#124 地底会議
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第13章開幕です。短めだと思われます。
地底世界。
そこは、ドワーフ族やミュータント族という地上に住む種族たちとは異なる異質な存在が住む地下の世界だ。
そんな地底に魔王軍四天王の一人、洗脳を使ってくる魔人ゲレスを倒し捕縛した俺――緋神紅蓮は頭を抱えていた。
「――うーーーん……どうすればいいんだ……」
そんな俺の悩んだ様子に、両隣に座る老人たちが「ガハハ」と笑いながら、
「旅なんて気ままにやるのがいいんじゃよ! そんなに悩むことも無いだろう!」
「ハッ! 目的があるならそれをもう一度ハッキリ思い出すんだよ!」
なんて言ってくるのだ。
右にはドワーフ族の里の長老、ダイスさんが。
左にはミュータント族の里の長老のゼナさんがそれぞれ座っていた。
「おいババア! そんな硬ェのは旅って言わねェんだよ!」
「誰がババアだこのクソチビが! 旅は何か目的があってするもんだろう? それも分からないなんて、どんな小さい脳みそしてんだいッ!」
「なんだとこのクソババアがッ!」
「やるってのかい? アタシに一度も勝てていないアンタが!」
二人の意見はほとんど合わないと耳にしたのだが、本当にこの二人が長老で上手くやっていけてたのか……。
そんな風に疑ってしまうレベルでこの二人は仲が悪いようだった。
喧嘩がヒートアップしていく二人を横目に、真正面に座っていた榊原さんが口を開いた。
「紅蓮さんが今一番したい事はなんですか? 私的にはそれが一番大事なのかなって思うんですけど」
その言葉を聞いたダイスさんとゼナさんが、「確かに……」と静かになってしまった。
「俺が、今一番したいこと……」
しかし榊原さんのその言葉は、俺が頭を抱えている理由なのだ。
一番したいことが分からない……というかいくつかあるから、どれから目標にしていけばいいのかが分からない。
それが本音だった。
まず思い当たるのは、蒼華姉さんやメルたちの合流だ。
一緒に長い時間を旅してきた仲間なのだし、別れ方も今回は俺が一人で離れていった形だから、心残りもかなり大きい。
それに、向こうもきっと心配してくれていることだろう。姉さんは結構過保護なところあるし……。
しかし、それを目指すとなると気がかりなのはクラスメイト達の存在だ。
絶対に一緒にいるという保証はないが、かなり高い確率で一緒にいるはずだ。死神――ヘルもそんなような事を言っていたしな。
ただまあ、どっちかって言うとクラスメイト達を排除するとかそういう話では無くて、俺自身が気持ちの整理をまだつけられていないだけなんだけど。
後は『十大武具』の事だ。
ゲレスがやられた事は魔王軍もじきに分かるだろう。となると奴らも【黒斧】や【聖盾】の確保に戦力を割いてくるだろうし……。
それに、まだ手にしていない『十大武具』も狙っているだろうから、俺はそれを魔王よりも先に確保しておかないといけない。
そして、それ以外にも俺にはやりたいことがあった。時間があれば……と思っていたのだが、ひたすらに特訓して強くなりたいのだ。
この世界では、自身の能力値は多くの経験を積むことで伸ばすことが出来る仕組みだから、鍛えれば鍛えた分だけ強くなることが出来るのだ。
だからこそ、俺は鍛えまくらなきゃいけないんだが……色々と起こり過ぎて、時間が全然無かったのだ。
「うう……やりたいことが多すぎて……」
榊原さんの質問に、再び頭を抱えて答える俺。
すると、榊原さんは人差し指を立てて、「では」と言う。
「――では、紅蓮さん。私も貴方のお手伝いをさせていただけないですか?」
「え? 榊原さんが俺の手伝い……って、もしかして――」
「はい! 紅蓮さんの旅に同行させてください!」
そ、その提案は……。
個人的には、嬉しさ半分申し訳なさ半分って感じなんだが。
「で、でも本当にいいんですか? 自分で言うのもなんですけど、俺の旅って結構危険が付きまとう感じだし……」
「そこはまあ……何とかするしかないですかね」
そんな適当で大丈夫なのかこの人は。
「というのは冗談で。どちらかというと、貴方についていった方が蒼華ちゃんに会える確率も高そうだしって思っただけなんですけどね」
「確かに……外に出れば会える確率は高くなるとは思いますけど……」
しかしそれ以上に危険が大きすぎると思って、俺は困惑した表情で「でも……」と続けた。
すると、榊原さんはそんな俺の心配も気にしない笑顔でこう言ったのだ。
「ま、ハイリスクハイリターンってやつですね! 私の事なら心配ご無用です!」
そう言いながら、自身が制作した魔道具を見せてくる榊原さん。
「ま、嬢ちゃんはしっかり者だし、連れて行ってやってもいいんじゃねえか?」
「そうさね。アタシと一緒に戦ってくれたけど、普通にそこらの町娘よりは戦えてたし、少しゃ役に立つんじゃないかね」
ダイスさんとゼナさんからもそんなフォローが入って、榊原さんはより自信たっぷりな表情になる。
まあ、さっきも彼女が言っていたが、結局一番大事なのは本人がどうしたいか……だからな。
「――分かりました。それじゃあ、これから……一緒によろしくお願いします」
「はいっ! よろしくお願いします! 紅蓮さん!」
こうして、俺はまた新たな仲間――榊原 麗さんを仲間に加えて、旅を再開することになったのだった。
次回は明日更新です。
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