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スウェイは急に眉間に皺を立てると周囲を訝しむように、気配を感じ取ろうとする。
その様は正しく野生の狼で。
ちょっとだけ彼女のことを猫みたいと軽んじた、わたしは心で謝罪する。
「どう?」
「……周りにはこれといって何も。けど安心ではありませんね‥‥‥それと」
と、白黒まだらの尾をぴんっと立てて、スウェイはこちらをじっと見つめてくる。
ぐるりっとつぶらな瞳を一回転させると、そのくりくりとした瞳に悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
「お嬢様。いまスキルをお使いなのではないですか」
「あら‥‥‥バレた」
「バレバレです。闇属性のスキルは、なんといってもそれを使っている時に特殊な匂いがするんですよね」
「えっ」
「ああいえ、その内側に取り込まれている時、という話です。これは光の属性でも同じことです。あのエントス夫人が何かスキルを使ってお嬢様を調べてるときも、なんとなくわかりました」
「驚きだわ‥‥‥みんな、そうやって理解できるのかしら」
貴族ならスキルは誰でも持っている。
覚醒の儀式を受けなくても、生まれつき強い力を持っている子供なら、平民や奴隷でもそれは言わずもがな。
スウェイはそんな力を有しているとは聞いたことがない。
けれど、スキルを行使していることを察知できる、というのはちょっと驚きだった。
「それって‥‥‥」
「ええ、『隠匿者インビジブル』をいまお使いだということ程度には。ああ、でもこれはお嬢様のスキルをあらかじめ知っているからです。各個人の持つスキルが何かというところまで特定することはできませんね。そういった能力があるかもしれませんけど、私にはございません。そもそもスキルそのものがないので‥‥‥」
「それは知っているけれど。どうしてそんなことがわかるの」
「匂いと言いますか、湿度と言いますか、肌の張り付き感といいますか。今までと違う何かモヤっとしたものがやってくるんですよね。だから、分かってしまいます」
「それはそれで早く知りたかったわね。屋敷でも利用と言えばおかしいけれど、助けてもらうことができたかもしれないのに」
うーん、とスウェイは首を傾げる。
この列車に乗ってから、みたいなことを彼女は呟いた。
あの屋敷。
特に伯爵領では、そんなものを感じることは特になく。
領地を遠く離れてからようやく芽生えるものもあるのかもしれない。
「伯爵領で光の女神神殿が大きな力を振るっていたのが、原因かも? よく分からないわね。まあとりあえず今は何を話しても聞かれることはないと思う。この部屋に関しては」
「それはそれでとてもありがたい能力‥‥‥呪いて何ですか」
「あー……あなたはやっぱりそこに話題に戻すのね。何かわからないの。でも、闇属性だったから夫人の体内から引き出すことができた何か、だと思う。ほら、先生もおっしゃっていたじゃない。『闇魔法は負のエネルギーを使うけれど、それを病人から奪うこともできる』って。そういう意味の呪い。だから誰かが彼女に施したのか、それとも彼女が予め患っていたのか。それは分からないわ」
でも、とスウェイは上を向く。
過去を思い出しているのだろう。
わたしと彼女が模造刀や槍を持ち、死闘さながらに闘って腕を競ったあの地下室のことを。
あの日々のお陰でわたしの治療師としての腕は飛躍的に向上したと先生は言っておられた。
それはもちろん、スウェイの回復魔法の腕に関しても同じで。
だからこそ、そんな呪いあったかなー? とスウェイは頭を傾げているようだった。




