#110 崩壊の予兆
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「この魔道具で洗脳を上書きします!」
「ああ、頼んだよ!」
後ろでは榊原さんとゼナさんがミュータントの軍勢との戦闘を開始していた。
「さあ、こちらも行きますよ!」
そう言って、ゲレスは杖を俺に向けてくる。
やはり奴は魔法を使うのか……? それならば、先に近づいて……
「――魔法を使うと、思いましたか?」
「……ッ!?」
俺が、ゲレスに近づいた瞬間。奴は再び杖を俺に向けて勢いよく振りかぶってきたのだ。
「ぐれんッ!!」
「大丈夫だ……桜花!」
ゲレスの使った魔道具、『封印の棺』に囚われて動けなくなった桜花の心配する声が聞こえたが、すぐに俺は態勢を立て直す。
これくらいの打撃なら、いつも姉さんから尋常じゃないほど喰らってたしな! まだまだ全然いけるさ……!
『――少年! 私を使うといい!』
「この声は……彼岸か!」
『ああ。奴が打撃戦法を得意とするならば、私はうってつけだろう!』
確かに……彼岸ならゲレスの攻撃を全て防いでから反撃出来る、か!
それなら、ひとまずルナをしまって……
『ああん! ちょっと、ダメよご主人様!』
『そうだよおにーさん!』
と、思ったのだが、何故か片方だけをしまうことが出来なかった。
紫色の鎖のような物が、【魔双剣】に現れたのだ。
「なんだ、これ……」
『私たちは二つで一つの存在なのよ。だから、引き離そうとしたら戻るみたいなの』
『だから、おにーさんは私たちを使うならセットでしか使えないって事!』
マジかよ……それじゃあ、彼岸を使うなら桜花がいないと攻撃できない……って事か?
「クフフ……どうかしたんですかァッ!」
「ぐああッ!」
と、俺が頭を動かしている間に、ゲレスが俺に接近してきて再び杖で殴ってきた。
「クソ……今の状況じゃ攻撃か防御のどちらかしかできないのか……」
『いいえ、ご主人様。それは少し違うわ』
「違う……? って、どういうことだ、ルリ」
『この戦場にいる人たちは視野が狭いみたいだけど……さっきからそこに一つ落ちてるじゃない』
落ちてる……? それって、一体――
『あ~っ! そういうことか~!』
『ほら、よく見てみてご主人様。貴方の視線の先には、何があるの?』
俺の、視線の先……?
そう言われて俺は改めてよく周囲を見てみることに。
「クフフ……今更逃げ道を探したってもう遅いんですよっ!」
「ったく……しつこいなお前っ!」
今度はゲレスの攻撃を転がって避けた俺。
その時だった。俺の視界に、一つの武器が目に入ったのは。
「そういう……ことかッ!」
少し距離は遠いが、多分走れば間に合うはず。
ゲレスよりも先にアレを拾えれば……まだ勝機はあるはずだ!
「行くぞ……ッ!」
「……? どこに向かって走って――――」
俺は、ゲレスとは反対方向に向かって走っていた。
そして、少しして……そこに落ちている物を即座に拾って構えた。
「【黒斧】――これなら、何とか片手で持てる武器だ……ッ!」
そう。それは、ゼナさんが使っていた斧――『十大武具』の一つでもある【黒斧】だった。
「これなら彼岸と一緒に使えるはず……」
「チッ……後で回収すればいいと思っていましたが……しくじりましたね」
「さあ。これで形勢逆転かもな!」
「形勢逆転? 何を馬鹿な……私の攻撃が打撃のみと思ったら大間違いですよ!」
そう言うとゲレスは再び杖を天高く掲げた。
同じく再び輝く紫の水晶。
……奴の言葉的には、今度こそ魔法が飛んでくるのか……!
「ッ……!」
俺は、持っていた【黒斧】を構えてゲレスに突っ込もうとした。
その、刹那。
『――俺、は……ァ……!』
【黒斧】から、声が聞こえてきて。
『……俺、は……破壊と、再生の……ぉ……ォ……オオオッ!!』
あの時と同じ、黒い稲妻が周囲に現れ始めていた。
「なんですか……これは……ッ!」
そして、その直後。大地が揺れ始めて……
『俺はァァァァアアアアアアアッ!!!!!』
男の声が響き、黒き閃光が、地底を包んだ。
次回更新は明日です!よろしくお願いします!
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