#96 長老の話
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「まずは、強引に貴方様をここまで連れてきたこと。深く謝罪させてください。本当に、申し訳ありませんでした」
「い、いえ。俺はそんなに気にしてないですから、頭をあげて下さい!」
『地底世界』。俺はドワーフ族の双子の兄弟、ノルさんとルガルさんに誘拐される形でこの場所まで来た。
入ってすぐに目に入ってきたのは、地下に広がるもう一つの世界だった。
採掘場……と言えばいいのか。
ゲームの世界に出てきそうな、トロッコ用の線路であったり緑やオレンジといったランタンのような明かりでいっぱいの地下世界。
まるでゲームの中に入ったかのような感覚だった。
「申し遅れました。ワシ――私は、このドワーフの集落の長老をしている、ダイスと申します」
「ダイス、さん……」
そして俺は、ノルさんたちに連れられてこの目の前の老人――ドワーフ長老のダイスさんのところまで連れられてきたのだ。
ちなみに、ダイスさんもノルさんたちと同じく俺の半分くらいの背丈しかない。
他のドワーフもここまでくる道中に見かけたが、ほとんどが同じような背丈だったな。
あ……そういえば、男はみんな上半身が裸だったような……?
「あの……それで。俺はどうしてここまで――」
「待て。長老、何故そんなかしこまった喋り方をする?」
「なんか、長老気持ち悪い。いつも通りに話してくれ」
え。一体なんだ。
俺をここまで連れてきたノルさんとルガルさんもここに残っていたのだが、なんか長老の事ディスり始めた……?
「じゃ、じゃが……この人間は『十大武具』を扱える方なのじゃろう? なら敬意をはらわねば――」
「あの……いつも通りの話し方でも大丈夫ですよ? そんなかしこまってても、ストレスが溜まっちゃいますからね」
俺は笑いながら言った。
すると。いきなりダイスさんがプルプルと肩を震わせた。
「ふふ……ふははは……」
「……どうか、したんですか?」
「――ガーハッハッハッ! そうかそうか! お前さん、なかなか優しい人間なんじゃのう! わしゃお前さんの事、早速気に入ったぞ!」
「え……?」
「いつもの長老、戻った。これでいい」
「こっちの方が落ち着く。さっきの長老、きもかった」
「なんじゃ! 言い過ぎではないのか!? ガハハハッ!」
バンバンバンと俺の背中はダイスさんによって叩かれている。ぶっちゃけ痛い。
が、なんだか楽しそうなので許すことにした。第一いつも通りにしてくれって言ったのは俺の方だしな。
めちゃめちゃ豪快なおじいさんって感じだな、ダイスさん。
ノルさんとルガルさんは少し無口めな印象だったけど、性格に関しては人によるみたいだ。
「なんだ、人間」
「今凄く失礼な事を考えてなかったか?」
「い、いや! 別に考えてないですよ!」
す、鋭い。姉さんたちといい、なんか鋭い人多いな。
下手なことを考えてたら、それだけで殺されてしまうかもしれないから、これからは気を付けないと……。
「ガハハ! よーし、それじゃあそろそろ話しを進めようか! ノル、ルガル! 『彼女』をここまで連れてきてくれ!」
「了解した」
「探すから、時間かかるかもしれない」
「おうおう! ゆっくりでいいぞ! こっちも色々話すつもりだしな!」
「それじゃあ行ってくる」
ダイスさんの命令で、ノルさんたちは何処かへと行ってしまった。
ってことはこれで……
「二人っきり、だな」
「え、いや……ちょ、キツイっすよ」
「ガハハ! 素直だな!」
「いや、この状況は別にいいんですけど……その、言い方が」
確かに俺も考えそうになったけど!!!
でも、「二人っきりだね……///」って、おっさんに言われたら流石に吐き気するわ!!!!!
「まあ、冗談はここらにして……そろそろ本題に進もうか」
「そ、そうですね……」
そうだ。本題に戻らなくては。
どうして俺がこの地底世界に連れてこられたのか。どうしてドワーフやミュータントという種族だけがこんな地下で過ごしていて、『はぐれ者』なんて言われているのか。
気になることはいっぱいあるが、大きな疑問点はこのあたりだろうか。
「では、まずはお前さんをここまで連れてこさせて理由から話そうかね」
そう言って、ダイスさんはそれからその『理由』についての話をしてくれた。
なんか小言とか、意味不明なボケがところどころあったので、話を要約してみると曰くこうだった。
まず、どうして俺がこの『地底世界』に連れてこられたのか。
大本命な質問の答えだったが、彼から返ってきた答えを意外にも今俺が最も欲しい情報だったりする。
『十大武具』。その一つが、このドワーフの集落にあるのだというのだ。
たまたま地上で必要物資を集めていたノルさんとルガルさんが、魔王と俺の戦いを見て、俺が『十大武具』を扱えていることに気付き、通信機能のある魔道具でダイスさんと連絡を取ったらしい。
そして、ダイスさんの指示で、二人は俺を誘拐する形でこの地底世界まで連れてきた、という流れだったわけだ。
そうなると、次に気になるのはどうして『十大武具』の存在を知っているのか。ここが一番の注目になるだろう。
という事で聞いてみたのだが……
ドワーフ族は長命種らしく、大昔からこの地底世界で独自の技術を発展させ続けてきたというのだ。
近未来的な技術もあるようで、俺としてはそっちも気になるのだが、それは後ほど『彼女』とやらが来たら一緒に回ろうという話になっていた。
そして、何故『十大武具』を知っているのか。
それは、この地底世界にも『十大武具』があるからで、なおかつ『十大武具』に関することが書かれている手記があるからだと言う。
つまり、俺たちと同じような流れで『十大武具』について知ったという事だ。
さて。ここまで話をまとめてきたが、結論を言うと。
「――つまり。その『十大武具』を、俺に扱えるか……確かめてほしいってことですね」
「ああ。そういう事じゃ」
次回は明後日更新です!!明日はお休み!
(ごめんなさい;;体調を崩しました;;)