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わたしはくそーっと唸りながら、頼み込む。
「意地悪言ったの謝るから!」
「では、どうぞ」
もったいぶって目の前に掲げられたそれは、最初に見たときより二枚ほど減っていた。
多分、スウェイは自分用に取り分けたのだと思う。
食い意地の張った侍女なんだから。
公国に着いたらもっとこき使ってやろうと心に誓いつつ、ありがたくクッキーを頂いた。
数枚あったそれはあっという間にわたしの胃の中に消えてしまった。水で口直しをすると、さてどうしたものかと考える余裕が生まれてくる。
「どうでした、これまでのやり方でいけそう」
「まだみんな痛みを覚える時間じゃないから‥‥‥。骨とか折ってないでしょうね」
「手加減はしましたけれど。頑丈そうなのは、それなりに力を込めたから、どうでしょう。一番、多かったのはなんでしたか」
「感情の反応が多かった。殺意や怒り、人を殺したいと思う衝動に近いものもそう。みんな、この国に不満を抱いているのかもしれない。あとは――」
「闇属性に関してはそうでもない」
「そうね。それは無かったと言ってもいいくらい。ここから向こうは分からないけれど」
「……どうして」
スウェイは首を傾げた。
わたしはエントス夫人よ、原因は。と教えてやる。
あの方は光属性だから、闇属性に救われたということに自分でも気づかないほど、大きな原始的な拒絶感を持っていて、それが怒りとこちらに文句を付けにきた原動力になったのだろうとわたしは思っていて。
「そういう噂は広まりやすいでしょう」
「ああ、それはそうですね。うーん……なら、狩りの標的を変更しますか」
「狩りって言わないの。物騒なんだから。ここから先は、この紋章に関して明確な目的を持っている者‥‥‥これはさっきもやってきたけれど。それと、闇属性のスキル持ちを排除したいと望む者。それだけでいい気がする」
「なら、行きましょうか。あまり休んでもいられない」
侍女は数分も惜しいとさっさと立ち上がる。
わたしたちが不在にしていたとき、もしかしたら誰かが入ってきて物色したかなと探っていたけれど、そんな痕跡はなかったみたい。
立ち上がり、ガラス戸を閉めると、スウェイは尾から一本の毛を引き抜いて、それに唾液を含ませると、ぴたっと開閉口に隠すようにしてそれを貼り付けていた。
「もし、誰かが開けたら、これで分かるので」
「……どこで覚えたの」
「スパイ小説が好きなのです」
「淑女らしくないわ、本当に」
スウェイがときおり、街中の本屋でいろいろな書籍を購入して持ち帰っていたのは知っていたけれど、まさかそんな一面があったなんて。
ちょっとした驚きに包まれつつ、わたしたちは怪しい誰かをスキルで検索してヒットしたらぶん殴り行動不能にするという、おおよそ貴族令嬢らしからぬ蛮行の旅を再開した。




