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「何をお探しで‥‥‥どうしました、この大金」
「あーいいから。貴方は書類を探して。証明書を発行するやつ」
「ええ……でも、このお金」
賢い侍女は、座席の上に並べられたこの金貨の袋の数々が何を意味するのか、瞬時に悟ったらしい。
そっとレダーがしまい込もうとすると、牙をむき出しにしてそれを制止した。
「こんなコソ泥のようなクズに何を証明なさるおつもりですか! お嬢様のお名前がけがれます!」
「でも、この車内で衛士はいないわよ。引き渡すにしても、大金の在りかはと訊ねられる。そうなったら数日は動けず、わたしたちは元の牢獄に戻ると思うのよね。それでもいい?」
「うっ‥‥‥でも! でも‥‥‥大金を持ち歩くのであれば、それはそれで問題が」
「ああ、確かに。貴方、出しなさいな。この金貨をわたしに渡すとお父様が書かれた譲渡証明書を」
「くっ、それは‥‥‥」
なぜか渋り、嫌そうな顔をして差し出された、金貨の持ち主を証明するその書類。
そこには大金貨の袋がもう一つ多めにあると記されていて、わたしとスウェイは改めて大きなため息をついたのだった。
「レダー‥‥‥騎士としてはまともなのか分からないけれど、もう少し賢くやりなさいな。このままでは貴方、この証明書の相手はどこにいると問われて、国内から出れないのは明らかではないの」
「すっ、すいません。大金を見るとつい」
「これまでどれほどその懐に入れて来たのやら。お父様に同情してしまうわ、こんな騎士しかいないなんて。まったく、お兄様といい元夫といい。伯爵家の男どもは揃いも揃って、ろくでなしばかりね。同じ血が流れていることを恥ずかしく思います」
「すいません‥‥‥」
まあ、このレダー。
根は素直なのだろう。
ただ、心が弱い。それは騎士として致命的だと思うのだけれど。
まあ……いいか。この列車から降りたら、無縁の存在になるのだし。
「はい、これ。貴方の騎士の受勲証明。発行者はエドワードにしておいたわ。元夫の名前なら誰も疑わないでしょうしね」
「ありがとうございます。お嬢様」
まだエドワードが正規の伯爵になるかどうかは知らない。
妹のカミーナと結婚すればそれは叶うだろうけれど、どうでもいい。
わたしはふんっ、と鼻息荒く彼から全額を徴収したスウェイの手元から、銀貨の包みを一つだけ取り上げてそれをレダーの手に握らせた。
「多くは渡せません。貴方の階級は下級騎士。金貨を百枚も持てば、それだけで罪に問われるような身分です。これで我慢なさい。いいですね?」
「はい‥‥‥」
目の前にあるお宝の山にレダーの悔しそうな視線が注がれている。
スウェイはこれ見よがし中身をひとつひとつ検めると、証明書と内容が一致しますと、報告してくれた。
「それで旅券は?」
「いいつけの通り――」
「ああ、行き先はいいの。彼はここで席を変えるから。ね、レダー?」
巡回している武装した鉄道職員をちらりと見て、わたしはレダーを追い立てる。
彼は手荷物をまとめると、金貨が納められたバッグを名残惜しそうに見つめて、それから去っていった。




