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それからしばらく彼らと談笑し、このまま行けばオルブレイトに辿り着くと再度、確認して客室に戻る。
そこまではスウェイもわたしも、かりそめの歓談を楽しむことができた。
長い旅の始まりで、束の間の休息を心を開いて語り合える誰かと過ごす喜びに浸ることができた。
でも、ここから先は少し難しい。
部屋の扉を閉めると、スウェイはずっと背負っていた金貨の入ったバッグをよいしょっと座席に降ろしてその横に腰かける。
『隠匿者』で室内の危険がないのを確認したものの、昼過ぎからずっと数時間もスキルを稼働したせいで、わたしには急に睡魔が襲いかかっていた。
濃いコーヒーを飲み、欠伸をなんとかやり過ごし、幾つかの気になった事柄を相談する。
「……気づいた?」
「ええ、いませんでしたね。血痕どころか、誰かがいたという臭いすら、消されていました」
「あれだけの傷を負わせたのに」
「あの部屋を出るときまでは臭いも、気配も確かにありましたよ。虫の息のような呼吸だって聞こえていたのに」
二人の口から、同時にため息が漏れた。
復讐にやって来るだろうか、それが真っ先に思い浮かび、恐怖が身体を支配していく。
食堂車で歓談する前に、わたしたちは爵位を利用して最後尾まで戻ったのだ。
エルスティーネの部屋を退室するときまで、真後ろの客室にいたあの二人の暗殺者は間違いなく、『隠匿者』で捕捉できていて。
まさか、あの場から助け出されるならともかく、跡形もなく煙にでもなったかのように消え去ったのは、信じられない出来事だった。
かといって、それを周りに告げることもできないし、こちらもここには誰もいなかったのね、と初めて知ったかのように振る舞うしか、術はなかった。
「あれって、まさかリシェルのスキルのように、その場にいるけれど死んでいる、とか。そんなことないですよね」
「……治癒に全力を傾けて復活し、駅に停車している間に痕跡を消して遁走した、としか考えられないわね。でも、誰にも気づかれないはずもないし」
「あそこに誰かいませんでしたか、なんて確認したらこっちが襲ったのバレるし、どうしようもなかったけど。でも不安ですね」
そうね、とわたしは深く同意した。
「五両目のあの男性。いかつい体格の彼は、きちんといたのにね」
「あー……あの筋肉ばっかりの大男。あのまま苦しませてやればよかったのに」
「全員が、駅で降りてくれたから、いいじゃない。心理操作もうまくいったしね」
「そこは重要ですね。助けると見せかけて、エントス夫人を殺せという指示を別のものに上書きするなんて、リシェルもなかなかに小技が上手です」
「小技って言わないで。記憶を操作するのって大変なんだから‥‥‥あの猟師を殺せって指示にしておけば、みんな探すでしょうよ。トンネルをくぐる前に残っている死体を見つけるまでにどれほど時間がかかることか」
「でも――あいつらの指示は全部、ねえ?」
あのエルスティーネが計画した自作自演の手駒だったなんて、さすがに、彼らは気づいていないだろうし。
「エントス夫人は駅で生きていたわねー」
「いましたねー。忌まわしいエルスティーネ様も同じく。もうこの列車に乗っていたことがバレてしまったから、暗殺を装う必要もなくなったわけで」
と、スウェイはぶるっと尾を震わせてそう言った。




