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 さて、これまで散々、私を困らせてきた闇属性のスキル。

 それはどんなものだろか。

 わたしには、三種類のスキルが神より与えられているらしい。


『追跡者チェイサー』

『隠匿者インビリブル』

『奪還者レパージ』


『追跡者チェイサー』は予め、想定していた物、そこにこれまで存在していた物などの痕跡を調べ、過去に戻って調べることができる。


『隠匿者インビリブル』はわたしを含め半径三メートル以内にあるすべても物の情報を得ることができ、わたしと私が認めたものを世界の法則から隠すことができる。

 その範囲内ではありとあらゆることに対して干渉・変更できる。


『奪還者レパージ』はわたしが上記の二つで知った情報を基にして、それまであった何かの痕跡を基に戻すことができる。


 つまり、調べ、正しい情報を確認し、正しい方向へと肉体を癒し導くことができる。

 これら三つのスキルはもともと、盗賊や暗殺者、スパイなどが有用していたらしく‥‥‥それが原因で表の世界から嫌われて失われつつある、幻に近いスキルだ。

 と、いうことをブレア先生からは教わった。


「本当は治療よりもそちらの方が向いているのです。でも、物事は考え方、次第。人間に限らず魔族に至るまで、その肉体には正しい設計図が生まれつき記されています。その誤った部分を調べ、一時的に世界から切り離して治療した部分を戻してやる。それが貴方の能力を有用にすることになるでしょうね」


 ちょっと長い解説になったけれど、まあ、こんなところになる。

 話は戻ります。


 ご婦人の胸のなかへと魔力を伝い入り込んだわたしのスキルは、正常である場合の彼女の設計図とそうでない今回の設計図を、二枚とも目のまえに映し出した。


「なんですか、それは?」

「お静かに、治療中です」

「すいません‥‥‥」


 恐らく、こんな治療魔法は見たことが無いのだろう。

 通信教育ではよく使った伝達系の魔法。

 でもそれを医療に使おうと考えた人は少ないに違いない。

 彼が驚くのも無理はなかった。


「だめね、時間がない」


 一人そう呟くと、『追跡者チェイサー』で得た本来の正しい彼女が肉体の設計図を、『隠匿者インビリブル』へと転送する。

『隠匿者インビリブル』は周囲に展開している能力の範囲内であれば、外の世界の法則に左右されない魔法を使うことができる。

 例えば、このご婦人パーシャ様を取り込むことにより、痛みや苦痛、病魔の進行を阻むなど、その用途は多岐に渡る。

 設計図を使い、新しくパーシャ様の肉体を疑似的に用意する。

 彼女が痛みを患っている胸付近の臓器や骨、筋肉や血液といった身体の構造の一部を、そっくりそのまま、正常なものへと入れ替える。

 これは『奪還者レパージ』の能力を行使した。

 つまりわたしはご婦人の根幹として悪かった部分を、新品と交換したのだ。

 

「頑張って。もう少しだから」

「パーシャ、ああ、頼む。どうか助けてやってくれ」


 初老の紳士が懇願するように言う。

 大丈夫ですよ、と軽く返事をした。一時的に閉鎖していた彼女の痛覚を開放して、新たな臓器との適応具合を『隠匿者インビリブル』で確認する。

 この能力の結界内にいる限り、ご婦人は死ぬことはない。


 何度でも根源からの根治が可能だ。

 でも物事には一度で成功しないこともある。

 その時のために、『奪還者レパージ』を利用してなんどでも、最初の状態までもどすことができる。


 あいにくと、異常が出なかったその時間まで戻すことができないのが心苦しいけれど。

 でも―ーどうにか成功したみたい。

 彼女、パーシャの脈拍と息はゆっくりと正常値に戻り、スキルで設計図を確認してもこれといった欠陥が見当たらない。

 わたしが生まれて初めてスウェイと家族以外に施した闇属性の治療は、無事に一人の女性を救えたようだった。

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