのお顔の如く、鼻高々に調子に乗るのが天狗でしたか。勝手に拉致監禁した挙げ句、勝手に話を進め、一方的に女性に乱暴を働く者など、許してはおけません」




