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第26話 七福神の怒り

突如突風が巻き起こった。


教室のガラスにひびが入り、大きな音を立てて粉々に割れる。


女子生徒がきゃあっと悲鳴をあげる。


あ。あれ。


生徒の持ち物や教室に置いてあった備品まで巻き上がるが、抑制がきかない。


「なんだよこれ。おい、やめろ」


大地の髪が逆立っている。


「祟られているのはあなたたち。翔君への暴行と恐喝、罵りをやめたら許してあげる」


私は風なんか起こせないはずなんだけれど。ちょっとびっくりしながらそれでも私の周囲に起こる風の威力は益していく一方だ。


「やめろ。やめろぉっ!」


三人が暴風に耐えきれなくなったのか顔の皮膚を歪ませて叫ぶ。風はとうとう竜巻のようになって三人は割れた窓の外に放り出され、校庭の空高いところまで飛んでいった。


不意に冷静になる。なんだろうこの人間三人を飛ばせる力。


仁か寿か、あるいは七福神のどなたかが起こしたのだろうか。


でも今は気にしている場合ではない。クラスの中学生達の何人かは窓の外の様子を眺めるために集まる。割れたガラスに注意しながら。


「なんだあれ」


三人は毘沙門天様と布袋様、大黒天様によりキャッチされ、宝船に乗せられた。


「七福神じゃないか!」


嘘。嘘! マジで? 


そんな声が聞こえてこれまで遠巻きに眺めた子達が一斉に壊れた窓に駆け寄る。


「本当だ。七人いる! 七福神だ。すげぇ」


誰かがそう叫んでいる。七人? 私には六柱しか見えない。私にだけお姿を見せて頂けないだけで、恵比寿様は力を貸して下さっているのだろうか。


宝船が校庭の中央に到着し、周りにも人が集まってきた。他のクラスや学年も窓から見ている人がいるのだろうと簡単に想像ができた。


毘沙門天様が三人を一人ずつ縄で縛って船から校庭に放り出す。私も行ったほうがいいなと思って、生徒達をかき分けて窓の外から出ると宝船のもとへ走った。


案の定、窓からたくさんの生徒の顔が見える。


「我らはこちらの幸福神、千福と友人である七福神だ」


青空の下、毘沙門天様は高らかにお声をあげられる。


「今縄で引っ捕らえたこの三人は、外道なことをしているそうだな。暴行、恐喝をしているのならば恥を知れ! 神の裁きを受けるがよい」


声は校庭に響き渡る。毘沙門天様は容赦なく大地の頭を踏みつけた。大地は抵抗しているが、びくともしない。そうして空中から三人の頭になにかを大量に降らす。


「ひっ、ムカデ!」


裕紀が言って身じろぎをしている。ムカデは毘沙門天様の使いだ。


「やめろ、やめろ。服の中に入った。気持ち悪い」


政夫が地面を転がりだす。だが両腕を後ろに縛られているため、どうにもできない様子でミミズのように蠢いている。他の二人もムカデから逃れたいのか地面を這い出している。


「松島翔に対し暴力と恐喝、罵倒をやめるか? 翔に一切手を出さないと誓うか? 誓えないならもっと酷い災厄がおまえたちを襲うと考えろ。我々は全員松島翔の味方である」


三人を見下ろす格好で毘沙門天は言った。


「しない。しないからムカデをとってくれ!」


「まだとらん。罰を与えたから暴行をやめるなど都合がよすぎるだろう? 松島翔はこれより酷い仕打ちをおまえたちから受けている」


「わかった。わかった、反省するから」


大地が顔を真っ赤にして叫んだ。


「巻き上げた金を全額返すか」


「それは・・・・・・使っちまった」


「そうかでは」


更にムカデの洪水を頭から降らせる。三人は断末魔のような悲鳴を上げた。


「このような仕打ちはまだ可愛いものと知れ」


言ってからまた、見ている全員に向かって毘沙門天様はお声を張り上げる。


「他にも嫌なことをしている者がおるだろう。我々に嘘は通じぬ。ビシビシと感じられるぞ。暴行、恐喝の他に無視や悪口や、疎外、今を代表する情報端末で嫌がらせをしている者もいるのではないか」

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