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 余計なことをしてしまったのだろうか。

 エントス夫人の顔色を伺いながら、わたしはそんな後悔めいた感情に囚われる。

 やはり自分の闇属性のスキルは治癒ができても、人を心から救うことができない。

 そう思い落ち込みそうになったら、隣でこほんっと咳払いが聞こえた。

 見るとスウェイがむうっとした顔になっている。


「スウェイ」

「んほんっ」


 侍女としてではなく、長年、共に過ごしてきた親友としてスウェイがむくれていた。

 面白くなさそうに、それでいてどこか怒りを含んだような気配さえ滲ませている。

 その目から悔しさが零れそうなほどに目尻が強張っていた。

 エントス夫人は自分の内面を見つめるのを止めたのだろう。

 スウェイがした咳ばらいを聞いて、はっとなり顔を上げた。


「私ったら、なんてこと‥‥‥」


 と、エントス夫人は自分が口の端に上げようとしていた言葉の意味を改めて考え直したのかもしれない。

 今度はわたしを見つめるその目が大きく見開かれていた。

 瞬きし、それから気を取り直したようで「闇属性」とまた口にしていた。


「そうです。わたしの属性は闇です。それはもう変えようのない事実です」

「いいえ、違うの。ごめんなさい、そんな話をするためにきたのではないはずだったのに」


 婦人はまた、ごめんなさいと告げた。

 多分、彼女には闇属性の人間には救われたくなかった何か事情があるのだろうと、わたしは思った。

 けれど、事情をこちらから聞き出すのも何か違うような感触がする。

 いま、間接的にだけれど、わたしは責められようとしていたのだ。

 それだけは理解できた。


「……謝罪なさることはない、と思います。このカナルディア王国で闇属性は嫌われていますから」

「だけど、いいえ。そうではないのです。光の――」

「光の神を信仰なさっていらっしゃる?」

「ええ……だから、闇属性と聞いてしまってどうしても、居ても立っても居られないようになってしまって」


 恥じらいと後悔と、しかし自分は間違っていないという確信めいた感情が、彼女の顔にはありありと浮かんでいた。

 理性が動く部分と感性で捉えてしまう部分があるのだと思う。

 そして体験してきた年数。

 王国では生まれたときから神への信仰が始まるから、彼女の場合はとくにそう。

 半世紀以上に渡ってその精神に光の神の神殿が語る宗旨が教えられているから、拒否感は絶対にあるはず。

 そこを責める気にはなれない、そんなわたしがいた。


「これは歓迎されない属性ですから。お気になさらないでください。夫人が快復されたことが何よりの喜びです。このスキルが役立ったということですから」

「ですけれど、ね。そのリシェル様。王国では長く闇属性というものは出ていなかったはずなのです。それがどうして‥‥‥?」


 おや? と思った。

 彼女はほぼ十五年前に、わたしがスキル鑑定の儀式で闇属性と判断されたことを知らないのだろうか。

 スウェイも隣で不思議そうな顔をして、こちらを見下ろしていた。

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