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第69話 使い魔と同様話が通じない主

「デルクロイ!そっちに追い込んだぞ!」

 俺は実弾を連射しつつ愛理をデルクロイが乗るBWの射線上まで追い込んだ。

「<了解でさぁ~隊長!>」

 デルクロイが一気に広範囲へBWの両肩からビーム砲撃を行った。

 愛理は見事にその極太ビームの中へと入っていく。

 だが、砲撃の光が消えると愛理の姿は健在であった。

「今の攻撃でも効かないか…」

 いや、なんとなくわかっていたよ?だって俺達が来る前に艦砲射撃のビームを食らっていてもピンピンしてたもん。

「<硬いですなぁ~。この火力でも駄目ならば、どうします?>」

 傷一つ付いていない。と、いうわけではないが、普通の人間ならば蒸発する威力のビーム砲をまともに受けながらピンピンしている。

 しかし、硬いという表現が合っているのだろうか。硬いというよりもビームを水のように弾いているような感じに見える。


「よくも!よくも私を傷つけたわねぇ!!」


 ご覧の通り愛理は元気いっぱいである。


「ゴミ屑の癖に!こうなったら惨たらしくウゴゥ!?」


 愛理の口いっぱいに広がる何かが飛んできた。

 愛理はそれを受けて仰け反る。

 なんだ…?と、考える必要は無い。単にレイーヌが後方から撃った弾が愛理の口に入ったのだ。

 140mm特殊ビーム付与徹甲弾。

 レイーヌが装備する140mm対艦ライフルから射出された弾は、特殊な鉄鋼で作られた弾丸である。恐ろしく固く、ビーム粒子を纏わせて貫通力を増している。巡洋艦クラスの装甲であれば貫通してしまうらしい。

 レールガン機能も付いているため、地球で一般的に使われているの火薬式よりも高威力である。

 どうやら愛理にはビームのように高エネルギー体が体全体を熱覆うよりも、一点集中の強力な攻撃の方が有効みたいだ。


「さすがだ!レイーヌ」

「<お褒めに預かり光栄です。隊長!>」

 俺はレイーヌに感謝した後、

「ははっ!間抜け面になったな愛理!」

 と、言ってやった。


「舐めるな!奴隷ども!!」

 愛理は額に青筋を浮かべ、口に入った弾丸を掴んで引き抜き己の拳で握りつぶした。

 あれ?特殊な鋼鉄で作られた弾丸では…。ゴリラかな?いや、ゴリラに失礼か。


「<ありゃ化けもんですなぁ>」

 のん気に感想を言っている場合ではない。

「もう一度仕掛けるぞ!デルクロイ。実弾はある程度効いたようだ。攻撃は実弾主体でやるぞ」

「<了解でさぁ~>」

 愛理は一時レイーヌがいる方角を睨んだがそうはいかない。

 俺はすぐに効かないとわかっている弾を連射して浴びせる。


「ふざけないでよ!」


 愛理はすぐに回避をするが、俺が銃弾をバラバラと当てまくる。

 愛理は父親と朝川以上に速度が速く、通常の機体では追いつけないだろう。

 俺と同じような高機動型の機体や一方向の速さを追求した戦闘機やBWならば追いつけるようで、スレード隊以外の機体も次々と愛理を追いかけ攻撃をしていく。


「いい加減にしろぉぉぉおお」

 四方八方からくる攻撃にキレた愛理は両手のハンドガンを撃ちまくる。


「くっ…!?」

 なんと、愛理のハンドガンから発射された弾はある程度の誘導性を見せ、次々と味方の機体を撃ち抜いていった。

 俺もなんとか回避をしながら愛理を追い詰めていく。


 俺が銃弾で誘導した先にはデルクロイの集中砲火が待っている。そこで動きを止めればレイーヌの狙撃も始まる。


「よし!」

 指定のポイントに愛理が入った!


「<ふははは!いくぞぉぉ!!>」

 今度は追い詰めた先にデルクロイが実弾やミサイルで攻撃をしていた。

 デルクロイが両肩から撃ちだした400mmロケット砲やミサイルは次々と愛理に命中して、愛理を吹き飛ばす。


「許さない許さない許さない許さないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイィィィイイ!!!」


 またお得意の『許さない』が始まった。

「そのセリフ。いい加減聞き飽きたんだよ!」

 俺はライフルの照準に集中し、命中率を高める。

 身体能力強化の魔術はこういう精密な戦闘にも有効だ。


「ユルサナイユルサナイユルサナイ!!!」

 愛理は手に持ったハンドガンを連射する。

 デルクロイが放ったミサイルを撃墜しているところを見ると、やはりあの弾丸はただの鉛弾ではないだろう。

 それにしても反応が早く狙いが正確だな。

 俺は愛理の迎撃行動を邪魔するべくBWのアサルトライフルを愛理に向け撃ちまくる。


 愛理が俺の撃った実弾に当たって仰け反るとデルクロイが放ったミサイルに当たる。


「イタイ!イタイィィィィイイイ!!!なんで私がこんなに痛い目にぃぃぃいいいい!!!」

 やはりビーム兵器よりも実弾の方が効果が高いようだ。


「グギィィィイイ!!!」


 愛理は動きを止めて顔を醜く歪めて俺を睨む。


 僅かに動きが止まる。

 よし!チャンスだ!!!


「グギャ!?」

 俺を睨んでいた愛理の顔面にレイーヌの徹甲弾が撃ち込まれた。


「グガァァアアアアアア!!!!ふざけんなぁあああ!」


 愛理は激怒しハンドガンを連射する。移動する動きも…速くなっただと!?


「<な!?隊長、こいつは拙いかもしれませんぜ!>」

「<くっ…速すぎて捉えきれません!>」

 デルクロイとレイーヌが愛理の激昂によるパワーアップに驚き声を上げる。

「くぅ…俺の機体でも追いつけない…」

 高機動用のバックパックを装備した機体ではあるが、あまりの速さに追いつけない。

 デルクロイが放つミサイルは次々と撃ち落されている。

 クソッ!伊達にラゼルトさんと同じAランクの戦闘員と指定されるだけのことはあるか!


 俺達は手のうちようが無いと思いだした時、


「<味方の駆逐艦8隻が接近中!かなりの速度です!>」


 と、ミューイから通信が入った。

「駆逐艦…?」

 俺はその報告を聞いてレーダーを見た。

 援軍か…む?かなりの速度と言っていたが速すぎるのではないか?どう見ても戦場を突っ切っていくようにしか見えない。

 通常の戦闘機よりも早いぞ!?高速移動用のブースターを装着しているのか??

 この惑星からの脱出が目的ならばわざわざ敵が密集している戦場を脱出ルートとして選ばなくてもいいだろう。

 明らかに自殺行為だ。

 いったい何が目的なんだ?


 そんな事を考えていると、駆逐艦8隻は既に俺達のいる戦場をとてつもない速さで突っ切っていった。一隻だけ大爆発を起こして。


「<な、何が起きたってんだ!?>」

 デルクロイは目の前の事態を把握しきれず驚く。

「<私には今、味方の駆逐艦が小岸 愛理にぶつかったように見えましたが…>」

 目のいいレイーヌは少しだけ状況を理解したようだ。

「味方の艦が特攻を仕掛けたのか…?」

 なんという無茶をしたんだ…。駆逐艦の中にいた人たちは大丈夫なのだろうか…。

「<どうやら今のは無人艦のようです!>」

 と、ミューイが情報をくれた。

 え?あれ無人なのか?贅沢な使い方をするなぁ。

「<増援艦隊400隻。戦線に介入!>」

 ミューイは続けて情報を俺達に伝える。

「なんだと!?輝明さんはまだ艦を出せたのか!」

 俺がそう聞くと、

「<いえ、今回自己空間から艦隊を出したのは『清堂せいどう 幸輝こうき』君のようです…>」

 えぇぇ!?確かに輝明さん以上の能力を持っていると言っていたけど自己空間の領域が既に父親の4倍とは…。

 戦線に加わった400隻の内半分が愛理への討伐に参加した。

 200隻の中から空母が無人機を大量に射出する。真っ直ぐ愛理を捉え、攻撃に参加した。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

 だが、愛理の方も増援艦隊に攻撃を加える。

 無人空母から射出された無人戦闘機から発射されるミサイルを撃破したり、戦闘機そのものを銃弾で落としている。何なんだよあのハンドガン!

 宇宙連邦からのおさがり艦隊ではあるが、周辺国家から見たらまだまだ主力。どころか喉から手が出るほど欲しい性能を持った艦船達だ。

 だが、無情にも次々と愛理によって破壊される無人の艦船、BW、戦闘機達であった。


 愛理は単身味方の無人艦隊に突撃し、小回りが利く無人BWの集中砲火を食らうが、速度は衰えない。

 無人艦隊もビームへ兵器よりも実弾攻撃の方が効果が高いと認識し、使う武装を実弾やミサイルに切り替えていた。


 幸輝君が出した総勢100を超える無人艦船。300を超える無人戦闘機や無人BW。俺、デルクロイ、レイーヌ。そして惑星ガ・五の防衛隊は一丸となって愛理に向け実弾を撃ちまくった。


「イギャアアアアアア!!!!シネェェェェエエエエエエ!!!」

 愛理は絶叫しなが攻撃を続けている。

 これだけ攻撃しても死なない事は驚きだ。


 確かに俺やデルクロイ、レイーヌが乗る『雷牙』では太刀打ちできないかもしれない。

 ただし、これだけの数があれば話は別である。


「よし、足が遅くなった!撃て!」

 俺はデルクロイに命令をしたが、他の無人機も一斉に愛理に攻撃を強める。


「ンビャァァァァアアアアア!!!」

 愛理は奇声を上げつつ味方の無人艦に取り付き攻撃をしている。

 愛理の移動速度が遅くなる瞬間。それは味方の艦船を破壊する時だった。


 5発程同じ箇所に攻撃すれば破壊できる戦闘機やBWとは違い、装甲が分厚い艦船を落とすのにはそれなりの銃弾を浴びせなければならないようだ。

 同じ箇所へ2、30発程撃ち込んで破壊している。

 だが、一箇所だけでは完全に破壊できないため、何箇所も攻撃を加えている。

 その隙に味方が一斉攻撃を仕掛けて愛理にダメージを与えていった。

 なんとも贅沢な囮である。


「ンビャァァァァアアアアア!!!」

 その攻撃方法にも激怒した愛理はこちらに向け攻撃を仕掛けてくる。

 一機、また一機と無人機がやられていく。


 これは、持久戦だな…。

 先にこちらの数がなくなるか、愛理の体力がなくなるか…。

 特殊能力者っていうのは味方なら心強いが敵に回ると厄介すぎるな。


「うぁああああ!うあぁぁああああ!!」


 愛理は狂ったかのように…。いや、もう狂っているんだけど、奇声を発しながら無人機や無人艦を破壊し続けていた。


「ンビャァァァァアアアアア!!!死ねやぁぁぁあああ!!!」


 突如愛理は駆逐艦を掴み、巡洋艦へ放り投げてぶつけた。互いが思いっきりぶつかった艦達は激しく折れ曲がり爆発する。


「<おいおい、嘘だろ…>」

 デルクロイがそう小さく呟いた。

「フン。本物の化け物だなあれは…」

 俺は冷たく言い放つ。

「<倒しきれるか不安になってきました…>」

 と、レイーヌが弱気になっている。

「倒せるかどうかはわからないが、とりあえずあいつらの負けは決定だな」

 俺がそう言うと、二人は、

「「<え?>」」

 と、不思議そうに言った。

「援軍だよ」

 俺がBWの左手で指差す方向には、宇宙に波紋を作って次々と現れる宇宙連邦軍の艦隊であった。


「<地球人諸君!よく耐えてくれた!後は我々に任せてもらおう!>」

 そう目の前の宇宙連邦軍の艦隊から通信が来た。

 10km級の戦艦も現れた事で、安心感が増す。


「邪魔をするなぁぁぁぁ!!うちゅぅぅぅぅれんぽぉぉぉぉぉおおおお!!!」


 愛理は現れた宇宙連邦軍の大艦隊に向かってそう怒鳴っていた。



 宇宙連邦軍の介入で、惑星ガ・五に群がってたヴァルカ残党軍の艦隊は駆逐されていった。



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