第68話 下手くそラッパーと我が儘な王様
コロニーを防衛している艦隊は大量のヴァルカ残党軍に囲まれていた。
生物なのか機械なのかわからない巨人。BWサイズのサイボーグと言った方が分かりやすいかもしれない。
ギョロギョロと辺りを見回す目玉が一つ付いている戦闘機。
先端に大きく裂けた口を持つ戦艦。
見た目は全ておどろおどろしい。
そんな見た目に反してヴァルカ残党軍の兵器達は弱かった。防衛部隊から見れば絶好の的である。
中には見た目まともな機械兵器もあるが、これは他の兵器達と比べて弱そうなデザインだ。
それでも数が多いため、徐々に防衛網を突破されていた。
そこに現れた俺達スレード隊は、タイミングはバッチリだった。
「各自の判断で攻撃開始!」
俺はそう命令を下す。
もう撃てば当たる状態である。
「<うっは!これはとんでもない数っスね>」
トリットはライフルを連射しながら次々と敵を倒している。
これは他のスレード隊メンバーにも言えることだが、いくらトリットの魔法が支援向きと言っても、操縦の腕に関してはリール連邦国内ではかなり上なのだ。
その証拠に同じく魔法使用に長けているリズリーも既に手持ちの魔法非使用のライフルで敵機を落としている。
俺も負けてはいられないな。
先陣を切った俺はミサイルで次々と一直線に高速移動してくる戦闘機を一瞬で5機落とす。
「よし、次は…」
次の目標を定めようとしたが、距離が離れていた前方の敵の艦船、敵機は次々と爆散していった。
「狙撃か…」
後方から狙撃にて援護をしてくれたのはレイーヌだ。
レイーヌは敵駆逐艦の艦橋を狙い撃ち、更には動きが遅い重装型の敵機のコックピットを次々と破壊し、援護をしてくれていた。
デルクロイは極太ビームを迫り来るミサイル群に向けて放ち、ミサイルを迎撃しつつ後ろに控えていた敵機を破壊する。
リズリーは敵のBWの関節を凍らせ動きを鈍くしてから確実に仕留めている。
モリガンは高速で敵機に近付き剣にてBWや戦闘機を真っ二つにしていた。
トリットはミサイルを妨害したり、ミサイルを乗っ取ったりして敵機にぶつけて撃墜数を増やしている。
パルクスは巧みにビームソードとライフルを使い分け、順調に敵機を破壊しているようだ。
皆この2年でかなりBWの操縦を磨いたようで、この程度の敵であれば余裕で倒せる。
しかし、いくら雑魚をやってもキリが無いな…。
次々と湧いてくる…。
これはやはり敵の指揮官を倒した方が早いか?
「よし、目標は『小岸 愛理』だ!続け!」
俺がそう言って敵の中を突き抜けていくと、
「「「「「「「了解!」」」」」」
と、スレード隊のメンバーは全員着いてきた。
「<小岸 愛理発見!すぐ先です!>」
少し移動するとミューイから通信が入った。
現れたヴァルカ残党軍の中で一人だけ飛びぬけて強い愛理は、味方の艦隊に無視できない被害を及ぼしている。
したがって、発見も容易だ。一際味方の被害が大きいところを探せばいい。
―――――――見つけた!
ビームの艦砲射撃も効かず、味方が奴の周りで手をこまねいている。
「見つけたぞ!小岸 愛理ぃぃい!」
俺は愛理を見つけて剣を振るった。
しかし、愛理は避けてしまう。
再び剣にて攻撃しようとしたところ、声が聞こえた。
「あら?探す手間が省けたわ」
驚いた事に愛理の声が聞こえてきた。念話というやつだろうか。
「貴様、こんなところまで何しに来たんだ!」
「はぁ、男ってそういうロボットがいつまで経っても好きなのね…。何しに来たか、ですって?決まっているじゃない地球人がこんな場所にもいるのよ?私達の奴隷にするにはぴったりじゃない」
「は…?」
何を言っているんだこいつは…。
「ほら、訳わかんない宇宙人ばっかりだとねぇ~…。習慣も違うし文化も違う。なかなか私達が言っていることを理解してくれないのよ」
本気で困ったような顔を作る愛理。
「だから、前田からもここに居る連中に言ってよ。私とお父様に従いなさいって。私、こんなに日本人が居るとは思わなかったから、あなたを殺すよりも利用する方が得かと思ったのよねぇ」
「…馬鹿なのかお前は…?」
こいつは2年経っても容姿どころか中身も変わらなかったらしい。
「は?なに?私に逆らうの?」
愛理が顔をそう歪めると、
「王たる余の娘の言う事が聞けぬのかぁああああ!!?」
と、急に上方から一人の人影が向かってきた。
慌てて回避をして見て見ると、なんとそこに居たのは愛理の父親『小岸 利吉』であった。
この親子は…。
「ビュクビュー!」
今度は左から銃撃を受けた。
俺は慌ててシールドにエネルギーを纏わせ二重防御を行う。
弾は小さいが、威力は高かいようだ。
「朝川…」
わけが分からないラップを奏でながら登場した朝川は手にした20丁ほどのアサルトライフルを俺の方へ向け撃ってきた。
どうやら強化弾らしく、並みの装甲では防げないらしい。
BWならともかく装甲車であれば軽がる貫く威力だろう。
「こいつら!」
「はっ!クソ前田ごときが私に逆らうからよ!」
「王たる余自らが鉄槌を下して進ぜよう!」
「っよぅ、っよぅ、っよぅ!」
目の前に馬鹿3人が迫る!何気に強いから始末が悪い。
だが、目の前に一本の極太ビームが現れ、三人をなぎ払った。
「<隊長!大丈夫ですかい?>」
援護してくれたのはデルクロイだった。
「あぁ、ありがとう助かった」
「しんっじられない!ふざけんなよ!」
「…万死に値するぅぅぅうう!!!」
「っへーい!」
こいつらふざけてんのかまじめなのか。
「デルクロイ、俺を援護しろ!モリガンとパルクスは王様気取りのテロリストを。リズリーとトリット、は似非ラッパーを。レイーヌは可能であれば狙撃で愛理の動きを牽制しろ。おそらくあいつがあの死人二人を操っているんだからな!」
「「「「「「了解!」」」」」」
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さて、始まっちまったよ宇宙戦争!
正直いつかこんなことになるんじゃないかと思ってたっスよ!
だって、記憶を取り戻した後隊長に助けられて二年間。どんどんとBWにまた乗って戦う技術を習っていったからな!
それはそうと俺、トリット・マーキーはリズリーと一緒に隊長が言ってた似非ラッパーを相手にしなくちゃいけない。
「遠隔操作妨害装置最大出力っ!」
とりあえず相手がビュンビュンとばしてくるアサルトライフルの移動を無力化させねぇとな。
遠隔操作をする武器を相手の能力に合わせて妨害する装置。
相手が魔法か聖法か化学かまたは別の方法での念力か…。それを瞬時に判断し、能力を妨害する装置。
これで完全に動かなくなる。という確証は無いが、少しは動きを抑える事が可能なはずだ。
だが…、
「まだこれほどの速度が出せるのか!?」
朝川とかいう奴だったか?2年前地球でテロを起こした一味だったそいつは、本当に動きを阻害できているのか不思議なくらいな速度でアサルトライフルを遠隔操作して飛ばしてくる。
ちっこいからBWのライフルじゃなかなかと捕捉しきれない。
連射モードや散弾モードにしても朝川本体に当たりゃしない。
そして、敵のアサルトライフルも一向に減る様子を見せない。
「これで何個目だ?」
俺はさっきから数えて10以上あのライフルを破壊しているぞ?
なのに敵のライフルは増えても無いし減ってもいない。
連射モードでは他で戦っている友軍機に当たってしまう可能性がある為、低射程かつ高威力の放射タイプのビームを撃っていく。
完全にミサイルの対応方法である。
「よぅ、よぅ、よぅ、ッチェケラー」
朝川は妙なラップを口ずさんでるし…、生前の人物像が書かれた報告書ではあんなキャラではなかったはずだぞ?
破壊しても破壊しても次から次へと湧き出てきやがる。絶対あれ補充していやがるよな?
「<トリット!私がもう一度あの兵器が固まった時に雷撃を加えるからぁ、その隙に!>」
と、リズリーが2、3個一箇所に固まったアサルトライフルを雷撃で破壊する。
僅かに弾幕が減った。
「リズリーサンキュー!よっしゃ、朝川覚悟ぉぉおお!」
俺は高威力のビームを4発連射する。
よし、一発当たった…が、
「ちぃ。まだ生きてやがるか!」
朝川は健在で、ヒュンヒュンと宇宙を飛び回っている。
「かもぉぉ~ん、カムォン!」
ムカつくな…。
「ッア"ー!、ッア"ー!、ッア"ー!ッア"ー」
ゲェ!やっぱりアサルトライフルの数が戻ってる!
一緒に戦っているリズリーは、時折全体攻撃で電撃を飛ばすが、朝からが操る20丁のアサルトライフルは多方向かつ距離も様々で、一斉に破壊する事はできない。
「キリがねぇよ!」
俺がそう声を漏らすと、
「<トリット、弱音を吐くな>」
と、グリゼア副隊長からお叱りの言葉を受けた。
「でも副隊長!」
「<隊長はお前達二人にならば相性が良い敵を選んだのだ。今から作戦を伝える!ミューイ!>」
え?相性良いの?相性悪いんじゃなくて?
「<は、はい!リズリーさん。目の前の朝川に向かって広範囲の雷撃魔法を使ってください!人を焼き殺せるくらい威力は低くて良いです>」
え?それ威力引くいんっスか?
「<朝川が広範囲で動き回っても納まる位でいいんです。その都度雷撃の位置を変えて下さい>」
「<了解!>」
「<トリットさんは周りの遠隔攻撃兵器を破壊した後、朝川に攻撃をして下さい!>」
「了解した!」
周りの遠隔攻撃兵器を破壊したところで増やされれば意味が無いのでは?もしかしてこれは朝川に攻撃を常に与える事で遠隔攻撃兵器へ向ける集中力を散らす作戦なのか?
「<トリット、いくわよぉ>」
と、リズリーから合図があった。
「お、おう!」
俺は気合を入れなおし集中する。よし、共同作業だ!べ、別に深い意味は無いぞ?
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「王たる余に逆らうかぁああ!!」
大声でそう言ってきた小岸元議員。
俺とパルクスが相手をする事になったイカレテロリストだ。
「<モリガンどうする?>」
と、パルクスから通信が入る。久々に聞いたなこいつの声。
「俺は斬撃を飛ばす。お前は敵の弾がこっちに来ないように弾幕を張れ」
「<わかった>」
隊長が俺達をこっちに回した理由がわかった…。
あのイカレテロリストが使う武器は何故か高速連射できる高威力ロケット砲だ。いわゆるRPGって奴だ。しかも移動速度も速い。
俺は実際使った事が無いが、マシンガンのように連射できるなんて事は絶対無いはずだ。
だが、目の前のあいつはどういう理屈か知らねぇが、バカスカ連射してやがる!
あの変な韻を踏んでいる奴とあのイカレテロリストの娘の中では攻撃力は真ん中ぐらいだ。盾で防ぎきれるかわからんから常に避けながら攻撃する必要がある。あの行為力な攻撃を掻い潜るには俺やパルクスが乗る機体並みの機動力は必要だ。
それにしてもあの弾。微妙に誘導がかかっているのが地味に腹が立つな…。
俺は迫り来るロケット弾を斬撃を飛ばして爆発させ、更に別の弾を切る。
一振りで三発ほど防げる。
俺の持っている剣は隊長やパルクスが使っている剣よりも大型である。
ただ、他の剣よりも振るう速度が遅くなる。という事はほとんどなく、ロケット弾の群れに対応はできた。無論これはパルクスの援護射撃があったからということは忘れてはならない。
俺とパルクスは揃って高機動用のバックパックを装備している為、イカレテロリストを翻弄し、確実にダメージを与えていった。
パルクスも地味に一発当て、離脱を繰り返している。
「余の体に傷を付けるとはぁぁあああ!」
どうやら向こうは酷くご立腹のようである。
だが、そんな事は関係ない。
怒らせれば怒らすほど攻撃パターンに変化が起きてきた。
怒りによって強くなったとか、弱くなったとかのどちらかではなく、両方なのだ。
「ぬあぁああああ!なぜ当たらぬのだぁああああ!」
さっきからうるさいな…。微妙に誘導がかかっていた敵のロケット弾は、誘導性能が向上したり、全く誘導できていなかったりする。勿論微妙な誘導の時もある。
つまり強さが一定ではないのだ。
弱点にも感じたが、今のところこれ以上付け入る隙は無い。
地味に攻撃を続け、相手の体力だか魔力が消耗するのを待つしかないのだろうか…。
もしかしたら俺達の体力が消耗する方が早いかもしれない。
焦る気持ちを抑えつつ、俺はイカレテロリスト野郎に攻撃を続けた。
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