#129 ぼくとけいやくしよう
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「まさか……『四霊神』の――?」
「本当に実在している、だと……?」
姿の見えない神――ノームの言葉を聞いて、カグラとヘルは驚いたような声を出していた。
と、二人が驚く中申し訳ないが、俺は二人の前に仁王立ちした。
「――やあ、久しぶりだな。ってそんな言うほど久々でもないか?」
さっきまで無視してくれたことを不満に思って俺は強めの口調でそう言い放った。
「あ、ああ紅蓮。そこまで日数は経っていないはずだが、随分と久しぶりな感じがするな。うむ」
「我としては貴様が無事でよかったとまずは言っておこうか。よくぞ生きていた、我が器よ」
うん。どうやら二人とも全然変わらないみたいだ。
二人と別れたのは、姉さんたちと別れた日――魔王たちとのいきなり始まった戦いのあったあの日だから……。
さっきも言ったが、そこまで久しい感じはしなかった。
それに二人と同時に顔を合わせることが出来るとは――と思ったが、ヘルに関してはそうでもなかった。
「カグラは相変わらずかっこいいというか美しいというか……まったく羨ましい見た目をしてるな」
「そうか? 我がまだ人であった頃はこんな容姿の男などどこにでもいたがな」
「え? カグラがまだ人だった頃って一体どういう――」
カグラが気になるセリフを言っていたが……今はそんな難しい話よりも気になることがある。
そう。問題のヘルの容姿なのだが……。
「全然姿が見えないが……ヘル、なんだよな?」
俺が話しかけたのは、真っ黒い影みたいな靄に赤い目のようなものがついている謎の物体?だった。
夢で見る悪魔みたいな……正直めちゃくちゃ怖い見た目をしているが……。
「な、なあ……ヘルなんだよな……?」
「無論。我は我だ。それ以外の何に見えるというのだ」
って言われても俺お前とあった事無いし。
声だけだったから姿見るのは初めてだし。そんなこと言われてもなあ。
「……それで、二人はどうしていきなり目覚めたんだ? なんか回復するには時間が、みたいなことを聞いた記憶があるんだが」
「ああ、それなんだが……」
『それについてはぼくから話すよ!』
と、ここでノームが俺たちの会話に入ってきた。
どうやらノームがカグラたちg目覚めた理由を知っているみたいだが。
『まあ理由はいくつかあるけれど、一番の狙いはぼくの強さを知ってもらうことかな』
理由がいくつかある……か。
どうせなら全部聞きたいけどな、その理由。
『あ、もしかしてちゃんと全部話してほしい感じかな?』
え、なんでわかったの。こわ。
『えっとね……一つはぼくが君のことを気に入ったからだね』
「俺を……?」
『うん! 十大武具の力を引き出すことが出来て、神にも憑かれるくらい秘めた力を持っているのに、どうしてか君はとっても弱い!』
は? 今俺煽られてる?
めっちゃ心に鋭いナイフ突き刺されたんだが。
『それに、この地底を魔王軍の手から仲間と一緒に守ってくれたし……』
それは俺も『十大武具』のためにっていう別の目的もあったからだし……。
『そして、もう一回言って悪いけど君は本当に弱い! 戦う力が皆無だ!』
え、え、え。
泣いていいのかな。俺だってめっちゃ努力しているし、姉さんには勝てないけどそれなりに武術は学んでいる方なのに。
カグラやヘルよりも高位だと思われる神様にめっちゃボロクソに言われるんですけど。
『だから、ぼくと契約して、君は戦うんじゃなくて守れる人間になれればいいなって思ったんだ!』
「守れる人間に……?」
でも、仲間を守るための力っていうのはつまり……戦って勝つことが出来る力な訳で……。
それに契約して、って……魔法少女でもあるまいし。
『なにも戦って勝つことだけが仲間を守ることに繋がる訳じゃないでしょ?』
「え……?」
『仲間をサポートして勝たせたり、敵が追ってこれないような逃げ方が出来れば君が戦わなくたって仲間を守ることが出来るでしょ?』
……確かに、そうかもしれないけど……。
結局俺にはそんな力は……。
『自分にはそんな力が無い、って思ってるでしょ。もう忘れたの? だからぼくは君と契約しようって言ったんだよ?』
「契約したら……俺には、そんな力が手に入るのか?」
『うーん……『烙印』のせいですべては無理だろうけど、ぼくの力は少しは使えるようになるはずだけどね』
そうか……『烙印』か。忘れてたけど、俺は神に見放された証である『烙印』とやらのせいで本来よりもとても遅いスピードで成長するようになってるんだったな。
それに、いくつかの力には制限がかけられているみたいだし。
でも、そうか……。
ノームと契約すれば、俺には『守る力』が――。
『さあ、どうする? ぼくと契約して、もっと強くなりたいかな?』
「そういうことなら……ありがたくその力、頂きたい」
次回は明日更新です。。。